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滑空スポーツ講習会2024(実技講習)EMFT学科講習資料/JSA EMFT 2024

滑空スポーツ講習会2024(実技講習)EMFT学科講習資料/JSA EMFT 2024

滑空スポーツ講習会2024(EMFTオンライン学科講習/EMFT実技講習)
http://www.japan-soaring.or.jp/2024jsaemft/
公益社団法人日本滑空協会

講師 公益社団法人日本グライダークラブ 櫻井 玲子

JSA seminar

June 16, 2024
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Transcript

  1. Emergency Maneuver Flight Training 自己紹介 櫻井玲子 【航空関連】 飛行機・回転翼の社有機運航業務(操縦士・整備士) 回転翼メーカーでのトレーニングセンター設立・運営、日本初のフルフライトシミュレーター導入・運用業務を経験 (一財)日本航空協会

    航空スポーツ賞(2005) / 国際航空連盟(FAI)エアスポーツメダル(2015) (公社) 日本航空機操縦士協会 理事/運航技術委員会/FAI委員会/TEM・CRM講師 / (一社)日本女性航空協会理事 (公財)日本航空輸送技術センター VOICES(航空安全情報自発報告制度)分析担当 (一財)航空管制協会主催 回転翼航空機運航安全研究会 調査研究委員 (公社)日本グライダークラブ理事・インストラクター / 日本学生航空連盟早稲田大学航空部コーチ 日本グライダークラブ、長野グライダー協会、美瑛航空協会、Petair(美唄)、ニセコアビエーションフライトクラブ会員 【滑空機】 世界五大陸で冒険飛行・記録飛行(U.S.A、南米、オセアニア、アフリカ、東西ヨーロッパ / 最近はフランス、ナミビア) 自己無動力最長距離 1,270km (アルゼンチン) / 自己無動力最高高度 34,000ft(アメリカ) / 国際滑空記章 1000km (No.6) グライダー曲技世界選手権出場(1995フランス、1997トルコ) / エアショーでのグライダー曲技展示飛行(厚木・舞洲、南紀白浜、都城、但馬他) 異常姿勢回避・スピントレーニング講師(滝川・角田・板倉・関宿・飛騨・阿蘇)、アクロバット講師、教育証明講習会講師 【所有資格】 事業用操縦士 : 飛行機(JCAB/FAA)・回転翼(JCAB/FAA) ・ 滑空機(JCAB) 計器飛行証明 : 飛行機(JCAB/FAA)・回転翼(FAA) 二等航空整備士 : 回転翼(JCAB)・滑空機(JCAB) 操縦教育証明 : 飛行機(JCAB/FAA)・回転翼(JCAB/FAA) ・ 滑空機(JCAB) 特定操縦技能審査員 : 飛行機・回転翼・滑空機 2024/06/16 2
  2. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 3 本資料の作成に当たり、ご協力及びご助言をいただきました皆様に深く感謝申し上げます。 ・中部日本航空連盟岐阜支部 佐藤 文幸様

    : 滑空機性能計算ツールの作成と提供 ・九州大学大学院工学研究院航空宇宙工学部門 東野伸一郎様: 滑空機の航空力学に関する監修及び助言 EMFT学科講習会 内容 参考資料 1. 失速のメカニズム 2. スピンのメカニズム 3. 失速・スピンの兆候と回避 4. 空間識失調とサブG感覚 5. 空中衝突 6. 低酸素症(ハイポキシア) 7. 飛行の根拠「滑空機計算ツール」 8. 滑空機安全啓発動画 本編 1. 滑空機重大事故統計 2. 滑空機重大事故事例 3. ヒューマンファクター 4. Threat & Error Management (TEM) 5. 重大事故ケーススタディ 6. EMFT実技実施要領 7. 航空安全のために
  3. Emergency Maneuver Flight Training 4 EMFT講習会の変遷 第1世代:フルスピンに陥った場合の回復操作を習得する 。 第2世代:スピンの兆候を早期に察知して、フルスピンに陥る前に回復する。 第3世代:起こりうる事態を予測し回避するための知識と状況認識能力を身に着け、危険に近づかない。

    第4世代:パイロットの技能向上には限界がある。機材の向上と組織的な取り組みが必要。 第5世代:初期教育の見直し。危険がどこにあるのかを知り、危機感知能力を身に着ける。 第6世代:常に根拠を持ったフライトをできるパイロットを育成する初期教育を行う。 第7世代:事故に至る状況を理解し、状況認識力と判断力を向上させ「事故を未然に防ぐ」。 第8世代:ヒューマンファクターを考慮した訓練をグライダーを始める初期から取り入れる。←今ココ 2024/06/16
  4. Emergency Maneuver Flight Training 7 滑空機事故統計(1974~2024) 運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成 2024/06/16 (インシデントは除く) 0

    2 4 6 8 10 12 14 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 滑空機事故推移 その他の事故 重傷事故数 死亡事故数 2024/6/16現在
  5. Emergency Maneuver Flight Training 日本の失速・スピン重大事故の機種 (1974~2023) <複座> ( )内機数 ASK13

    (2) H-36 ディモナ (1) プハッチ (2) 三田3改1 (2) デュオ・ディスカス (1) L23 スーパーブラニック (1) FOX (1) IS29 (1) H-23C (1) アーカスM (1) SF25C (1) ジマンゴ (1) <単座> ( )内機数 ASW24 (2) ディスカスbT (2) ピラタスB4 (2) ベンタス2a (1) クラブリベレ (1) LS-4 (1) Ka6CR (1) Ka6E (1) PW-5 (1) SZD55 (1) 11 運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成 2024/06/16
  6. Emergency Maneuver Flight Training 熟練者の問題点 動体視力 http://www.honda.co.jp/safetyinfo/senior/senior02.html 視野 熟練者=安全というわけではない。 コンプレセンシー

    Complacency 熟練者に多い行動 ・現状に満足し、変える必要がないと考 えること。 ・タスクを繰り返し経験することによる自 信過剰 ・危険な状況または不具合が生じてい るにも関わらず、それに気づかないま ま無意識のうちに行動している状態、 又は警戒心が失われている状態 状況把握に必要な情報を得られていな いにも関わらず、 ・経験則で判断 ・過去の成功体験から今回も 大丈夫と思う正常性バイアス 2024/06/16 14 Primary Shop HPより
  7. Emergency Maneuver Flight Training 事故統計の分析と傾向 15 事故統計の分析 2024/06/16 滑空機事故・インシデント 離着陸時が多い

    死亡事故原因 スピンが顕著(60%) スピン事故フェーズ ウィンチ曳航中、場周中が顕著(64%) 事故の状況 回復不能な状況に至るまで、危 険に近づいていることに気が付 いていない。 危険に気が付いた時は、もは や代替手段が取れない手遅れ な状況となっている。 咄嗟の判断で行った感覚的な 誤った操作により、さらに事態 が悪化している。 スピン事故ライセンス 自家用、教育証明保持者が顕著(90%) スピン事故機体型式 特に顕著な型式はない 事故原因分類 人的要因が100% 事故時の年齢 50代、60代が顕著(54%) 事故時の飛行時間 300~1000時間 (36%) 1000時間以上(20%)
  8. Emergency Maneuver Flight Training 17 最近の滑空機事故・重大インシデント 年 場所 機体 事故の種類

