Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

Progress_Report_JPN.pdf

Bioworks
March 27, 2025

 Progress_Report_JPN.pdf

Bioworks

March 27, 2025
Tweet

More Decks by Bioworks

Other Decks in Business

Transcript

  1. Progress Report 2025 02 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    Message from CEO 代表取締役社長 CEO 坂本孝治 Bioworks は、Sustainability Vision「つくる喜びと、着る豊かさが続く、新たな生態系 ( エコシステム )」 を掲げ、植物由来の次世代合成繊維 PlaX の開発、普及に取り組んでい ます。繊維産業で最も生産、利用されている従来の石油由来素材に代わる選択肢を提供 し、ファッション業界をはじめとするさまざまな分野で環境負荷低減に貢献することで、 繊維産業が環境問題を解決しながら持続していくことが私たちの目標です。 ���� 年は、 Bioworks にとって飛躍の年となりました。日本国内を中心に PlaX の採用企 業数が着実に増加し、 グローバルでも多くのブランド、 繊維企業との取り組みがスタート しました。 今後の需要増加に備えて、 国内外のパートナーとの生産体制の強化を進め、 戦 略的な投資とパートナーシップにより、 各種課題を解決しながらグローバル展開に向け た準備が整いました。 また PlaXの素材が持つ加水分解という特性を活かして、 製品の使用後も再び次の資源と して活用することができる「循環性」 の設計として、リサイクルに関する研究開発や実証 実験にも取り組み始めています。 こうした取り組みを支えてくださるお客様、 パートナー企業、 投資家の皆様、そして日々 挑戦を続ける社員に心から感謝申し上げます。PlaX に関わっていただく全てのステーク ホルダーのご支援とご期待が、 私たちのイノベーションと成長の原動力です。 今後も、技術開発と事業拡大を加速させ、 グローバルで PlaX を展開していくことに努め てまいります。Sustainability Vision の実現に向け、Bioworks は挑戦を続けます。 引き続き、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
  2. Progress Report 2025 04 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    産業革命以降 の工業化 サプライチェーン のグローバル化 流行・多様な 価値感 資本主義 ʷ リニアエコノミー 全世界の CO� 排出量 (����年度) 内、ファッション 産業由来とする CO� 排出量の割合 ���億トン �-��% 全世界で焼却・埋立処分される衣服の量 ���� 年 �,���万トン/ 年 ���� 年予測 �億���万トン/ 年 製造時の環境負荷 大量廃棄 洋服�着あたり��.�kg のCO� を排出 �,���ℓの水を使用 製造された衣服の��%が廃棄 ※� ※� ※� ファッション産業は、産業革命以降成長を続けてきましたが、その一方で、トレードオフとして 生じたさまざまな環境課題が、今日明らかになっています。私たち Bioworks は、 「あたらしい 豊かさの種を蒔く」をミッションに掲げ、これまで当たり前とされてきた社会構造を問い直し、 ファッション産業を持続可能な新たな仕組みへとアップデートしていくことを目指しています。 社会背景 今、起きている課題 ※�「Global carbon budget ����」/ Global carbon project ※� 「持続可能なファッションのための国際アライアンスとは?」/ 国際連合広報センター ※� 「The state of fashion ����」/Mckinsey&Company 成長主義 / スピード主義 / 売り切りモデル 持 続 不 可 能 ファッション産業における環境課題 サプライチェーンの不透明性 Process Input Output
