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Kent Beckの思想と学びの道筋 / 20250517 Ryutaro Yoshiba & Hiromitsu Akiba

2025/5/17 SHIFT Agile FES
https://contents.shiftinc.jp/shift-agile-fes/

株式会社アトラクタ
取締役CTO/アジャイルコーチ
吉羽 龍太郎

株式会社SHIFT
ソリューション事業部 アジャイル推進部 部長
秋葉 啓充

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SHIFT EVOLVE

May 21, 2025
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  1. Kent Beckの思想と学びの道筋 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 秋葉

    啓充 株式会社SHIFT アジャイル推進部 部長 吉羽 龍太郎 株式会社アトラクタ 取締役CTO/アジャイルコーチ
  2. 吉羽 龍太郎 アジャイル開発、DevOps、クラウドコンピューティング、組織開発を中心 としたコンサルティングやトレーニングが専門。野村総合研究所、Amazon Web Servicesなどを経て現職。Scrum Alliance 認定スクラムトレーナー (CST) /

    認定チームコーチ(CTC)Microsoft MVP for Azure。著書に 『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』(翔泳社)など、訳書に『ダイナ ミックリチーミング』『Tidy First』(オライリー・ジャパン)、『チーム トポロジー』(日本能率協会マネジメントセンター)など多数。 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. Ryutaro YOSHIBA | Agile Coach / Certified Scrum Trainer (CST)
  3. 自己紹介 秋葉 啓充 (あきば ひろみつ) #心理的安全性 #GitHub Trends#クラウド海峡横断部 #RPA #ローコード

    #Cursor #自動化 #CI/CD #哲学 #ポストモダン #2男児の父 #人間は9タイプ #フットサル #IoT アジャイル推進部 部長 入社:2020年4月 ▪経歴▪ 大阪府出身 日本IBMと日本製鉄の合弁会社(現NSSOL)に入社し、 エンジニアとしてキャリアスタート。システム企画コンサルや全社 生産計画システム開発のPMを歴任。 DX・アジャイル開発を経験すべく、友人のベンチャー企業で2年ほ ど勤めた後、2020年、SHIFTに入社。 コンサル、スクラムマスター、インフラアーキテクト、自動化PM、 エンジニアリングマネージャーを経験し、2025年3月から現職。 【登壇歴】 2025年 4月 DevOpsDays Tokyo CI/CD事例紹介 登壇 3月 社内勉強会 GitHub Trendsを眺める会スピンオフ 登壇 2024年 11月 openSUSE.Asia Summit 2024 『OSS Study Sessions and AI Document reverse 』 9月 SHIFT EVOLVE 『AI無しでは語れない、テストツール最前線 (AI Test Lab vol.2)』 3月 SHIFT テクシェア 『マルチエージェントAIによる開発デモ』 2023年 8月 SHIFT EVOLVE 『ChatGPT と ふるまい駆動』 7月 SHIFT 89祭 『テスト自動化の世界的トレンド ~Tricentis社と共に~』 7月 SHIFT EVOLVE 『社員クラウド資格取得推進のために部活作ってみたので話しますの会』 4月 SHIFT EVOLVE 『リモートワークにおけるファシリテーションの方法論』と 『問いかけの作法』 2022年 6月 JaSST'22 Kansai 『「やめられないExcel方眼紙 Excelを活用した自動テスト」』
  4. Kent Beck 生誕~大学時代 • 1961年3月31日 サンノゼ生まれ。父は電気技術者 • 1979年〜1987年 オレゴン大学入学 •

    大学入学時点で6年ほどプログラミング経験があった • 初回の講義で事前に問題を細かく定義しそれをコードに分解するという「構造化 トップダウンプログラミング」の話を聞いて、「みんなのやり方を変えてやろ う」と決意 • 学生寮の建築科の学生に『時を超えた建設への道』(クリストファー・アレグザン ダー著)を勧められ、生協で立ち読みし読み切る(パターンとの最初の出会い) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc.
  5. Smalltalkとパターン • 1984年 Tektronixに入社しSmalltalkに傾倒 • ウォード・カニンガムと出会う • 1987年 • 論文「Using