    状況 搭乗者 / 機体 2024/05* 阿蘇 ASK13 不時着 AT中、索の緩みによる索離脱 軽傷 / 大破 2023/11* 羽生 Super Dimona 不時着 離陸直後のエンジン不具合 なし / 破損 2023/04* 群馬 SZD-55 スピン 山岳波風下で不時着時の低空旋回 死亡 / 大破 2023/01 長野 SZD-51 ハードランディング フレアー時の引き起こし過大 なし / 小破 2022/08* 妻沼 Husky / ASK21 曳航索落下 曳航中の追い越しによる索切れ なし / なし 2022/04 福井 SF25C ハードランディング 着陸時の背風成分の増加 なし / 中破 2022/10* 岐阜 SF28A 山岳衝突 山岳付近を飛行中墜落 死亡 / 大破 2022/03 木曽川 ASK13 ハードランディング 着陸時の高降下率・フレアー遅れ 重傷 / 中破 2021/11 新篠津 ASK13 ハードランディング ウィンチ曳航中の低高度ウィンチ停止 重傷 / 小破 2021/10* 美瑛 Arcus M スピン 離陸約100mでエンジン停止後の旋回 死亡 / 大破 2021/10 阿蘇場外 ASK13 低木衝突 横風着陸時の滑走路逸脱 なし / 中破 2021/09 妻沼 ASK21 / C206 滑走路近辺での接近 航空撮影機が通信設定なしに進入 なし / 中破 運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成 2024/06/16 * 現在調査中の案件 2024/6/10現在
  9. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 18 2023/4/16 群馬 SZD55 スピン事故(調査中)

    予報では強い北西風が吹くことから草津上空にウェーブリフトの発生が 予想されていた。パイロットは長野滑空場を離陸後、四阿山の東風下 に流されてウェーブの沈下で叩かれ、不時着場を探しながら着陸前に 低空旋回してスピンに入り八ッ場ダム法面に衝突した。 機体 PZL-ビエルスコ式SZD-55-1型 搭乗者 前席(68才) 自家用操縦士 飛行時間約591時間 運輸安全委員会 経過報告書 長野滑空場 八ッ場ダム 風の方向
  10. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 19 2022/10/26 岐阜 SF28A 山岳墜落事故(調査中)

    機体 シャイベ式SF28A タンデム・ファルケ型 搭乗者 前席(80才) 自家用操縦士 教育証明 飛行時間約5000時間 元エアラインパイロット 後席(68才) エアパークの職員 訓練目的で飛騨エアパークを離陸し、 富山空港に 到着する計画だったが、途中乗鞍岳近辺で墜落
  11. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 20 2021/10/12 美瑛 アーカスMスピン事故概要(調査中) 当該機は前月日本に導入されたばかりで、当該フライトが3回目

    の飛行。 自力発航で美瑛滑空場RW31を離陸し、90度ほど旋回した時点 で約100mでエンジンが停止した模様。 目撃者によると、左旋回を継続し滑走路方向を向いたところで突 然スピンに入る。1回転弱回った時点で旋転が弱まり機首が上が りだしたが、その後は不明。 エンジン停止から約10秒後に地面への衝突音が聞こえた。 前席(69才) 教育証明保持者 飛行時間3000時間以上 Arcus M 800時間以上 オーストラリアで離陸直後の ENG停止経験あり 後席慣熟2回後、 前席でチェックフライト1発目 後席(68才) 教育証明保持者 飛行時間3000時間以上、 機体所有者 SL 2000時間以上
  12. Emergency Maneuver Flight Training 21 滑空機重大事故(死亡/重傷/大破) 2007~2019 年 場所 機体

    事故原因 状況 搭乗者 / 機体 2019 焼岳 DG500エラン 下降気流 山岳風下側の下降気流で高度低下 死傷なし/大破 2017 福島 H-36 Dimona スピン 谷間で低速急旋回 死亡・負傷/大破 2016 妻沼 LS-4b スピン 場周経路上で低速旋回 死亡/大破 2016 福島 GF304 CZ-17 空中分解 酸素OFFでウェーブ上昇中の低酸素症 死亡/大破 2016 千葉 プハッチ スピン ソアリング中?の低速旋回 死亡/大破 2016 阿蘇 ぺガス 立木衝突 ウィンチ故障の自然離脱による低空旋回 死傷なし/大破 2015 霧ヶ峰 Duo Discus スピン ウィンチ索切れ低空旋回中下降風遭遇 重傷/大破 2015 滝川 Discus bT スピン 場外着陸中の低速旋回 死亡/大破 2013 北海道 H-36 Dimona 下降気流 山脈の稜線超えで下降気流に遭遇 死亡/大破 2008 板倉 ASK23B 立木衝突 低高度での最終進入 死亡/大破 2008 飛騨 G109 立木衝突 着陸時にオーバーラン 軽傷/大破 2007 都城 FOX 失速 低速進入による失速 軽傷/大破 2007 霞目 ASK23B 空間識失調 ウィンチ曳航中のヒューズ切れ 死亡/大破 運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成 2024/06/16
  13. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 22 滑空機重大事故(死亡/重傷/大破) 2000~2007 年 場所

    機体 事故原因 状況 搭乗者 / 機体 2007 長野 ASK23 送電線衝突 リッジソアリング中に接近 軽傷/大破 2006 但馬 ジマンゴ スピン 滑走路に引き返す時に低空旋回 死亡/大破 2005 妻沼 ASK21 川面接触 ベースで急降下中の機首引き上げ遅れ 死亡・重症/大破 2005 関宿 ASW24 Top スピン ソアリング中の低空低速急旋回 死亡/大破 2005 浜北 クラブリベレ スピン ウィンチ曳航中に不適切な上昇姿勢 死亡/大破 2005 関宿 Super Dimona 地面接触 被曳航機が曳航機を吊り上げ 軽傷/大破 2005 久住 プハッチ スピン 追い風ウィンチ曳航による失速 死亡/大破 2005 板倉 ベンタス2a スピン 低空進入時の低空外滑り旋回 死亡/大破 2004 韮崎 ファルケ 不時着破損 離陸時の過度なエンジン出力減少 重傷・軽傷/大破 2004 栗橋 PW-5 スピン ウィンチ曳航中の傾き 重傷/大破 2002 小名浜 RF5 船舶衝突 濃霧中でVMCの維持不能 死亡/大破 2002 関宿 プハッチ スピン 飛行機曳航索離脱後の低空旋回 重傷・軽傷/大破 2000 栗橋 Ka6CR スピン 場周経路上の低速旋回 死亡/大破 運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成
  14. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 23 滑空機重大事故(死亡/重傷/大破) 1978~1999 年 場所

    機体 事故原因 状況 搭乗者 / 機体 1999 角田 DG-400 空中分解 ウェーブ飛行中のフラッター 死亡/大破 1998 八ヶ岳 タイフーン17E 山岳衝突 意図しない雲中飛行での空間識失調 死亡/大破 1997 阿蘇 L23 ブラニック スピン ウィンチ曳航中の減速と自然離脱 死亡・重症/大破 1996 宮城 Discus bT スピン 不時着のエンジン始動遅れ 重傷/大破 1996 美幌 ASK13 失速 ウィンチ曳航中の減速 死亡/大破 1996 美瑛 ASK13 スピン 不適切なオーバーヘッドアプローチ進入 死亡・重症/大破 1992 小山 L13ブラニック スピン 不適切な飛行機曳航追随 死亡・重症/大破 1989 当間 Ka6E スピン ソアリング中の低速旋回 重傷/大破 1983 妻沼 H-23C 空間識失調 ウィンチ曳航中の意図しない雲中飛行 死亡/大破 1983 関宿 IS29D2 スピン 場周飛行中の低速旋回 死亡/大破 1983 宝珠花 ASK18 空中分解 ウィンチ曳航中のメインピン脱落 死亡/大破 1982 霞目 ピラタスB4 スピン 第4旋回中の低速旋回 死亡/大破 1978 太田 B4/ASK13 空中衝突 ソアリング中の空中衝突 B4死亡/大破 運輸安全委員会航空事故報告書検索より作成
  15. 25 Emergency Maneuver Flight Training ヒューマン・ファクターズとヒューマン・パフォーマンス(ICAO ANNEX 4) ヒューマン・ファクターズとは? ヒューマン・パフォーマンスを適切に考慮することにより人間と周りの他の要素との安全な調和を求め

