令和元年度学習院大学文学部教育学科卒業論文
『プログラミング教育における創造的な学びの開発研究』
宮島 衣瑛
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要旨 / Abstract
2020年度より全面実施される次期学習指導要領において、小学校段階からプログラミング教育が導入されることとなった。プログラミング教育では、プログラミングのスキル獲得を目的とせず、思考力の育成を狙っている。また、教科としてのプログラミングは新設されず、既存教科の中で取り組んでいくこととなっている。しかし、多くの実践事例において「プログラミング的思考」という言葉に惑わされるが故に、子どもたちの創造性が軽視されている問題がある。
プログラミング教育における創造性については、Seymour Papertの構築主義、Mitchel Resnick の創造的な学びの視点から説明することができる。構築主義は「作ることで学ぶ」ことを重視した学習理論であり、教示主義による一斉授業モデルとは対局にある。また、レズニックの Creative Learning Spiral モデル、創造的な学びを促進する4つのP(Projects, Passion, Play, Peers)は、小学校における授業を考える上で重要な示唆を与えている。
本論では、学校教育の諸制約として、授業時間の問題、評価の問題、教師のスキル的課題について指摘した上で、創造性を育む「余白」のある授業を作るためのポイントを、①「ティンカリングのための余白をつくること」, ②「Creative Learning Spiral を発展させることができるような授業展開であること」, ③「4つのPを促進する授業環境がソフト面・ハード面ともに整備されること」, ④「他者との協働の場面を作ること」とした。また、特に5年生算数正多角形の作図単元、6年生理科電気の利用単元、及びプログラミング教育導入授業については授業モデルを開発した。
なお、創造的な学びを学校教育として行うためには均一的・画一的な評価主義を始めとする近代的な学校教育からの脱却を図る必要があることも指摘し、根本的な学校教育制度の改革が必要であると主張する。