    Pattern Languages for Object-Oriented Programs」(オブジェク ト指向プログラムのためのパターンランゲージの使用) • Appleに入社 • 1994年 Sunit(Smalltalk用のユニットテストフレームワーク)を開発 • 1995年 ウォード・カニンガムがWikiWikiWebを作る(Wikiの起源) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc.
  6. C3プロジェクトとXPの誕生 • 1996年 C3プロジェクト(Chrysler Comprehensive Compensation)に参加 • 計画駆動で既に1.5年遅延しており、コードを捨ててやり直しを選択 • 3週間イテレーション、ストーリー、テスト、ペアプログラミング……

    • 説明の時にキャッチーで他の人が使わないであろう名前としてXPを選択 • 1997年 JUnitを開発 • 1999年10月 『Extreme Programming Explained』 • 「プログラマー中心で他の関係者に対して敬意を欠くトーン」と回顧 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc.
  7. アジャイルマニフェストとXP第2版 • 2001年 アジャイルマニフェストの起草に参加 • 実は体調不良で関与は限定的だった • 後に「リーンスタートアップのように顧客とのサイクル全体、組織全体の学習に スコープを広げるべきだった」と回顧 •

    2002年『Test-Driven Development: By Example』 • 2004年『Extreme Programming Explained 第2版』 • チームごとに多様な価値があり、別のプラクティスが形成される可能性を認めた • 先鋭的な思想がやわらいだ © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc.
  8. 2006年 Kent Beck on Agile Adoption & Values KB:XPに新たな価値を見出したわけではない。しかし、自分の仕事における意思決定 では、他のいくつかの原則に依拠してきた。

    第二版には記載されていない原則、特に説明責任と透明性について言及するようになっ た。また、「遅く仕様化し、早くテストする」というテスト駆動開発において重要な二 つの原則についても話している。最後に、仕掛り中の在庫を減らすという原則が非常に 有用であると感じている。 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. https://www.infoq.com/articles/kent-beck-interview-2006/
  9. 2010年 To Agility, And Beyond… • スタートアップについて詳しく言及 • 11のスタートアップに関与し、そのほとんどが経済的には成功しなかった •

    ループは本来「Learn - Measure - Build」であるべきだと提唱 • 学びを最優先する • PushモデルではなくPullモデル • フローの原則 • 「スタートアップのフェーズによって、取るべきエンジニアリングアプローチは変わ る」との主張 (後の3Xにつながる) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. https://www.youtube.com/watch?v=d4qldY0g_dI
  10. 2011年 Facebookに入社 (~2018年) • 入社後Facebook Boot Campで同社の開発方法を学ぶ • 当初はC++プログラマーだったが、その後エンジニアのコーチングプログラム 「Good

    to Great」を開始 • スタンドアップや見積り、自動テストなどがほとんどない一方で会社としては成長を 続けていた • スケールの複雑性、意思決定の可逆性の重要性を学ぶ • いままでの自分の信条の多くを見直すことになる • ログの重要性、テストファースト、自動テストの価値…… © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc.
  11. 3Xモデル (Explore、Expand、Extract) フェーズごとに時間の性質、リスク・リターンプロファイル、重視する価値観などが異 なる • Explore (探索): さまざまなことを試し、実験のコストを減らし、学習を迅速に応用 するフェーズ •

    Expand (拡大): 「大当たり」を見つけ、急成長するフェーズ。予測不可能なボトル ネックが次々と発生し、時間は圧縮され、瞬時の判断が求められる • Extract (抽出): 安定したプロダクトから価値を引き出すフェーズ。タスクの時間見 積もりが可能で、時間は直線的に感じられる。大きな損失を避けることが重要になる © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc.
  12. 2022年 Help Geeks Feel Safe In The World • 「ギークが世界で安全に感じることを助ける」