    る、航空機の設計、証明、トレーニング、オペレーション、整備に適用される原理 25 エラーをした当事者だけでなく、それを取り囲む要素がどうであったかが問われる。 人はエラーするものなので、「エラーをしないように」という掛け声では無策 人間の能力と限界を理解し、機器の設計や働く環境、人間が機能する訓練に適用 ヒューマン・パフォーマンスとは? 航空における運航の安全性と効率性に影響を及ぼす人間の能力と限界 2024/06/16
  16. 26 Emergency Maneuver Flight Training SHEL Model 26 S:Software(ソフトウエア) チェックリスト、規則・規程類、各種情報等

    H:Hardware(ハードウエア) 航空機、計器の並び、スイッチの形等 E:Environment(環境) 天候、時間、組織風土、明暗、騒音 L:Liveware(人間) 中心のL(当事者本人) 外側のL(中心のLの行動等に影響がある人々) モチベーション、ストレス、疲労、パフォーマンス低下により変化 ヒューマン・パフォーマンスを適切に考慮することにより、人間と周りの他の要素との安全の調和を求めるもの https://www.aviationfile.com/shell-model-aviation/ 2024/06/16 ソフトウェア 本人 ハードウェア 周りの人間 環境 中心の人間と、それを取り巻く各要素の間のInterfaceの部分がそれぞれ適正に合わさっていないと真ん中のLは Errorを起こしやすい。
  17. Emergency Maneuver Flight Training 人間の能力の限界 BGA Instructor Manual 27 2024/06/16

    ・眼の機能 ・平衡感覚(空間識の把握) ・情報処理(長期記憶・短期記憶) ・行動の自動化 ・バイアス(先入観・思い込み) ・加齢による衰え
  18. 28 Emergency Maneuver Flight Training 人間の空間識把握のメカニズム 1. 視覚 3. 体性感覚

    (筋肉、皮膚、関 節より) 2. 内耳の感覚 脳内で情報の統合処理 空間中の位置把握 身体各部へ指令 Code7700 HP より 28 3次元空間の中でどのように自分の姿勢や方向を知るのか? 地上 重力の方向は、体の各部分によって感じること ができ、地球がどの方向にあるかがわかる。 空中 遠心力と重力の合力がGとなり、体の感覚が姿 勢指示器として役立たなくなる。 2024/06/16
  19. 29 Emergency Maneuver Flight Training 1983年の初単独飛行墜落事故 1983年 妻沼滑空場 機体:萩原式H-23C 前席:初単独飛行の練習生

    機体損傷:大破 パイロット:死亡 <事故の概要> 事故当日はその大学の合宿最終日。 天候は曇り時々雨で、それまでは離脱高度が3-400m 取れていた。 教官同乗によるチェックフライト後、パイロットは 初単独飛行でウィンチ曳航により発航したが、地上 約200mでたまたま流れてきた断片雲に入りそうになった ため、ウィンチ操縦者がパワーカットした。 曳航索は自然離脱したが、機体は上昇姿勢のまま右へ 旋回しながら雲に入った。次に機体が見えたときには垂 直急降下姿勢になっており、そのまま地面に激突した。 約200m 雲に入る 運輸安全委員会航空事故報告書より 私は自校の入り日だったため、この時は機体を組んで いた。私は水平尾翼を持って土手越えをしていた時にこ の事故を目撃した。その後合宿は中断され、早稲田は 事故処理を手伝うことになった。 2024/06/16
  20. Emergency Maneuver Flight Training 人間の視機能の問題点 FAA Pilot Handbook of Aeronautical

    Knowledge https://www.nidek.co.jp/eyestory/eye_9.html 盲点(Blind Spot) 誰にも眼には見えない点がある。 Skybrary Aero HPより Empty Field Myopia(空間仮性近視) コントラストがない空間を見ていると、焦点が自動的に手前に合ってしまうため、 他機を見つけにくくなる状態。 30 2024/06/16
  21. Emergency Maneuver Flight Training 31 衝突コース (Collision Course) Langley Flying

    Scheel HPより 相手機の見え方 他機の位置がお互いに止まって見えた ら、「衝突コース」にあるといえる。 BGA Manual 衝突コース(Hudson Midair Collision) 2024/06/16
  22. 35 Emergency Maneuver Flight Training 操縦士訓練の変遷と現代の訓練手法 航空事故の減少率横ばい 70年代に「テネリフェの悲劇」「 イースタン航空自動操縦解除」「 ユナイテッド航空燃料枯渇」など

    の操縦士のエラーによる大事故が 続発した。 人間の能力の限界 どんなに訓練をしても、人間で ある限りエラーを防ぐことは困 難。優秀な操縦士はエラーに対 してどのような対処をしている かの研究が進む。 Technically Advanced Aircraft 機材故障による事故の減少と航空 機のグラスコックピット/自動化や 複雑な運航環境に起因する事故の 増加。操縦士に求められる能力が 時代と共に変化してきた。 CRM TEM EBT / CBTA 1980年代 1990年代 2010年代~ 航空機事故発生率が大幅に減少 黎明期は機材故障による事故が多 発したが、航空機の信頼性の向上 、航法施設、管制方式の進歩、訓 練方法の進化(初期シミュレータ の導入等)が貢献。 テクニカルスキル重視 1940年~70年代 Crew Resource Management ヒューマンエラーの要因はヒュー マンファクターズが関与。 CRM スキル向上を目的としたCRM訓練 開発。LOFT(Line Oriented Flight Training)訓練の導入(路線運航を 想定したシナリオ訓練)。 Threat & Error Management エラーは不可避として「エラー への対処」に発想を転換。運航 におけるリスク要因へのマネー ジメント。ICAO/JCABが操縦士 だけでなく、組織共通の安全概 念として導入提唱。 Evidence Base Training (EBT) / Competency-based Training & Assessment (CBTA) 自動操縦を適切に使用し、航空機 の作動状況を確認する能力や状況 認識力・判断力・コミュニケーシ ョン力などのCompetency付与。 操縦士の手動操縦技術訓練 「操縦士のエラーは怠慢や不注意 が原因」としてエラーをしないよ うにする旨の勧告が出る。機材故 障発生時における操縦士個人の基 本的な手動操縦技術習得に重点が 置かれた訓練。 時 代 背 景 訓 練 手 法 手動操縦技術訓練 ノンテクニカルスキル重視 CRMスキルの向上 ・Situational Awareness 状況認識力 ・Decision Making 意思決定力 ・Workload Management ・Team Building ・Commnication 出典 : FAA Airplane Flying Handbook 2024/06/16
  23. Emergency Maneuver Flight Training グライダー・パイロットに必要な技能 グライダーパイロット に必要な技能 操縦技術 知識 計画・判断