  3. Progress Report 2025 05 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    課題解決に向け、求められるイノベーション ���� ���� 繊維素材からの GHG 排出量 是正なく、石油由来の既存素材を使用し続けた場合 積極的に、GHG 排出を減らす代替素材を用いた場合 � 億 t tones CO e イノベーションギャップ GHG 排出量 ��% 削減への道筋 �.�-�.� 億 t(BAU※) ▲ �.� 億 t ▲ �.�-�.� 億 t �.�-�.� 億 t ���� 年までに気温上昇を �.� 度に抑えるべく、GHG 排出量を ��% 削減するというパリ協定で 示された目標の達成に向けて、 ファッション産業においては、 作りすぎの是正と、� 着あたりの 環境負荷を下げていくための素材の代替や循環設計などのイノベーションが求められています。 新たな資源や製品の生産を伴う 成長を減速させる 積極的に素材を置き換えていく 求められる循環型・再生型の イノベーション ※BAU シナリオでは、���� 年から ���� 年まで年率 �% の成長を想定している。 ��% 図は Textile Exchange が発行する「Preferred Fiber & Materials Market Report ����」から引用し、Bioworks が作成。���� 年までのアパレルとフットウェアの 原材料で必要とされる GHG 影響削減量の道筋をモデル化したものです。
  4. Progress Report 2025 06 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    石油由来原料に依存しない原料を用いて作られた、機能性と創造性に溢れる衣服が、 つくる人と着る人の豊かさを生み出し、そして役目を終えた衣服は、また次の循環 へとつながる。この新たな生態系を、世界中とパートナーと共に作りあげることが、 Bioworks の目指す姿です。 新たな生態系(エコシステム)の全体像 つくる喜びと、 着る豊かさの続く 新たな生態系 Sustainability Vision 産業革命以降、いきすぎた資本主義経済のもとで大量に生産された洋服は、環境 に大きな負荷をかけて作られながらも、その半分以上が廃棄されています。この ような状況の中で、これまでと同じようなものづくりは、もはや続けられなくな っています。 しかし洋服そのものは、つくる人の持つクリエイティビティを刺激し、着る人の 自己表現を豊かにしてくれる素晴らしいもの。だからこそ、アパレル産業のサス テナビリティ変革においても、洋服それ自体が持つ豊かさが失われるべきではな いと考えています。 Bioworks が目指すのは、 「つくる喜びと、着る豊かさが続く、新たな生態系(エコシステム) 」 ��� 年後も、限りある自然資源の中で、人の創造性を発揮しながら豊かな暮らし と経済を維持できる社会を目指して。植物由来原料で作られた PlaX™は、石油由 来の合成繊維に替わる新たな選択肢となる繊維です。私たちは PlaX™を通じて、 アパレル産業の、スムーズなサステナビリティの変革に貢献していきます。 エコシステム 製造 利用 リサイクル 原料生産 製品企画 つくる喜びと 着る豊かさの続く 新たな生態系
  5. Progress Report 2025 07 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    Sustainability Vision 策定の舞台裏 執行役員 CSuO 田原純香 なぜ今、Sustainability Vision が必要なのか Bioworks は現取締役会長である今井の「環境を良くすること をビジネスにしたい」という強い思いから設立されました。高 度経済成長期以降、プラスチックはその便利さから需要が増え 続けていますが、比例するように環境負荷も増大し続けていま す。そんな現状に対する「これで良いのか」という問い。それ こそが私たち Bioworks の原点です。 ���� 年の創業当初、サステナビリティはまだ目新しい概念で、 どこか CSR 活動の延長線上のような捉え方をされていたよう に思いますが、奇しくも同じ年に国連サミットで採択された SDGs をきっかけに時代の流れは急速に変化。今では多くの企 業が持続可能な経営へと舵を切るようになりました。しかし、 「サステナビリティ(持続可能性) 」という言葉はとても広い解 釈ができるので「なんとなく地球に良い活動」というやや曖昧 な捉え方をされる場面もちらほら見受けられます。そんな中、 私たちが「事業を通じて」成し遂げたいサステナブルな世界と はどういう世界なのか、今一度企業としての立場を明確にすべ きだと考えました。 Bioworks が事業を行うファッション産業。それを取り巻く広 域かつ多様な社会課題や環境課題は、その複雑な産業構造に大 きく起因しています。ひとつの課題を解決しようとしても、予 期しないところで他の課題へネガティブな影響を与えてしまう 恐れもあって、単眼的に課題を解決することは難しい。さらに、 「ファッション」 は人の豊かさを形作ってきた長い歴史、文化を 有しています。それゆえに、産業構造のみに着目した結果、創 造性や自己表現の実現といったカルチャーの醸成につながるよ うな視点が抜け落ちるようなことがあってはなりません。この ような背景を踏まえると、ファッション産業をより持続可能な 産業へと進化させていくためには、複雑な産業を支える広義の ステークホルダーの理解と共感・そして協力が必要不可欠であ ること。そして私たちにとって、それらを促す求心力になるも のとして「我々はどんな世界を目指しているのか?」を伝える ため明確に言語化されたビジョンが必要である、と考えたので す。これが、私が CSuO 就任後の最初のアクションとして掲げ た「Sustainability Vision プロジェクト」の背景です。 どのように進めていったのか プロジェクトをキックオフするに際し、まずは経営陣およびマ ωージャーを集めて、複数回にわたって議論を重ねました。さ まざまなファッション関連企業の取り組みを事例に挙げ「これ ってステナブルでしょうか?」と問いかけをすることで、一様 にサステナブル定義することの難しさをまずは理解し、個々の 視点や考え方の違いについてもじっくり時間をかけながら互い に共有し合いました。 その後、そもそもなぜ今ここまで社会課題や環境課題が拡大し ているのか。この問いに対し、繊維産業の歴史を紐解くことで、 第一次・第二次産業革命を背景に、資本主義経済下、どのよう に大量生産や大量廃棄が行われ、それがどのように今日の課題 へと繋がっていったのか、その背景の理解を深めていきました。 そうして課題の原因と現状の関係性が明らかにした結果、浮か び上がってきたのがファッション産業における将来像のベスト シナリオ、ワーストシナリオでした。では、それらに行き着く まで分岐的にはどのようなハードルがあるのか、私たちの強み を使ってそれらの克服は可能なのか、さらに、さまざまな議論 を重ねながら、私たちの目指す世界を、言葉ひとつひとつを丁 寧に紡ぎながら草案として言語化。最終的には全社員への共有 と意見交換を経てSustainability Vision Statementとして策定 しました。 Bioworks には、創業以来ポリ乳酸(PLA) の研究を続けてきた 研究開発者、もともとアパレル業界で働いていたものの、産業 が与える環境負荷に直面し「このままで良いのか?」という疑 問を持って入社した者、 あるいは全く異なる業界で働いていた ものの、 PlaXの将来性や可能性に魅力を感じて転職をしてきた 者など、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が集まってい ます。それぞれの持つ視点や考えが多様であるがゆえに、今回 のビジョン策定のディスカッションにおいても「サステナビリ ティとは何か」を様々な視点からフラットに議論することがで きたのは、とても良かったと思います。これからは、このビジ ョンを実現させていくフェーズとなります。私たち一社だけで は成し得ないこの壮大なビジョンを、ステークホルダーの皆さ まとの共創によって実現させていきたいと考えています。