    • すべての活動はこの使命につながる • パターン:問題と解決の共通パターンを明確化することで、固有の部分に集中で きるようにする • xUnit:不安を再現性あるテストに変換する • TDD:大きな問題を小さなテスト・設計・実装のループに分解する • XP:安全な社会的相互作用と問題解決の構造を提供する • 3X:状況に応じた適切な厳密さと創造性を使い分ける © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. https://medium.com/@kentbeck_7670/help-geeks-feel-safe-in-the-world-my-personal-mission-a3968a94dff5
  13. 2023年~ ソフトウェア設計は人間関係のエクササイズだ • 『Tidy First?』→ 『Tidy Together』 → 『???』 •

    「本書はギークが世界で安全に感じることを助けるという私の使命における次の 一歩だ」「本書はソフトウェア設計に焦点を当てた本のシリーズ最初の1冊だ」 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 誰が? いつ? 何を? どのように? なぜ? あなた 数分から数時間 整頓 構造と振る舞いを 分ける 結合と凝集 あなたと同僚のプ ログラマー 数日から数週間 リファクタリング 週次計画 べき乗則 すべてのステーク ホルダー 数か月から数年 アーキテクチャー の進化 ダイナミック・バ ランス ?
  14. クリストファー・アレグザンダー(Christopher Alexander) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. クリストファー・アレグザンダー

    (Christopher Alexander、1936年 10月4日 - 2022年3月17日)は、 ウィーン出身の都市計画家・建築家。 アレグザンダーは建築と都市計画の思想家で『パタン・ラン ゲージ』などの著作を通じて生命ある空間の構築を提唱。彼 の「パターン」概念はソフトウェア開発にも応用され、デザ インパターンやアジャイル開発に大きな影響を与えた。 出典:Web) https://ja.wikipedia.org/wiki/クリストファー・アレグザンダー 主な著作 • 『形の合成に関するノート』(1964) • 「都市はツリーではない」(1965) • 『パタン・ランゲージ』(1977) • 『時を超えた建設の道』(1979) • 『家づくりのプロセス』(1984) • 『都市デザインの新理論』(1984) 他多数
  15. 「都市はツリーではない」 (1965) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 「都市はツリーではない」は、近代都市計画者のに対する都市計

    画への異議を数学的に捉えた論文。 アレグザンダーは、都市計画者のコルビジェや丹下健三が描いた 都市像に感じた違和感を言葉にした。 住む人の動きや関係はもっと入り組んでいて単純に分けられない。 ツリーのように枝分かれするだけでは、都市に必要な重なりや にじみが失われる。街は本来、もっと曖昧で複雑で人の営みが交 差する場としてつくられていくものだ、と。 出典:Web) https://www.patternlanguage.com/archive/cityisnotatree.html
  16. 「都市はツリーではない」 (1965) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 人工都市・ツリー

    自然都市・セミラティス 123456 12 345 3456 123456 12345 3456 123 234 345 34 45 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6
  17. 「都市はツリーではない」 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. • 人工都市

    • 効率的、機能分離 • 無機質 • 軍隊組織、官僚組織 • 自然都市 • 非効率的、機能重複 • 有機的 • ?????? ツリー セミ・ラティス
  18. 『チームトポロジー』組織のコミュニケーション構造 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』(著:マシュー・スケルトン、マニュエ

    ル・パイス/出版:日本能率協会マネジメントセンター)p.32 掲載図をもとにSHIFT 秋葉作成 ほとんどの組織における 現実のコミュニケーション構造が、 組織図の表すものと どれだけかけ離れているか
  19. 私の一冊(秋葉の場合) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. ミルグラムの「服従の心理」は、人が強制されていなくても 権威に従いやすいことを示した実験。

    参加者は「生徒」に電気ショックを与えるよう指示され 「危険」表示のスイッチも多くの人が押した。 良心より命令を優先する人が非常に多いことがわかった。 出典:書籍)『服従の心理』 河出文庫 スタンレー・ミルグラム著 山形 浩生訳 スタンレー・ミルグラム 『服従の心理』
  20. 知識体系と知識体系との組み合わせで、新たな知識や価値を生む ことができる © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 『「知る」を最大化する本の使い方』