    取組姿勢 通常操作(場周、XC) 非常操作 エネルギー・マネージメント 航空機・空力・搭載機器・性能 環境(気象・地形) 人間の能力の限界 状況認識(危険予知)能力 意志決定能力 リスクマネージメント能力 タスクマネージメント能力 搭載機器マネージメント能力 CFIT*マネージメント能力 法令遵守 積極性 協調性 沈着性 コミュニケーション能力 計画マネージメント能力 リーダーシップ 緊急時の対応 不時着時のサバイバル リーダーシップ エアマンシップ (ICAO 定義) 正しい判断力、確固 たる知識と技術、そし て飛行目的を完遂す る心構えを常に持ち 続けるパイロット精神 飛行技術 計画・判断力 状況認識力 規則の遵守 TEM・CRM*能力 同乗者の安全確保 *CFIT=Controlled Flight Into Terrain *CRM=Crew Resource Management *TEM=Threat and Error Management ★テクニカルな能力 ★ノン・テクニカルな能力 この能力向上の訓練が必要→ 2024/06/16 37 航空法要求項目
  24. Emergency Maneuver Flight Training 事故防止のために必要な能力 39 2024/06/16 パイロットに不足している能力 規則の遵守 状況認識

    計画・判断力 航空機のメカニズム(空力・機体・装備・性能) 大自然のメカニズム(気象・地形) 人間のメカニズム(人間の能力の限界) 知識 総合能力 山岳の飛び方 低高度での正しい操縦 エネルギー・マネージメント 技能 これらは訓練によってのみ身に着けられる能力 学び続けることと定期的な訓練の重要性を認識する 滑空機の危険にはどのようなものがあるかの認識 本来は練習生が飛行 を始める時に操縦教 員が教えるべき内容
  25. Emergency Maneuver Flight Training 40 項目 テクニカルスキル ノンテクニカルスキル 概要 航空機の操縦技術、航法、機器やシステムの

    操作、、運航に必要な知識などの技術的なスキル 状況認識力、判断力、法令順守能力等のヒューマンファク ターに起因する事故防止に必要なスキル スキルの種類 操縦技術 通常操作 CRMスキル CRM=Crew Resource Management 状況認識 非常操作 意思決定 航法、計器飛行等 ワークロードマネージメント 飛行支援 ピスト、ウィンチ、曳航機、地上作業 チームビルディング 知識 機体、システム、航空力学 コミュニケーション 航空法、その他関連法令 TEM Threat & Error Management 気象、地形 取り組み姿勢 積極性、協調性、先見性等 クロスカントリーに必要な知識 リーダーシップ 通常時、非常時の対応 人間の能力の限界 法令遵守能力 航空法、通達、条例等 訓練の内容 訓練生は事前にどこで何の緊急事態が発生するか を知らされる。 「次は失速をやりましょう!」「次はダミーブレークで す。」「滑走路に機体がいるから隣に降りましょう。」 訓練生は事前にどこで何の緊急事態が発生するかを知らさ れない。教官が与える想定による緊急事態に対応する。 「ここで索が切れた」「風が強くなって滑走路に戻れなくなっ た。」「進入中、指定された滑走とに機体がいた。」など テクニカルスキルとノンテクニカルスキル 2024/06/16
  26. Emergency Maneuver Flight Training 41 CRMスキル 航空機の操縦操作には直接関わらないものの、航空機の運航に必要な認知、判断、対人に関わる知識 状況認識 航空機の内外で起きている事象を認識 ⇒

    分析 ⇒ 予測 意思決定 問題を特定 ⇒ 解決策の検討 ⇒ 決定 ⇒ 行動の振り返り ワークロードマネージメント 様々な場面で発生するタスクを適切に取り扱い、航空機乗組員のパフォーマンスを一定 以上に維持 チームビルディング 運航に関わる人たちが効果的に機能を発揮するチームを形成 コミュニケーション 運航に関する情報・意思等を、誤解がないよう明確に伝え合う CRM スキル CRM (Crew Resource Management)とは? 安全で効率的な運航を達成するためにすべての利用可能な人的リソース(航空機乗組員、客室乗務員、運航 管理者、整備士、航空管制官等)、ハードウェア及び情報を効果的に活用することをいう 運航規程審査要領細則 国土交通省 人的リソース=安全のための情報源=同乗者、ピスト、曳航パイロット、ウィンチ・オペレーター、地上クルー等 2024/06/16
  27. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 42 Threat&Error Management (TEM)とは https://www.mlit.go.jp/common/001224427.pdf

    複雑な運航環境の中で、リスクを最小化するテクニックで、乗 員が不安全要素を予測、認識、そして回復しながら運航する ことにより、安全マージンを確保する考え方。 不安全要素には「スレット」「エラー」「UAS」の3つがあり、そ れぞれに対し対抗手段(Countermeasures)を講じなければ ならない。 そして、これらの対抗手段をそれぞれ「スレット・マネジメント」 「エラー・マネジメント」「UASマネジメント」と呼んでいる。 対抗手段には「プロシージャー」「リソース」等を用いる。 参照:航空局安全部安全政策課リーフレット
  28. Emergency Maneuver Flight Training 43 Threat&Error Management Model 2024/06/16 c

    インシデント アクシデント Threat Threat 操縦士が関与しない領域(気象、地 形、管制、運航上のプレッシャー)で 発生し、運航を複雑にする要因 Error UAS Threat Management Error Management UAS Management UAS (Undesired Aircraft Status) 望ましくない航空機の状況 安全マージンが低下している状況 Error 安全マージンを低下させる 操縦士の行動・無行動 ステージ毎のManagementが不完全で、対策をすり抜け、 UASが発生してしまった場合、パイロットがそのUASの対処 に失敗すると、インシデント・アクシデントとなる。 【対抗手段(Countermeasures)】 プロシージャー ・声出し、チェックリスト、ブリーフィング 等 CRMスキル ・シチュエーショナル・アウェアネス(状況認識) ・デシジョン・メイキング(意思決定) ・ワークロード・マネージメント ・チーム・ビルディング ・コミュニケーション
  29. Emergency Maneuver Flight Training 300m以下のスピン スピンに入ったところでゲームオーバー。 曳航初期であれば、一旋転する前に地面に衝突している。 スピン訓練に必要なのは、回復訓練よりも回避訓練。 Threat &

    Error ManagementでUASを回避する。 44 FAA Glider Flying Handbook 下を向きながら回転しているので、回復するとノーズダイブの状態 回復時の速度 エレベーターやや戻す:150km/h エレベーター中立:180km/h エレベーター押す:200km/h 増速~フレアー:失高 50-100m 150km/hからの引き起こし:約50ft上昇(プハッチの場合) 不時着適地は?風向は? 高速からフレアーかけられるか? 恐怖を感じながら、冷静に操作できるのか? 2024/06/16
  30. Emergency Maneuver Flight Training フライト前にThreatを認識する リスク要素 評価内容 パイロット 健康状態、精神・感情の状態、疲労度、極度の緊張等 スピン訓練の実施状況、機体の慣熟度等

    機体 性能・運用限界・装備・耐空性、重量、フラップ・ダイブ位置、計器の作動、 速度や降下率等 環境 風向と風速・天候の変化、上昇気流・下降気流の状態、他機の動向、地形や障害 物の位置、ピストによる指示、法令・空域・空港規則等の指定経路・高度、離着陸 場の条件等 外圧 他者からの飛行完遂への期待や圧力。スケジュール上の圧力。 仕事・家庭・友人・先輩・教官からの圧力等。 2024/06/16 45 Threat 複雑な運航環境の中で航空機乗組員に降りかかり、航空機乗組員の業務負荷や心理的負担を増大させ、 乗員が適切な対応をしなかった場合には乗員のエラーを誘発する可能性がある乗員以外の要因(エラーの 発生する確率が高くなる要因)
  31. Emergency Maneuver Flight Training 46 出発前の確認 スレット&エラー・マネージメント Threat スレット Error