  6. Progress Report 2025 08 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    SPECIAL 対談 | 長谷享治 × 坂本孝治 長谷虎紡績株式会社 長谷 享治 代表取締役社長 麗澤大学を卒業後、���� 年に新卒で長谷虎紡績に入社。大阪支社やカーペット事業、中国子会社の社長、 「光電子」 の運営会社ファーベスト社長などを経て、 ��年��月に長谷虎紡績グループの�代目の社長に就任。 「つくる喜び」 を 原動力に
  7. Progress Report 2025 09 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    人と人とのつながりによって生まれた出会い 坂本)私と長谷社長が出会って�年になりますが、 それ以前から Bioworks のことをご存知だったと伺いました。 長谷)はい、 ���� 年ですね。PLAを繊維化するユニークな技術 があると、人づてにご紹介されたのが最初のきっかけでした。 今振り返ると、開発パートナーとしてご一緒する以前から、私 たちの間にはさまざまな人のつながりがありましたね。 坂本)本当にそうですね。私たちの出会いは、人と人との不思 議なつながりの上に生まれたように感じています。ところで、 最初に Bioworks の話を聞いたとき、どのような印象を持たれ ましたか? 長谷)実は、PLA 素材は �� 数年前にカーペット事業で扱った 経験がありました。ただ、当時は物性に課題があり、面白い素 材ではあるものの難しさも感じていました。 ですが、 Bioworks との取り組みを通じて、そのポテンシャルを知ることができま したので、期待は高まっています。国内の紡績産業が厳しい環 境に置かれる中、 「素材で世界を変える」 を掲げる私たち長谷虎 紡績は、 PlaX をはじめとする新しい素材に積極的にチャレンジ していかなければならないというある種、危機感もあるのです。 モノに愛着を持つことが持続可能への第一歩 坂本)繊維業界におけるサステナビリティについて、どのよう にお考えですか? 長谷)ファストファッションの台頭を契機に廃棄問題が深刻化 していますが、課題解決のためにファッションを単純に無くせ ばいい、ということでもありません。自分の好きなアイテムを 着ることで、とても生活が豊かになりますよね。それは絶対失 われてはいけない要素だと思います。だからこそ、今のモノづ くりを改め、廃棄による環境負荷を減らす新しい素材の開発に 取り組むことが不可欠です。また、持続可能性を実現するには、 単にモノを消費するのではなく、それらを大切にし、愛着を持 つことが重要です。そのためには、もっと消費者に一つのモノ が作られるまでの過程や、作り手の想いを伝えていくことで、 一人一人がモノに愛着を持てるようなコミュニケーションの仕 組みが、とても大切だと考えています。 坂本)なるほど。消費者に伝えていくことは、私たちのような 川上に位置するプレーヤーにとっては簡単ではないと考えてい ますが、その点においてはどのような工夫が必要だと思われま すか? 長谷)やはり、現場を見てもらうことが一番だと考えています。 実際に私たちは、地域の学生を工場見学に招き、モノづくりの 現場を直接見てもらう機会を設けています。これまで、私たち にとっては当たり前だと思っていた紡績のプロセスや知識が、 知らない人にとって大きな感動にもなりうることをこの取り組 みを通じ、実感しました。モノづくりの現場を持っていること は私たちの強みの一つでもありますので、こうした機会を提供 することは、消費者のモノへの理解を深めるうえで重要だと考 えています。 サステナビリティは 「信頼」 というトレーサビリティがあってこそ 坂本)ファッション産業ではトレーサビリティの可視化が進ん でいます。私たちも今年から PlaX の製造プロセスを展示会な どを通じて、消費者に開示していく取り組みを始めています。 このあたりはどのようにお考えですか? 長谷)サステナブルな素材であることを証明するには、 トレーサ ビリティの確立が不可欠です。 ただ、 ファッション産業はサプラ イチェーンが長く複雑なため、その確立は一筋縄でいきません。 坂本)Bioworks が直接関わる範囲のトレーサビリティは、当 然責任をもって担保しますが、その先、例えば長谷虎紡績さん に素材を渡す場合は、御社がその先をしっかり担保をしていく。 こうしたパートナー同士の信頼関係に基づくつながりを土台に、 トレーサビリティを確保することが重要ですよね。 長谷)おっしゃる通りです。信頼という言葉がありましたが、 私たちは「顔が見えるビジネス」をとても大切にしています。 例えば、��年にわたって決まった契約農場から綿花を仕入れて いるのですが、効率だけを求めれば、商社を通じて最安値の綿 花を買う選択肢もあります。でも、不作のシーズンでも、農家 との信頼関係があるからこそ、必要な品質の綿花を確保するこ とができます。このようなお互い顔が見える関係性が、トレー サビリティの実現において重要だと考えています。
