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実践、マルチクラウド環境でのコスト管理の現状と未来
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Kenichi Takahashi
June 03, 2025
Technology
0
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実践、マルチクラウド環境でのコスト管理の現状と未来
マルチクラウド時代のIT運用最適化 2025 夏 DXの要となるIT運用最適化でサステナブルなITサービスへ
での発表資料です。
Kenichi Takahashi
June 03, 2025
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Transcript
実践、マルチクラウド環境での コスト管理の現状と未来 高橋健一 (@kenchan) GMOペパボ株式会社 技術責任者 2025/06/04 ビジネス+IT マルチクラウド時代のIT運用最適化 2025
夏 1
自己紹介 高橋 健一 (@kenchan) GMOペパボ株式会社 技術責任者 兼 技術部 部長 2014年にソフトウェアエンジニアとしてGMOペ
パボ株式会社に入社。 2016年からはEC事業部 事業部CTOとして「カラ ーミーショップbyGMOペパボ」の技術課題の解 決に従事。現在は技術責任者として全社のエンジ ニア組織のマネジメントに取り組んでいる。地域 Rubyコミュニティ「Shibuya.rb」の運営係。 https://kenchankusan.com https://scrapbox.io/kenchan 2
3
目次 1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps 4. まとめ
4
1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 加速するクラウド利用とマルチクラウド化 政府の第2期政府共通プラットフォームへのAWS採用決定も後押しとなり、企業のク ラウド活用の急速に進展している。 それと同時に、戦略的に複数のクラウドインフラを組み合わせる「マルチクラウ ド」を採用する企業も増加している。 ※1 令和6年版情報通信白書 ※2
2024年度版 クラウド・インフラ最新動向(Google Cloud) 5
1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 マルチクラウド戦略の4つの狙い ベスト・オブ・ブリードの実現 特定のワークロードに最適なインフラの選択 クラウドベンダー毎の強みを最大限に活用(AI/ML処理やデータ分析等) 災害復旧・事業継続性の改善 複数クラウド・リージョンへの分散 ベンダーロックインの回避 複数クラウド利用前提のアーキテクチャの採用
コスト削減・最適化 6
1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 国内におけるマルチクラウド戦略推進の主要因は「コスト最適化」 マルチクラウド戦略を推進する企業においては、「データ主権」と「コスト最適 化」が主要因という調査があり、かつ日本国内の企業においては「コスト最適化」 が1位である。 グローバル 日本 1 データ主権/データの局所性
(41%) コストの最適化 (44%) 2 コストの最適化 (40%) データ主権/データの局所性 (33%) 3 ビジネスの俊敏性とイノベーション (30%) ビジネスの俊敏性とイノベーション (28%) 4 ベスト・オブ・ブリードのクラウド・サービス(25%) ベスト・オブ・ブリードのクラウド・サービス (28%) 5 クラウドベンダー・ロックインの懸念 (25%) 規制対応 (28%) ※ パブリック・クラウドを利用する企業の98%がマルチクラウド・インフラストラクチャ・プロバイダー戦略を採用 | Oracle 日本 7
1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 マルチクラウド戦略におけるコスト最適化を阻む課題 マルチクラウド戦略を採用しても、コストが最適かどうか判断するのも、最適な状 態を維持し続けるのも極めて困難である。 可視性の欠如 多様な環境にまたがるコストの把握 コスト配賦の難問 クラウド支出の正確な帰属 蔓延する無駄
過剰プロビジョニング、遊休リソース、不適切な選択 複雑性の増加に伴う見えないコストの把握 ガバナンスとセキュリティコストに与える影響 8
目次 1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps 4. まとめ
9
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 ハイブリッドクラウド&マルチクラウド戦略を採用するGMOペパボ GMOペパボでは、ハイブリッドかつマルチクラウド戦略を採用している。 低レイヤーの操作を前提としたコスト最適化が重要なレンサバ・ドメイン事業 コストと高い可用性を両立することが求められるECサイト構築事業 柔軟なリソース管理とスケーラビリティが求めれるグッズ販売/ハンドメイド事業 10
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 ECサイト構築「カラーミーショップ」のアーキテクチャ カラーミーショップはハイブリッドかつマルチクラウドをもっとも活用しているサ ービスである。 高可用性: ストレージやDBなど高い可用性が求められるものはAWSを利用 コスト最適化: コンピューティングリソースはプライベートクラウド中心 データ活用:
Google Cloudの強力なデータ分析ツールを利用 11
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 ハイブリッドクラウド・マルチクラウドにおけるコスト管理の課題 2024年は「コスト可視化と把握」「予実管理」に取り組み一定の成果が得られた。 以降ではその事例を紹介する。 12
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 コスト管理のプロセスの構築 はじめは自動化やシステム化はせず、スプレッドシートでプロセスを構築した。 1. コスト構造の明確化と分類 利用クラウド環境と課金体系従量or固定)等のコスト構造を把握する 2. 予算と実績の可視化 現状の予算と実績をコスト構造毎に把握し、現状の予実差異を把握する