    エラー Management マネージメント 気象 強風・横風と大きな沈 下帯 風下側へ流されて戻れなく なり、不時着 着陸時の姿勢制御不能 風上を常にキープ 着陸時の速度キープ 管制 飛行する滑空機の数 が多い 他機とのニアミス 見張りの強化、無線の傾聴 ホットスポットでのポジシ ョン一方送信 空港 夕方の西日による視 程低下 他機とのニアミス 自機の位置を一方送信でアナ ウンス 地形 場周経路近くの送電線 索切れ時や低くなった時 の送電線接近 事前に滑走路周辺の障害物を チェックし、索切れ時の手順 をレビューしておく。 組織 クロスカントリーで 不時着した時のリト リブ要因不足 不時着したくないので無 理に滑走路に帰る。 クロスカントリー実施時は 事前に場外着陸時の手配を しておく。 その他 体重が軽いパイロッ トとの前席交代 バラスト搭載忘れによる 不適切な重心位置 事前に交代パイロットに注意 喚起とW&B表の確実なチェッ クを行う。 2024/06/16
  32. Emergency Maneuver Flight Training 47 Threat&Error Management 2024/06/16 c インシデント

    アクシデント Threat Error UAS Threat Management Error Management UAS Management Management失敗でアクシデントに 近づかないように 【対抗手段(Countermeasures)】 Threat Management 風上を常にキープしているかの 自己チェック及びポジションレ ポート Threat 強風と横風 Error 風下に流されて滑走路に届かず不時着。 すり抜けられない! すり抜けられない! UAS 狭い場所に着陸を試み、低空旋回でスピン。 Error Management 滑空機の性能を事前に計算し、 すり鉢をキープする。 Accident スピン回復できず地面に激突 UAS Management 着陸できそうな不時着場を早い段 階でチェックしておく。 万一、不適地だったとしても、通常 通り、場周を描いて着陸を試みる。 【CRMスキルを用いて対抗手段を実施】
  33. 48 Emergency Maneuver Flight Training ディスカスbT スピン事故 ①概要 平成27年 北海道樺戸郡浦臼町

    離陸:たきかわスカイパーク 機体:ディスカスbT (ターボエンジン搭載) 教育証明:総飛行時間1195時間 (最近30日間の経験18時間) 機体損傷:大破(火災発生なし) パイロット:死亡 2024/06/16
  34. 49 Emergency Maneuver Flight Training ディスカスbT スピン事故 ②状況 <状況> 飛行機曳航で離陸し、XCをしていたが、

    ウェーブ性の沈下により高度が3200ftに低下し たため平地へ針路を向けた。稜線を越えてか らエンジンを出し、始動を2回試みたが、かから なかった(燃料はほとんどなかった)。 高度が1200ft (標高約600ft)に低下したため、 エンジンを展開したまま設定されていない不時 着場に着陸を試みたが、すでに高度は低下し ており場周パターンは描けなかった。 最終左旋回中に高度が低下し、その際に左主 翼が立木に衝突して墜落した。 2024/06/16
  35. 51 Emergency Maneuver Flight Training ディスカスbT スピン事故 ④状況 上空から地表の傾斜の程度を判 断することは難しく、また、着陸時に障害となる、牧草地の

    中央付近に存在した金 属の裸線の柵を識別することは困難で あったと考えられる。 最終左旋回中は背風となり、機長は左旋回中 に着陸場所付近の柵や杭に気付き、風に流 されずにそれらの手前に着陸するため左 バンク角をさらに大きくして旋回半径を小さくしよう とし、高度低下を助長するこ ととなった可能性も考えられる。 2024/06/16
  36. Emergency Maneuver Flight Training ディスカスbT スピン事故 ⑥TEMを話し合おう 要因 Threat スレット

    Error エラー Management マネージメント 気象 管制 空港 地形 組織 その他 事故再発防止のためには何をすれば良いか? 53 2024/06/16
  37. Emergency Maneuver Flight Training 飛行中の意思決定(Decision Making)のための3Pモデル FAA Aviation Instructor’s Handbook

    Perceive 状況認識 Perform 実行 Process 検討 Perceive 危険の認識 すべての行動の始まり XC中、ウェーブ性の上昇気流がなかなかつ かめず、大きな沈下に遭遇して高度が低下。 Process リスクレベルの検討 低くなった時の選択肢には何がある? ①すり鉢の中だったら、ホームベースへ戻る。 ②既知の不時着場に着陸する。 ③既知の不時着場を押さえてエンジンをかける。 ④未調査の空き地に着陸する。またはエンジンをかける。 リスクマネージメントの実行 ①すり鉢内のホームベースへ戻るを選択 途中、高度をモニターして、必要であれば ②既知の不時着場に着陸する。または ③既知の不時着上を押さえて、エンジンをかける。 ④はリスクが高いため、可能な限り避ける。 状況認識に戻る。 ホームベースへの経路はどうするか? 無線でピストや他機から情報が取れるか? 風や沈下の状況は有利か不利か? ホームペースに届くか届かないかの判断 2024/06/16 54
  38. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 57 Shoreham airshow glider crash

    2010 雲高低く、索たるみがあったた め、自身で約200mで離脱。 旋回してエアブレーキを使用し、 滑走路に降りようとしたが、位置 的に降りられないと判断したた め、エアブレーキを閉めて、滑 走路エンドで旋回を試みた時に スピンに入った。
  39. 59 Emergency Maneuver Flight Training LS4 スピン事故 ①概要 2016年 妻沼滑空場

    機体:LS4-b型(単座) 機体損傷:大破 パイロット:死亡 状況: 妻沼で開催された全国大会中、場周経路付近 で旋回中、スピンに入り墜落した。 運輸安全委員会事故報告書より 機長の飛行経験 自家用操縦士 4年生 総飛行時間:110時間 最近30日間の経験:3.3時間 / 同型式の飛行時間:8.1時間 最近機長は主将として飛行することよりも部全体のマネージメントが多忙であったため、操縦技量の上達に伸び 悩んでいたところもあったが、当日は朝からしっかり食事をとり、やる気に満ち溢れていた様子であった。 2024/06/16
  40. Emergency Maneuver Flight Training LS4 スピン事故 ②状況 天気 曇り、 視程10km以上、風向

    南、風速 2m/s、 同機は、滑走路14からウインチ曳航により 発航し、高度約 500mで離脱、滑空場北東約1km地点からソアリングを開始、 約780mに上昇して第1旋回点を目指したが、途中で断念して 滑空場付近まで戻った。 その後、滑走路14北側場周経路付近で約260mから旋回を開 始した。当時は同機を含め5機飛行していたが、いずれも上昇 することができず、そのうち2機が先に着陸した。同機はピスト に着陸する旨をコールし、場周経路に入るために約220m、対 地速度約70km/hで右旋回を行った。 この時、深いバンク角で右旋回し、機首が下がって急激に降下 した。旋回が終了する時には機首が少し上がって持ち直した かに見えたが、その後再び機首が大きく下がり、急激に降下し た。同機はスピンに入り、2旋転半くらいして墜落した。 運輸安全委員会事故報告書より 60 2024/06/16
  41. Emergency Maneuver Flight Training LS4 スピン事故 ③原因と再発防止策 原因 ・同機が低高度において失速したため回復操作を行ったものの、 再び失速してスピンに入り、墜落したものと推定される。