  8. Progress Report 2025 10 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    「つくる喜び」を原動力に 坂本)Bioworks のビジョンの中に「つくる喜び」という言葉 があります。これは作り手が創造することの喜びや、信頼関係 をベースに付加価値を生み出すようなプロセスをイメージして います。御社でも重要な要素だと思うのですが、社員の皆さん にこの価値をどのように伝えていますか? 長谷)新入社員研修の一環として、私たちが作った糸を使用し た製品が販売されている店舗を訪問しています。紡績現場の社 員は最終製品を見る機会が少なく、自分たちの素材がどのよう に販売され、どのような方に購入されているのか、イメージし づらい状況がありました。ですが、店頭でお客様が笑顔で購入 する姿を見ると、 「どうしたらもっと良い糸が作れるか」 という 改善の視点が生まれるんですよね。このような「つくる喜び」 を実感できる経験の積み重ねが、企業の成長につながると考え ています。 坂本)素晴らしい取り組みですね。私たちが目指すエコシステ ムの形成に向け、大きなヒントをいただいたように思います。 PlaX には現状ではまだ乗り越えるべき課題もあるのですが、 視 点を変えると、 だからこそ作り手のクリエイティビリティを刺 激できるんじゃないか、という期待もあります。 長谷)私たちはとてもポジティブに考えています。現在、知識 製造業へのシフトに取り組んでおり、難しい素材を製品化する ためのチャレンジで培ったノウハウや知識が、今後のモノづく りにおける大きな優位性になると考えています。将来的には、 世界に向けてこの知識を輸出し、さらに新しい技術につなげて いけるのではないかと思っています。 坂本 )Bioworks がグローバル市場でビジネスをしていく上で、 新しい素材に熱意をもってチャレンジし、それを強みとして考 えてくださる長谷虎紡績さんのようなパートナーはとても頼も しい存在です。 長谷)これからの時代、環境に配慮された素材は当たり前にな っていくのではないでしょうか。私たちは従来の繊維業界で培 われてきた加工技術や機能性を PlaX と掛け合わせ、新しい価 値を生み出すことを積極的に推進していきたいと考えています。 素材の力で世界が直面するさまざまな社会課題の解決に貢献し たいですね。 坂本)ありがとうございます。私たちも長谷虎紡績さんと一緒 に、 自社のコア技術である素材の改質技術を生かしながら、 PlaX の機能や用途をさらに拡張していきたいと考えています。本日 は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。 長谷虎紡績株式会社 長谷虎紡績株式会社は ���� 年に岐阜県羽島市で製糸業 として創業。テキスタイルやアパレル、資材用途の紡績 部門、カーペットや車両内装材などのインテリア部門を 展開しています。
  9. Progress Report 2025 11 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    SPECIAL 対談 | 岩木久剛 × 坂本孝治 株式会社マッシュスタイルラボ 岩木 久剛 執行役員 生産管理本部本部長 「着る喜び」 を お客様と共に 大学卒業後、複数の大手アパレル企業において広く経験を重ね、MD から事業全体のマネジメントに至 るまで知見を積んだ後、���� 年マッシュホールディングスに入社。生産管理本部 本部長としてファッ ション事業におけるプラットフォーム化を推進。����年より現職となり、 取引先企業とともに 「サステ ナブルアライアンス」 を立ち上げるなど、ファッション分野におけるサステナビリティの推進にも寄与。
