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出生抑制策と少子化

 出生抑制策と少子化

このプレゼンの目的は以下2つの事項の理解と共有。
1.少子化の原因
2.少子化問題における日本国民の分断

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Masao Mori

July 19, 2024
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  1. 1. 少子化の原因(佐々木 2015, 田間 2006) 1940から50年代:食糧難と住宅不足 → 生殖の統制が進められる 「ベビーブームと引揚者・復員兵の大量帰還、優生思想と人口抑制による経済回復」 → 中絶の合法化(医療界が強く推進)

    「人口抑制が国益とする政府と利益集団として強力な力をもつ医師集団との利害が合致 」 → 政府による家族計画の推進(予算化) 政府の強い後押しにより、全国に家族計画(避妊)を展開 → 母性愛・三歳児神話 少子化した家族を健全な国民と位置付ける政策←戦前の人口増加政策との矛盾 これらの歴史的事実に目をそらす現代の日本政府
  2. 1. 少子化の原因(そのほかの論文) • 少子化の開始時期の認識 ◦ 「少子化」という用語は、1992年(平成4年)国民生活白書にて使用される。 ◦ 出生率1.57ショック(1989)も少子化の始まりと言われている。 ◦ 実は、1969年の厚生省人口問題審議会中間報告で、「出生力が

    ...人口学的基準からみて下がりすぎている 」 と報告→1969年で既に認識していたが、当時の社会問題の関心は「公害」 。 ◦ 1950〜1960年代に計画的にすすめられた出生抑制策が少子化の一因と考えるのが妥当。 • GHQの関与 ◦ 人口抑制策の理論的な裏付けとして、 W.S.Thomson “Danger Spots in World Population”(1929)で「(戦 前)日本の人口増加が世界の食料不足を引き起こし、戦争の原因になる」 ◦ GHQ(Thomson)が、日本の経済復興の必要条件として人口抑制に関する声明を発表( 1949年)。 • 核家族の増加 ◦ 1950年代の住宅難に対し、公営住宅等を多く供給。 ◦ 3LDK=家族4名=政府が推進する家族計画にマッチ。なぜ4 LDK=家族6名にしなかったか? ◦ 「家族のあり方を変える 」政策であったことを認識すべき。 ◦ 核家族は英米アングロサクソン民族の家族形態、日本はドイツと同じ長子直系家族 (Todd)。 • 経済復興と少子化推進 ◦ 経済復興に一時的な効果があったようだが、人口減少に歯止めを効かせる政策はなかった。 ◦ 気づいた時には遅すぎた(第2次ベビーブーム後、 1990年代)。
  3. 2. 少子化問題における日本国民の分断 • 未婚・晩婚の増加が本質的な原因ではない。 ◦ 1950年代の人口抑制策はかなり効果を出し、 1969年には政府はやりすぎと認識。 ◦ 1975年代に合計特殊出生率が 人口置換水準(

    2.07)を割り込む →すでにここで少子化。 ◦ このころは(現在の文脈での)未婚・晩婚の増加などはない(と思われる)。 • 根本原因の究明=個々人の状況と切り離して議論 ◦ 1950〜60年の人口抑制策は、完全に 将来を見誤った人口計画 。 ◦ 個人の「子供がいる、いない」といった議論から出発するのでは、 根本原因は解決せず 。 ◦ 短期的な経済的対処政策 と、長期的な計画として家族のあり方・考え方の再転換 が必要。後者 の方が重要で議論と検討が必要。 • 政府は分断を放置している ◦ かつての日本政策の失策を指摘させないためか。 ◦ 未婚・晩婚・子を産む産まないは個人レベルの話、もともと人間社会は多様性を持つ。 ◦ 未婚晩婚が原因 とすること = 国民一人一人の責任 であると政府による責任転嫁 。 ◦ 未婚晩婚が原因であるとしていれば、経済的な対処政策だけやっていれば良いと思える。 ◦ 統計学的・確率論的な問題 であり、個々人の問題とは切り離すべき。
  4. 2. 少子化問題における日本国民の分断 と、ここまでの理解の上に立って.... • 現状の少子化対策を考える。 ◦ 直接経済的な解決策 ◦ 家族や人生設計のあり方を国民に再検討させる政策 ◦

    あくまで統計的・確率論的な思考を念頭に • たとえば、「子育て世代向けイベント」での考え方 ◦ 産んだ女性、産んでない女性らの対立(しているように見えるが、みなさん政府の失策の被害者)を 超えて議論すべし ◦ 多くの場合、男性がなぜ議論に参加していないのか?
  5. 参考文献 • 佐々木美智子,「戦後の少子化政策と家族の少産化傾向」 ,社会分析 42号, 2015. • 柳沢哲哉, 「日本の人口問題:50年前の人口爆発」, 香川大学生涯学習教育研究センター研

    究報告 第6号, 2001. • 廣嶋清志, 「戦後日本人口政策史から考える」 , 日本健康学会誌, vol.86-no.5, 2020. • 佐々木宏, 「人口の抑制と分散」, 地域学研究, vol.6. 1977. • 内閣府経済社会総合研究所 ,「少子化対策と出生率に関する研究のサーベイ」 , リサーチノー ト, no.66, 2022. • 内閣府, 「少子化社会白書(平成16年度版)」, 内閣府HP. • 田間泰子, 「『近代家族』とボディ・ポリティクス」 , 世界思想社, 2006. • エマニュエル・トッド他, 「トッド人類史入門」, 文春新書, 2023. • エマニュエル・トッド, 「帝国以後」, 藤原書店, 2003.