    ・同機が低高度で失速したことについては、低速のまま急旋回 を行ったことによるものと考えられ、また重心位置が航法限界 近くに調整された同機の飛行特性に機長が十分慣熟していな かったことが関与した可能性が考えられる。 再発防止策 公益財団法人日本学生航空連盟(抜粋) ・緊急処置や異常姿勢回復学科及び実技講習の訓練を受ける。 ・場周経路付近の対地高度250m以下では、ソアリングは実施 しない。 ・場周経路上のチェックポイント通過後、推奨最小進入速度に 対して5km/h以上の増速を行う。 ・単座機による飛行の場合、重心位置を許容重心範囲の中心 付近に調整することを励行する。 ・競技会中は、競技の前後にチェックシートを使用し、選手の体 調及びメンタルヘルスの管理を実施する。 運輸安全委員会事故報告書より 機長の重心位置 ・普段はトリムウェイト2個搭載・・・後方限界から12.5% ・競技会前日に1個に変更・・・後方限界から約4.5% ASK23と比較して速度コントロールがうまくできないと 一部の部員やコーチに話していた。普段から速度低め に飛ぶ傾向があり、この方が良い感覚で飛べるとして 変更したものと思われる。 61 2024/06/16
  42. Emergency Maneuver Flight Training 62 失速速度と重心位置(CG)の限界 CG位置 ・迎え角とCG位置は関係ない。エレベーターの効果に影響する。 ・失速速度の定義 気流の剥離(主翼の失速)または縦方向のコントロールを失う(尾翼の失速)

    のどちらか。 ・エレベーターの安定効果は表面を通過する気流の速さとエレベーターの制御能力で決まる。 CG位置が前方に移動すると速度を保つためにエレベーター操作量が多く必要。 限界までいくと主翼は失速していなくても機首は下を向く。 CGが前方限界 ・尾翼の制御能力の限界。 ・水平安定板とエレベーターの大きさを、すなわち旋回時に十分な力をエレベータが発生するように決定される。 CGが後方限界 ・失速速度は気流の剥離やバフェットなどの主翼の空力上の限界で設定。 ・安定性の限界。グライダーが十分な縦安定性を有してスピンからの回復に問題がないように決定される。 2024/06/16
  43. 63 Emergency Maneuver Flight Training 重心位置の影響 前方重心の特長 ・縦安定性が増す ・失速から回復しやすい ・高速飛行に適する

    前方限界を超えると ・着陸時の引き起こし操作不能 後方重心の特長 ・縦安定性が減る ・操縦性が増す ・低速飛行に適する 後方限界を超えると ・失速からの回復不能 重心 前方限界 後方限界 機首下げ傾向 機首上げ傾向 2024/06/16
  44. Emergency Maneuver Flight Training グライダーの最適な重心位置 DG HP「グライダーの最適な重心位置について」より グライダーは後方限界に近い位置では良 い性能は得られない。単にピッチとロール 方向のコントロールが非常に敏感となるだ

    け。また、パイロットは長距離飛行中に2L 程度の水分を失う(汗をかく)ことはありえ るので、飛行中に重心位置が許容範囲を 超えてしまい、すべてのコントロールが過 敏といえる状況になってしまうかも。 後方限界から30~35%前方の重心位置 を選択。このあたりが安全性の面からも性 能の面からも最適な位置。 64 備考:経験が浅いパイロットは50%よりやや前方 を推奨 2024/06/16
  45. Emergency Maneuver Flight Training LS4 スピン事故 TEMを話し合おう 要因 Threat スレット

    Error エラー Management マネージメント 気象 管制 空港 地形 組織 その他 事故再発防止のためには何をすれば良いか? 65 2024/06/16
  46. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 66 2021/10/12 美瑛 アーカスMスピン事故概要(調査中) 当該機は前月日本に導入されたばかりで、当該フライトが3回目

    の飛行。 自力発航で美瑛滑空場RW31を離陸し、 90度ほど旋回した時点で約100mでエンジンが停止した模様。 左旋回を継続し滑走路方向を向いたところで突然スピンに入る。 1回転弱回った時点で旋転が弱まり機首が上がりだしたが、その 後は不明。 エンジン停止から約10秒後に地面への衝突音が聞こえた。 前席(69才) 飛行時間3000時間以上 Arcus M 800時間以上 オーストラリアで離陸直後の ENG停止経験あり 後席慣熟2回後、 前席でチェックフライト1発目 後席(68才) 飛行時間は3000時間以上、 機体所有者 SL 2000時間以上
  47. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 67 エンジン運転時(最大出力) Vy =90km/h(25m/s) Vv=+3.42m/s

    エンジン停止時(エンジン展開) Best L/D V=95km/h(26.4m/s) Vv=-2.0m/s 滑空比=13:1 (Duo Discus =18:1) SL機上昇中(+フラップ)の特性 ・ノーズダウンモーメントのためノーズアップ気味にトリム Arcus Mの性能 エンジン展開・エンジン停止時のArcus M(赤)とDuo Discus T(青)の推定ポーラーカーブ エンジン展開時 ・失速速度 82km/h エンジン格納時 ・直線失速からの回復高度:60m ・スピンからの回復高度:260m (Duo Discus T : 110m)
  48. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 68 滑走路長 850m Arcus M

    エンジン停止時の推定滑空高度 エンジン展開/停止時 Best L/D 95km/h Bank 25°旋回半径 約150m 直線中沈下率 -2.0m/s 100m 180°旋回開始→終了 約20秒 旋回中沈下率 -2.3m/s 失高 46m 44m 300m 植生 約15m 90°旋回終了 失高 23m 直線 275m 10秒 失高 20m 24m 1m Vy90km/h→Best L/D95km/h 加速に必要な時間約3秒とする 失高10m 距離75m 90m ・エンジン停止から約10秒後に衝突音 ・100mから地面に落下するまでの秒数約5秒 ・エンジン停止から約5秒間で、回復不能のスピンに陥ったと推測 ・状況認識→判断→加速→旋回開始に要する時間は? 上昇中 Vy=90km/h 上昇率=+3.42m/s エンジン展開/停止時 Best L/D 95km/h 滑空比 13:1 1kmあたり失高=75m 沈下率 -2.0m/s 自分だったら、 動力機でエンジン停止時、 何mあったら滑走路に旋回して 戻ってくるか? それ以下の高度で停止したらど うするか?
  49. Emergency Maneuver Flight Training 69 3次元翼の失速 揚力式 L= (1/2ρV2) SCL

    抗力式 D= (1/2ρV2) SCD 空気密度:ρ [kg/m3] 相対速度:V [m/s] 翼面積 :S [m2] 揚力係数:CL (無次元) 抗力係数:CD (無次元) 揚力: L [kg] 抗力:D [kg] 動圧 パイロットが変えられる要素は何か? 2024/06/16 揚力と抗力の合力<機体重量の時 機体重量を支えられなくなる=失速する ↓ 何が失速に影響するか? L W 2次元翼の失速
  50. Emergency Maneuver Flight Training ARCUS M スピン事故 TEMを話し合おう 要因 Threat

    スレット Error エラー Management マネージメント 気象 管制 空港 地形 組織 その他 事故再発防止のためには何をすれば良いか? 71 2024/06/16
  51. 72 Emergency Maneuver Flight Training Ka6CR スピン事故 ①概要 2000年 読売大利根滑空場