  10. Progress Report 2025 12 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    「ポリエステル代替」の可能性に魅了され PlaX 採用へ 坂本)Bioworks とはどのようなきっかけで出会いましたか? 岩木)� 年ほど前、瀧定名古屋様からのご紹介でした。私たち は製品づくりにおいて本来であれば、素材の触り心地や風合い を重視するのですが、それ以上に「ポリエステルを代替する」 という PlaX のコンセプトに強く惹かれました。ポリエステル は多くの繊維素材と混紡できるため、弊社にとっては欠かせな い素材ですが、それを植物由来で実現し、環境負荷を軽減でき るなんて、とても魅力的でしたね。 坂本)その後、 「emmi」 ���� 年春夏コレクションで採用いただ くことになるのですが、 どのような経緯があったのでしょうか? 岩木) 「emmi」はサステナブルやウェルネスをコンセプトとし たブランドで、お客様にもその世界観やモノづくりが支持され ています。その事業をさらにステップアップするため、環境配 慮に一歩踏み込んだコミュニケーション手法を模索していた最 中、 PlaXと出会いました。 現場のスタッフも PlaX を使った商品 開発に非常に前向きで、採用の決断はスムーズでしたね。 坂本)ローンチ後の反響はいかがでしたか? 岩木) 「emmi」 の環境配慮に対する取り組みを応援してくださ るお客様が多く、そのお客様の理解や共感に大きく寄与した印 象があります。また、展示会では、御社からご提供いただいた PlaX の環境負荷に関するエビデンスを用いて、 製造過程の環境 負荷を可視化する取り組みをご一緒させていただきました。そ のおかげで、 新聞社をはじめとするメディアから取材依頼や、 デ ベロッパーの方々からのイベント開催提案など、大きな反響が ありました。 坂本)今のお話を伺うと、 「emmi」 のようなサステナブルに親 和性の高いブランドとの協業が、新素材の普及に重要だと改め て感じますね。 岩木)そうですね。ファッション性と環境配慮の両立が評価さ れたのだと思います。素材メーカーの中には、自社の機能を強 く主張するあまり、一方的なブランディングを求めてくるケー スも多いのですが、そうなると、私たちブランド側が大切にす るメッセージやコンセプトが損なわれ、お客様を混乱させてし まいます。その点、PlaX は「emmi」のブランドイメージを損 なうことなく、柔軟かつ自然に取り入れられる形で展開できた ことが、とても良かったですね。環境配慮素材だからこそ、多 くの人に無理なく受け入れられることが大切だと実感しました。 「一緒にやりましょう」というメッセージが生んだ波及効果 坂本)ファッション業界の持続可能性における課題については、 どのようにお考えですか? 岩木)業界全体として、現状どの程度の環境負荷が発生してい て、どんな課題が存在しているのかが十分に可視化されていな い、あるいは把握自体が進んでいない点が課題だと考えていま す。 国内でCO� 削減に取り組んでも、 生産の多くが中国や東南 アジアで行われているため、本来は生産国に及ぶ影響まで考慮 する必要があります。しかし、アパレル企業は、商社やメーカ ーが取引のエンドとなるケースが多く、生産現場とのつながり が希薄な傾向があります。持続可能な産業を目指すには、川上 から川下まで一体となった取り組みが不可欠ですが、その重要 性が十分に認識されていないのが現状です。コロナ禍をきっか けに、生産の現場に行かずともオンラインでコミュニケーショ ンを完結させることが増加したため、その傾向は拍車がかかっ ているように思います。 坂本)そのような課題がある中で、御社ではどのような働きか けをされていますか。 岩木)環境問題への取り組みでは、川上のパートナー企業に対 して「やってください」ではなく「一緒にやりましょう」とい うメッセージを発信するようにしています。 そうすることでパー トナー意識が芽生え、取り組みの輪が広がっていくんですよね。 坂本)呼びかけ方を変えるだけで、 意識が大きく変わるんですね。 岩木)印象的な事例があります。� 年前に持続可能性をテーマ にアクションをまとめたポスターを作成し、生産工場に向け配 布しました。