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3世紀の危機
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tomohata
May 10, 2008
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3世紀の危機
ローマクラブでの発表資料(2008/5/10)
※古代ローマ史
tomohata
May 10, 2008
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Transcript
3世紀の危機 貨幣経済の崩壊
軍事的混乱としての3世紀 軍人皇帝の時代 ▪ 2世紀までの皇帝達との違い :身分 ▪ アウグストゥス帝以来、3世紀初頭に到るまでの皇帝達は、 如何なる形であれ、元老院議員身分出身である。 ▪ 一方、軍人皇帝時代とは、軍隊の中から、それもしばしば階
級の低い出身の者が皇帝を自称する。 →同時期に複数の皇帝が乱立する状況が続く。
財政圧迫と市民の困窮化 ▪ 金貨及び銀貨の価値が下落し続け、貨幣経済が破綻。 →貨幣の退蔵が続き、物々交換経済へと逆戻りし始める。 ▪ annona(食糧供出)及びangareia(強制労働)を市民に強 いる。
経済的な危機 ▪ 軍事的な混乱ばかりが目立つ「3世紀の危機」だが、一方で、 財政面も非常に逼迫していた。 ▪ 3世紀における経済的な破綻を説明するのに、有効な指標 として、「貨幣」に含まれる含有率の変化がある。 ▪ 貨幣における含有率の変化を俯瞰してゆくことで、古代ロー マ帝国が貨幣を通じた市場経済を形成していたことも十分
に推測し得る。
ローマ帝国における貨幣の役割 市場経済における貨幣の重要性 ▪ 巨大な常備軍や複雑な行政機構を維持する為の国家によ る支出の必要性 ▪ 駐屯軍や行政官、軍・民間の建築工事に貨幣が必要 ▪ 税収面での利益を上げる為 ▪
課税を通じた貨幣使用と史上の利用に刺激を与える。 →貨幣での納税が求められた為、余剰生産物を現金化する 必要性が生じる。 一方で、市場に出回った商品を購入する為の金を工面する ことができると言う考えが芽生える。
アウグストゥス帝代に確立された通貨制度 通貨の種類 ▪ 金貨(アウレウス) ;金含有率=100% ▪ 銀貨(デナリウス) ;銀含有率=100% ▪ 銅貨(セステルティウス)
貨幣の交換比率 ▪ 1アウレウス : 25デナリウス : 100セステルティウス
銀含有率の変遷 ネロ帝 ▪ 金貨と銀貨の各々の含有比率を1割ずつ引き下げる。 ▪ 金貨; 金含有比率 90% ▪ 銀貨;
銀含有比率 90% →ただし、金貨:銀貨の交換比率は1:25のまま。 ▪ 財政的な打撃はなく、寧ろ、金貨を通じた豪奢品の取引を行う上層民に 経済的な打撃を与える一方、銀貨を中下層市民の生活レベルの向上に 役立つ。 ▪ ネロ帝代には財政破綻の兆しが見受けられないと言う説が一般的であ る。
3世紀における銀含有率の急激な低下
3世紀における銀含有率の急激な低下 ▪ 銀含有率の観点から見れば、アウグストゥス帝代から紀元 後3世紀初頭に到るまでは比較的安定した財政状態を予測 させる。 ▪ 銀貨の急激な価値の下落、すなわち銀含有率の急激な低 下は、カラカラ帝代(211年~)に始まる。
銀含有率の急激な低下の要因 3世紀の特徴 ▪ 「外」の敵 :異民族の相次ぐ侵入と軍事費の増大 ▪ 「内」なる争い :皇帝位を巡る争いの激化
銀含有率の急激な低下の要因 カラカラ帝による「アントニニアヌス貨」の発行の影響 ▪ アントニニアヌス貨(銀貨) ▪ 理論上は当時発行されていたデナリウスの2倍の価値 →実際の銀含有率は、デナリウスの1.5倍程度。 →市場での交換価値が低く、退蔵されるケースが増える。 ▪ アントニニアヌス貨の発行により、銀貨との関係において価
値が決定されていた「銅貨」も価値を下げる。 →急激な物価の高騰 = 大インフレーションの発生
3世紀に生じたインフレの貨幣経済への打撃 ▪ 従来の銅貨(セステルティウス)の生産廃止 ▪ 銅貨に変わり、ラディアトゥスと呼ばれる質の悪い「銀貨」の 発行 ▪ 260年、「悪貨が良貨を駆逐する」勢いが止まらず、デナリ ウスの品位低下が底を打つ。 ▪
粗悪な銀貨も生産を廃止し、代わりに、「表面に銀を塗布し た銅貨」が発行される。
補足:4世紀における銀含有量
ローマ帝国と貨幣経済 ▪ ローマ帝国における経済状態の変遷を見てゆく場合、貨 幣流通において主役を果たす銀貨(デナリウス)における 銀含有比率は一つの指標となり得る。 ▪ 銀含有比率の変遷過程は、 1.アウグストゥス帝~3世紀初頭までは安定している。 2.3世紀前半以降(カラカラ帝~)、急激な下落傾向を見せる。 3.260年、実質価値としての銀貨の品位低下が底を打つ。
→少なくとも、3世紀において貨幣経済が完全なる破綻を来た していたことは十分に推測され得る。
貨幣経済の破綻と要因 3世紀の危機 ▪ 2世紀後半以降、顕著になりつつあった異民族の侵入への防衛の為の 軍事費の増大 ▪ 各地域で軍人皇帝の相次ぐ登場と内紛。 ▪ 軍事費を捻出させる為に、3世紀以降の皇帝達による恣意的な「安価な 貨幣」の発行
▪ インフレが生じ、その対処として更なる「安価な貨幣」の発行 →貨幣経済の完全なる破綻へと到る。