    (株式会社翔泳社)p.34 掲載図をもとにSHIFT 秋葉作成 知 識 知 識 知 識 知 識 体 系 A 繋げる 編める 知 識 知 識 知 識 知 識 体 系 B 繋げる
  21. © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. アジャイル関連の主要人物 TPS・リーン生産 •

    大野耐一(トヨタ生産方式) • 新郷重雄(ポカヨケ) • J.ウォマック & D.ジョーンズ • M.ポッペンディーク (リーンソフトウェア) • E.リース(リーンスタートアップ) アジャイル手法 • K.ベック(XP) • J.サザーランド(スクラム) • K.シューバー(スクラム) • A.コックバーン(クリスタル) • D.アンダーソン(カンバン) • D.ピンク(自律的モチベーション) • J.アベロ & J.サターフィールド (ビジネスアジリティ) 主要思想家・理論 経営・組織 • F.テイラー(科学的管理法) • M.ウェーバー(官僚制) • E.メイヨー(人間関係論) • P.センゲ(学習する組織) • K.ワイク(センスメーキング) • 野中郁次郎(知識創造) • H.ミンツバーグ(創発的戦略) • F.ラルー(ティール組織) 哲学・社会学 • J.デューイ(プラグマティズム) • P.バーガー & T.ルックマン • M.フーコー(知識と権力) • K.ガーゲン(社会構成主義) • E.ウェンガー(実践コミュニティ) • A.エドモンドソン(心理的安全性) • D.ピンク(モチベーション理論) • T.ブラウン(デザイン思考) ※作図SHIFT 林 栄一
  22. 『パタン・ランゲージ』(1977) © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 『パタン・ランゲージ』(1977) クリストファー・アレグザンダー

    (著) 日本語訳は鹿島出版会より 序文より 本書を用いれば、 家族とともに自分の家を設計したり、隣人ととも に自分たちの町や近隣を 改良することができる。 さらにはオフィス、作業場、公共建物などの設計 や、実際に建物を施工する手引きとしても役立つ。 出典:Web) https://kajima-publishing.co.jp/books/community-development/qajola0arj/
  23. 『デザインパターン』 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. 『デザイン・パターン』(1994) エリック・ガンマ他4名

    日本語訳はSBクリエイティブより デザインパターンとは オブジェクト指向でソフトウエア設計を行う際に 利用する虎の巻。 再利用性・保守性・柔軟性を高めるための知見が まとめられており、通称GoF本(=Gang of Four)と呼ばれ、一昔有名でした。 出典:書籍)
  24. • 〜The value of 90% of my skills had dropped

    to $0. At first, this realization was disheartening — I‘d built my career on skills that were being made obsolete by AI. But upon reflection, I began to see this shift in value as an opportunity to recalibrate my skills and leverage the remaining 10% in a new way.〜 • 私のスキルの90%の価値は0ドルにまで下がってしまったのです。 最初は、この認識に落胆し ました。AIによって時代遅れになりつつあるスキルを基盤にキャリアを築いてきたのです。し かし、よくよく考えてみると、この価値観の変化は、自分のスキルを再調整し、残りの10%を 新たな方法で活用する機会だと捉えるようになりました。 © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc. Kent BeckとChatGPT 出典:Web) https://tidyfirst.substack.com/p/90-of-my-skills-are-now-worth-0
  25. 事業成長の裏側:エンジニア組織と開発生 産性の進化 DAY1 7.3(木) 10:45-11:25 池ノ上 倫士 株式会社SHIFT VPoE fukabori.fm出張版:

    売上高617億円と高稼働率を陰で支えた 社内ツール開発のあれこれ話 DAY2 7.4(金) 11:25-12:05 森川 知雄 株式会社SHIFT デリバリ改革部サービスプラットフォームグループ グループ長 岩瀬 義昌 fukabori.fm ホスト © 2025 Ryutaro YOSHIBA. , SHIFT Inc.