指示を連想する言葉ではなく、みんなで一緒にや っていきましょう、というメッセージと、柔らかなテイストの イラストを用いたところ、工場内のܝࣔʹͱͲ·Βͣɺ工場の 方々が自主的にポスターを配って、周辺地域に広めてくださっ たんです。 こうした動きが生まれたことが嬉しく、 トップダウン ではなく 「参加しませんか?」 と呼びかけることの重要性を改め て感じました。 坂本)企業間の取り組みが、街中にまで広がるとは驚きです。 Bioworks でもパートナーシップ構築ガイドラインを作成する 際、 「サプライヤー」ではなく、 「パートナー」と呼ぶことで関 係性の構築を推進している中、岩木さんのお話は大変参考にな りました。是非、そのポスターを後ほど見せてください。
  11. Progress Report 2025 13 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    お客様に伝え、共に取り組む 坂本)私たちは昨年策定した Sustainability Vision の中で、洋 服を着用し、自己表現することの喜びや楽しみを「着る豊かさ」 と表現し、ファッション業界における社会課題を解決していく にあたっても維持していかねばならない要素であると考えてい ます。お客様にとっての「着る豊かさ」や、ファッションが本 来持つカルチャーを大切にしながら、業界の環境課題を解決し ていくためには、どのようなことが重要だとお考えでしょうか。 岩木)弊社は「ウェルネスデザイン」というコーポレートスロ ーガンのもと、お客様をはじめ、すべてのステークホルダーを 笑顔にすることを目指しています。ファッションには着ること で得られる楽しさや喜びがあると思うんですが、その裏側で環 境に負荷をかけていては、お客様やパートナー企業まで含めた サプライチェーン全体における真の笑顔は生まれません。その ため、 衣服の製造に関わる環境負荷を明らかにし、 適切に発信す ることはとても大切です。 これは � 社でできることではなく、 業 界全体を巻き込んで、一緒に進めていく必要があると思います。 坂本)さまざまなブランドとお取り組みをする中で、環境配慮 素材を検討している理由を伺うと、 「株主が求めているから」 と、 お客様への発信を前提としていないケースも少なくありません。 その点、御社は裏側にある背景をちゃんとお客様に伝えていこ うという意思と、楽しい買い物を提供することを両立されてま すよね。 岩木)そうですね。誤解を招かないよう、正しく伝えることを 意識しています。弊社はこれまでできるだけ長く着続けていた だけるような商品を丁寧に作って販売してきました。サステナ ビリティへの取り組みも同様に、一方的に環境負荷を伝えるの ではなく、お客様と共に進めていくことが理想です。その点で、 PlaX の可能性には大いに期待しています。 坂本)Bioworksとしても、 品質や用途の要望に応えながらPlaX の開発を進めていきたいですし、御社からのご提案も積極的に 取り入れ、共に成長できるパートナーシップを築ければと思い ます。本日はありがとうございました。 株式会社マッシュスタイルラボ マッシュスタイルラボは、ファッション、 ビューティー、フード、デザイン、不動 産など多岐にわたる事業を展開している マッシュグループのファッション事業を 担い、 「SNIDEL」や「gelato pique」な ど �� を超えるファッションブランドを 展開しています。
  12. Progress Report 2025 15 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    【財務資本】 累計資金調達額 ��億円����万����円 【製造資本】 コンパウンド製造に関する 生産設備+ファブレスでの グローバル生産 【知的資本】 PLA の機能改善およびリサ イクルについて蓄積された 知見・技術開発力 【人的資本】 PLA の研究開発者 × 繊維界のベテラン社員 × アパレル業界出身の社員 による多様性に富む 組織人材 【社会関係資本】 グローバルファッション ブランド・政府関係者 とのリレーション 【自然資本】 オフィスの利用・生産設備に おける電力・水利用量 PlaX 関連製品の 研究開発・製造 ※繊維、繊維製品、 副資材、成型品 