    機体:Ka6CR型(単座) 機長の飛行経験 総飛行時間:600時間 最近30日間の経験:39分 同型式の飛行時間:不明 機体損傷:大破 パイロット:死亡 ウィンチ曳航による単座のソロ飛行 運輸安全委員会事故報告書より 2024/06/16
  52. Emergency Maneuver Flight Training Ka6CR スピン事故 ②状況 天気 曇り、 視程10km以上、風向

    北、風速 約0.5m/s、 同機は、滑走路31からウインチ曳航により 発航し、高度約1350ftで 離脱、場周経路を 飛行し、ダウンウインド・レグで利根川左岸沿い (滑空場対岸)にある工業団地 の上空約1200ftで数回旋回した後、 徐々に高度を下げながら、他の会員の 飛行速度と比較し、ゆっくり とした速度で川下側へ飛行を続けた。 同機が工業団地と東武線の鉄橋の中間付近上空を飛行中、同鉄橋 付近上空で最終進入中であったモーター・グライダーからタッチアン ドゴーの要求がピストにあった。その後、同機機長から「オン・ダウン ウインド」とピストへ 無線連絡があった。ピストは同機に対して、モー ター・グライダーに続いて着陸するよう通報した。 2024/06/16 73 運輸安全委員会事故報告書より
  53. Emergency Maneuver Flight Training Ka6CR スピン事故 ③状況 通常、この付近では、会員は約500ftで飛行し、最低でも400ftの高 度が 必要であるが、この時の高度は350~400ftに見えた。

    その後、同機は左へ旋回した後、落下するように降下し、堤防の 陰になり見えなくなった。進入するものと思っていたら、左旋回を 開始したので、モーター・グライダー との間隔をとるためかと思っ たが、他の会員の飛行速度と比較し、低速度で飛行しており、低 速度のままで、バンクをしないで左旋回をしたように見えた。 2024/06/16 74 ・Threatは何か? ・Errorは何か? ・Countermeasuresは何ができたか? ・事故再発防止のためには何をすれば良いか? 運輸安全委員会事故報告書より
  54. Emergency Maneuver Flight Training Ka-6 CR スピン事故 TEMを話し合おう 要因 Threat

    スレット Error エラー Management マネージメント 気象 管制 空港 地形 組織 その他 事故再発防止のためには何をすれば良いか? 75 2024/06/16
  55. 76 Emergency Maneuver Flight Training ベンタス2a スピン事故 ①概要 2005年 板倉滑空場

    機体:ベンタス2a型(単座) 機長の飛行経験 総飛行時間:354時間 最近30日間の経験:3.5時間 同型式の飛行時間:3.5時間 機体損傷:大破 パイロット:死亡 日本選手権出場を計画しており、選 手権に使用するレース機の慣熟とク ロスカントリーの練習飛行 運輸安全委員会事故報告書より 2024/06/16
  56. Emergency Maneuver Flight Training ベンタス2a スピン事故 ②状況 風向約300°風速約5m/s。滑走路は33。上 空では、2/8程度の積雲が4-5,000ftで、赤城 山から佐野市付近まで雲道があった。

    飛行後、約2km北北西の佐野ICを100mで通 過して、高度約58mまで160km/hに増速し、 高さ約85mの鉄塔間の高圧線を、高度約 100m、対地速度約80km/hで越えたところで ピストに対し 「高度が下がったのでダイレクト に入る」との通報。 進入中、ピスト担当者から同機に、現在の使 用滑走路は風に正対する33との通報。機長 は滑走路15上のピスト横を通過時、ギヤを出 さず、エア・ブレーキも使用しないまま滑走路 上を 低高度で通過し滑走路のエンド付近で 中央付近に向け、旋回を開始した。 2024/06/16 77 運輸安全委員会事故報告書より
  57. Emergency Maneuver Flight Training ベンタス2a スピン事故 ③状況 追い風の滑走路上を低高度で通過後、 滑走路端で風にほぼ正対する滑走路に 着陸しようとして、左上昇旋回(対地高度

    42m、対地速度116km/h)したが、オー バーシュート気味になり、深いバンクで 外滑り状態となり失速状態に陥ったため、 地面に衝突した。 当日は高度による風の強さの違いによ るウィンド・グラディエントがあったと予測 された。 2024/06/16 78 ・Threatは何か? ・Errorは何か? ・Countermeasuresは何ができたか? ・事故再発防止のためには何をすれば 良いか? 運輸安全委員会事故報告書より
  58. Emergency Maneuver Flight Training Ventus 2a スピン事故 TEMを話し合おう 要因 Threat

    スレット Error エラー Management マネージメント 気象 管制 空港 地形 組織 その他 事故再発防止のためには何をすれば良いか? 79 2024/06/16
  59. 80 Emergency Maneuver Flight Training 山の斜面への衝突事故 H-36ディモナ ①概要 2015年 日高山脈付近

    機体:ホフマン式H-36ディモナ型(動力滑空機) 機長の飛行経験 総飛行時間:5811時間 最近30日間の経験:2時間 同型式の飛行時間:3171時間 機体損傷:大破 パイロット:死亡 同乗者:死亡 女満別空港から鹿部空港への野外飛行 当日の目的地は花巻空港 最終目的地は沖縄 運輸安全委員会事故報告書より 2024/06/16
  60. Emergency Maneuver Flight Training 山の斜面への衝突事故 H-36ディモナ ②状況 機長は下降気流に遭遇し対地速度が減少する中、最終的に稜線を 越えるための安全な高度を確保できるものと判断して約2000mで 事

    故現場となる九ノ沢の谷に進入したが、その後、予想以上に下降気 流が強くなったため当該機体の上昇性能では降下を止めることがで きなかった。機長は風上側に発生する斜面上昇風を利用して 高度を 上げようとしたが、それが十分にできず、約1800mの斜面に衝突し、 雪山を滑り落ちた。 ELTはスイッチOFFであったため、作動しなかった(事故発生3日後に 発見)。 2024/06/16 81 ・Threatは何か? ・Errorは何か? ・Countermeasuresは何ができたか? ・事故再発防止のためには何をすれば良いか? 運輸安全委員会事故報告書より
  61. Emergency Maneuver Flight Training 山の斜面への衝突事故 H-36ディモナ ③状況 事故前日は上空の風が強くなったので出発中止した。当日は気圧の谷が北 海道地方を通過する見込みで日高山脈の稜線はよく見えており、4000ft付 近に少量の積雲が山脈にかかる程度。

    山脈稜線東側の事故現場周辺は、西から45~50kt程度の風が吹き、吹き 下ろしによる強い下降気流が発生していたものと考えられる。同機は約 2000mであった高度を岩内岳稜線の西側において南北に蛇行しながら、 約2450mまで斜面上昇風を利用して山脈の稜線を越える直前に高度を上 げていた。 2024/06/16 82 運輸安全委員会事故報告書より 帯広空港ウィンドプロファイル
  62. Emergency Maneuver Flight Training H36 Dimona スピン事故 TEMを話し合おう 要因 Threat

    スレット Error エラー Management マネージメント 気象 管制 空港 地形 組織 その他 事故再発防止のためには何をすれば良いか? 83 2024/06/16
  63. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 85 実技訓練実施時のポイント 実技訓練は上手に科目を実施したり、スピンからすばやく回復できるようになることが目的で はありません。学科講習で学んだ空力やポイントを確認したり、自分はどれくらい状況を把握 できたかを認識することが目的です。