3. 実績を踏まえた見通しの反映 為替や季節要因等の反映方法を決定し、期末までの見通し作成 4. コスト削減目標の設定を見通しへの反映 金額や予実差異の大きいものからコスト施策を検討し見通しに反映する 5. 2~4を継続的に行う体制作り 事業責任者や部門経営メンバーを含めた継続的なコスト把握体制を構築する 13
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 コスト管理のプロセスの構築: 分類と予実差異の把握 クラウドの分類を行い予算を入力し(1)、これまでの実績(2)を各クラウドサービスの コストエクスプローラーから入力する。為替や割引の計算式をオレンジ行に入れて 実際に支払った金額に近くなるように。 直近のコストが続くと仮定して年末までの見通し(3)をいれると、年の予算と見通し の差額(4)を把握する。 14
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 コスト管理のプロセスの構築: 削減施策の見通し反映 コスト削減計画を立案し、実施月移行の見通しに反映 見通しは直近7日の移動平均に日数を書けて算出 ※後に30日移動平均に変更。税が月初にまとまってかかることが判明。 15
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 コスト管理のプロセスの構築: 継続的な管理体制の構築 部門における技術系幹部である「事業部CTO」が中心となり、コスト管理のための定 例ミーティングを実施。 毎週以下のような内容を報告・議論し、通期でのコスト目標達成を目指した。 当月実績をコストエクスプローラーから直近の実績(30日移動平均)でアップデート 進行中のコスト削減施策の進捗報告と見通しへの反映 年末迄の見通しを当月実績を踏まえてアップデート
年間の予実差異を把握。追加のコスト削減施策の実施要否を判断 16
2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 コスト管理のプロセスの構築: ふりかえり コスト削減の実行 半年で12個、当期内で約600万円のインフラコスト削減 例: マシンタイプの変更、余剰リソースの削除等 コスト構造の可視化の実現 プライベートクラウド(固定費)とパブリッククラウド(変動・固定)のコスト構
造の違いを反映した可視化方法の確立 エンジニアのコスト意識の向上 マルチクラウド環境におけるコストの一元管理の難しさ 請求代行等によるディスカウント、為替等による影響の加味 属人化の解消と運用コストの削減 自動化、AI活用等による運用コストの削減と質の向上 17
目次 1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps 4. まとめ
18
3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps マルチ・ハイブリッドクラウドFinOpsによる継続的な改善 単なるコスト削減活動から、クラウド支出のビジネス価値を最大化することを目的 とした戦略への進化が求められている。 FinOpsは、「Inform(可視化・情報共有)」「Optimize(最適化)」「Operate(運 用・継続的改善)」という3つの主要フェーズを繰り返すことで、クラウド利用の価 値を高め続ける。 1.
Inform(可視化・情報共有):現状を正確に把握し、全員で共有する 2. FinOpsライフサイクル:継続的な改善による価値創出 3. Operate(運用・継続的改善):成果を持続させ、進化し続ける 19
3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps ユニットエコノミクス:データに基づく価値判断の羅針盤 クラウドへの投資がビジネスにどれだけの価値をもたらしているかを具体的に示す 強力なアプローチが「ユニットエコノミクス」である。 クラウド支出を、アクティブユーザー数、トランザクション数、コンバージョン 数といった具体的なビジネス指標と関連付けて分析する。 例えば、「顧客一人当たりのインフラコスト」や「特定機能あたりのトランザク ションコスト」といった指標を算出することで、施策の費用対効果を定量的に評
価し、データに基づいた賢明な投資判断が可能となる。 特にECプラットフォームのようなビジネスにおいては、このユニットエコノミク スの視点が、収益性と成長性のバランスを取る上で不可欠。 20
3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps 文化としてのFinOps:成功を持続させるための組織変革 FinOpsの成功は、優れたツールや洗練されたプロセスを導入するだけでは達成でき まない。最も重要なのは、組織文化そのものを変革することである。 財務部門、技術部門、ビジネス部門といった垣根を越えて、全部門がクラウドコ ストに対する共通認識と当事者意識を持つ。 コスト効率とビジネス価値向上という共通の目標に向かって、それぞれの立場か ら積極的に協力し、継続的に対話する文化を醸成する。
21
3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps 全サービスのコストデータの一元管理とFinOps文化の浸透への挑戦 全コストデータをGoogle Cloudに集約。自動化やAIの活用を視野に。 アプリケーション・ビジネスデータと組み合わせてユニットエコノミクスを前提 とした仕組みへの進化。 22
3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps 全サービスのコストデータの一元管理とFinOps文化の浸透への挑戦 集約したデータによるハイブリッド・マルチクラウドコストダッシュボードの開 発。 プライベートクラウドを含む利用クラウドインフラを網羅 クラウドコンポーネント毎のコスト推移を把握可能に 23
目次 1. クラウド移行とマルチクラウド戦略の現状 2. GMOペパボにおけるクラウドコスト管理の現状 3. 今後の展望: AI時代のマルチクラウドFinOps 24
まとめ おわりに マルチクラウド戦略の成功には、コスト管理が不可欠 可視化と継続的な改善の仕組みが重要 コスト構造の把握と組織への定着にはツール導入以外の方法も有効 GMOペパボでは部門における技術幹部である「事業部CTO」が責任者 マルチクラウドFinOpsの実現に向けて データの一元管理による統一的なインタフェースの提供 組織文化としての定着 ユニットエコノミクスを前提とした攻めのFinOps
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