    準備 ・科目開始前に低速飛行の姿勢にして、スティックの位置を確認する。 ・すべての失速・スピン科目はこの低速飛行姿勢で回復する。 ・失速・スピン回復中、真下を見るのではなくヘッドアップして地平線を見るように努力する。 人間は生まれながらに空を飛ぶようにはできていない。 地面が近いと恐怖を感じて、身体が固まる。 →頭が白くなって、操縦することをやめてしまう。 地面衝突寸前になると、上に上がりたい一心で、引けるも のを渾身の力で全部引いてしまう。 「やりたい操作とやるべき操作が違う」 自転中は視野が狭まり、空間把握が困難
  64. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 86 3次元視野 曳航中、曳航機に目の焦点が合っていると、変化 量が小さいため、大きくずれないとズレたことに気 がつかない。同様に左右45

    度の範囲は常に見 えているように視野を保つ。 上空では左右 45 度の範囲は常に見えているように 視野を保ち、着陸点などの一点に焦点を合わさない ようにする。 アプローチならば、この写真の上下左右 の範囲が見えていること(集中しすぎると見えない)。 曳航中には索切れ、他機との接近等多くの危険 があるので、曳航機を見ることだけに集中してい てはいけない。
  65. Emergency Maneuver Flight Training 87 スピン初期の特徴 「意図しない自転」 失速するまで→旋回 失速後 →自転

    旋回と自転の違いを認識できること。 他の水平1G失速の兆候はないことが多い 1/4回転までであれば、まだ翼上面の剥離の度合いが大き くないので、回復も容易。 1/2回転してしまうと、ほぼ完全に剥離してしまうので、回 復も困難。 BGA Instructor’s manual 2024/06/16
  66. Emergency Maneuver Flight Training 88 スピンの兆候は何か? 1G失速の兆候といわれる状況 ・ノーズ位置が通常より高い ・速度が遅いまたは減少している ・気流の音の変化

    ・速度計の針が振れる ・バフェット ・エレベーター、エルロン、ラダーのレスポンスが悪い ・高い降下率 2024/06/16 BGA Flight Instructor Manual Q1 : 失速に近づいていることがわかる計器は何か? Q2 : 1G失速の兆候はスピンにもあるか? Q3 : スピンの兆候は何か?
  67. 89 Emergency Maneuver Flight Training スピンからの回復操作(飛行規程) 1. フル・トップラダー 2. エルロン・ニュートラル

    3. フラップ・アップ 4. スティック・フォワード 5. 旋転がとまったら、ラダー・ニュートラル 6. 高速ダイブからのリカバリー これは、意図的にスピンを入れたらできる操作。 アクシデンタル・スピンの場合、ラダーを踏んでスピンに入っているという認識が そもそもないので、何が起こっているのかわからないのが現実。 スピンと認識できず、機体の挙動がおかしいと思ったらやるべきこと。 引いている操縦桿の力を緩め、エルロン・ラダーを中立にする。 それでも自転が止まらなかったら、トップラダーとスティックフォワード量を増やす。 (スピンがフラットな場合。多くのスティックフォワード量が必要) TWIN Ⅱ Spin Recovery
  68. Emergency Maneuver Flight Training 90 スピンとスパイラルの違い BGA Flight Instructor Manual

    スピンの特徴 スピン軸を中心に自転 ノーズダウン 旋回率大きい 低速 通常のG 非常に大きな降下率 スパイラルダイブの特徴 旋回(円弧) バンクは増大(結果的に安定) 旋回率はスピンより小さい すべてのコントロールは効く 高いG 2024/06/16 スピンとスパイラルの回復操作の違いは?
  69. Emergency Maneuver Flight Training スピンの兆候 2024/06/16 91 エレベーターを引いても機首が上がらない。 これはスピンに近づいている唯一の「スピンの兆候」 絶対にそれ以上引いてはいけない!!

    ラダーを中立にすること!! 「意図しない自転」のフェーズはすでにスピンに入っており、 そこからの回復は困難。 ラダー使用時の機体の動き ・低速旋回中、ラダーを少しでも使用すると、バンクがつき、ノーズが下がる。 ・この状態でエレベーターを引いても機首は上がらず、逆に下がる。 ・エルロンとラダーを中立にすると機首が上がる。 単舵操作の段階で理解している必要がある。
  70. Emergency Maneuver Flight Training 3舵のコントロールする軸 エレベーター ピッチ軸 エルロン ロール軸 ヨー軸

    ピッチ軸 ラダー ヨー軸 ロール軸 ピッチ軸 1つの操縦系統を動かすと複数の軸の動きがある。 図:FAA Glider Flying Handbook 2024/06/16 92 単舵操作の段階で理解している必要がある。
  71. Emergency Maneuver Flight Training エレベーターの役割 ・エレベーターのコントロールする要素 ・ ピッチ ・迎え角 ・揚力

    ・速度 ・荷重倍数 リッチ・ストーウェル著 「緊急機動訓練(EMT)」より出典 「エレベーター=高度」 「エレベーター=上昇」 エレベーターの使用を間違えると、失速、構造破壊に直結する取り扱い 要注意の舵。 根拠のある時しか使用してはいけない!! 2024/06/16 95
  72. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 99 AT索切れの場合の推定滑空高度 TWIN 2 板倉滑空場RW15

    曳航速度 =120km/h Best L/D 37:1 105km/h 30:1の時 1kmあたり失高=33m 沈下率 -0.8m/s 索切れ後、120km/h→105km/hに減速 Bank 25°旋回半径 約180m 旋回中の沈下率 -0.9m/s 180°旋回終了 約20秒 失高 18m 索切れ 100m 82m 直線 700m 24秒 失高 20m 90°旋回終了 失高 9m 62m 53m 土手の高さ 24m クリアランス 38m 自分にとっての安全高度は何m? 索切れ時、何mあったら滑走路に旋回して戻 ってくるか? それ以下の高度で索切れしたらどうするか? 土手の高さ 24m クリアランス 38m 滑空場標高 18m 62m
  73. Emergency Maneuver Flight Training 2024/06/16 102 阿蘇場外離着陸場 滑走路標高835m 標高800m 標高850m

    滑走路長900m 標高800m 935m=標高+100m到達点 935m=標高+100m到達点 自分にとっての安全高度は何m? 索切れ時、何mあったら滑走路に旋回して戻ってくるか? それ以下の高度で索切れしたらどうするか? 電線や電柱の位置は知っているか? 130m
  74. 108 Emergency Maneuver Flight Training 危険に近づかない工夫例 注意力散漫・一点集中になる状況の除去 ・状況認識能力を高めるためのシミュレーション実施 ・注意力をそらせる訓練等の実施 ・優先順位の判断

    ・普段と異なる経路の飛行の実施 ・考える訓練、自分の考えを評価してもらう機会の設定 ・常に根拠のあるフライトを行う。 失速から遠ざけるためのマージン ・ソアリング速度の検討 ・旋回時にバンクをしっかりつける。 ・旋回時に内滑り気味で飛ぶ。 ・トリムを前気味に取る ・ベース~ファイナルを高めに持ってきて、ダイブを使用して降りる。 2024/06/16
  75. 109 Emergency Maneuver Flight Training 組織的な安全カルチャーの構築 近年における交通事故死者数減少理由 警察庁は「交通安全教育の普及や車の安全性の向上、信号機や道路の改良などが 進んだ結果」と分析している。 パイロットとしての人間の能力の限界を限られた時間で高めることには限界がある。

    →ストールウォーニングなどの安全機器の導入検討 パイロットだけでなく、ピストや曳航担当者の状況認識力と判断力向上は、安全に直 結する。→CRM(Crew Resource Management) 組織的に教育や安全体制などの安全カルチャーを構築する。 運営・運航に関わる方全員の力を合わせてグライダーの事故防止に務めましょう! 2024/06/16