グローバルにおける PlaX の認知拡大 (PR/ コミュニケーション活動) 持続可能な調達サプライ チェーンの構築 PlaX のリサイクル技術 開発 / スキーム構築 PlaX 製品の透明性・ トレーサビリティ向上 PlaX 関連製品の 流通量増加 ※���� 年までに 約 �� 万トン 代替素材についての 認知・リテラシー向上 パートナーシップ構築 ガイドラインへの同意 数増加 リサイクル PlaX の 流通量増加 トレース可能な PlaX 製品の割合拡大 投下資源量の削減 衣類廃棄量の削減 マイクロプラスチックの 排出削減 衣類の廃棄に伴う CO�排出量の削減 着る人の意識・行動変容 ( あたらしい豊かさの浸透 ) つくる人の意識・行動 変容 ( 創造性の増進 ) 衣類の製造量増に伴う CO� 排出量の削減 脱炭素化への加速 ※���� 年までに ��� 万トン のCO� 削減に貢献 生物多様性保全 / 水質汚染の抑制  循環型経済実現に 向けた貢献 「捨てる」以外の 選択肢増加 購買行動における代替 素材の選択肢増加 PlaX による自社製品 の付加価値向上 石油由来原料の 代替加速 ブランド ブランド 生活者 生活者 ブランド つ く る 喜 び と 着 る 豊 か さ が 続 く ︑ 新 た な 生 態 系 ︵ エ コ シ ス テ ム ︶ インプット 活動 アウトプット 短期アウトカム 中期アウトカム インパクト ビジョン Sustainability Vision 実現に向けた道筋 バージン材から リサイクル素材への代替加速  ファッション産業の持続的な 発展とカルチャーの 継承 / 醸成 Sustainability Vision の実現に向けて、私たちがどのような強みを活かし 誰にどのような変化を生み出していく必要があるのか、その結果、世の中 にどのようなインパクトを創出していきたいのかをまとめました。
  13. Progress Report 2025 16 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    ���� 年に目指す姿 / ポリエステル繊維の代替加速とインパクト拡大 ���� ���� ���� �,���万t �,���万t �,���万t ���万t ��万t ���� 年からの増加分の ��% を PlaX で代替する ポリエステル繊維市場が CAGR�.��%で成長する中、 ���� 年から ���� 年までの間の増分のうち ��%を PlaX が代替 ACTION ���� 年までの間で合計 ��� 万 t-CO� e の削減に貢献できる IMPACT ��万t -�.�kg CO  ※ � ��� 万t CO� 削減効果 ※ポリエステルと比較した場合の、PlaX 長繊維 �kg あたりのおおよその CO� 削減量 PlaX 長繊維 �kg 製造時の CO⒪排出量は �.���kg-CO⒪Fで、同条件のポリエステル長繊維と比較すると約 ��%の削減効果が確認されています。この差分から、ポリエス テルと比べた場合の長繊維 �kg あたりの CO⒪削減量は約 �.�kg-CO⒪F と推計されます。したがって、ポリエステルから置き換える PlaXの量を、����年から ����年の � 年間の増加分の約 ��% (���,���t) とした場合、� 年間で削減可能な CO⒪排出量は約��� 万 t と試算されます。
  14. Progress Report 2025 18 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    � PlaX 関連製品の研究開発・生産 しかし、 ポリ乳酸は耐熱性や耐久性、 染色性におい て課題があり、 衣料用途など広範な市場への展開は 難航。多くの企業が開発を撤退する中、 Bioworks CTO の寺田はポリ乳酸の可能性を諦めることなく、 独自のアプローチで課題解決に挑戦し続けました。 長年の研究を重ねた結果、ポリ乳酸の耐熱性・耐 久性・染色性を飛躍的に向上させた新素材PlaXの 開発に成功。 ����年のBioworks 創業当初は、 使い 捨てカップやボトル、カトラリーなど、樹脂成形 品の製造販売に注力しました。 その間にも新素材PlaXの技術確立に尽力すること で繊維用途としての活路を見出し、 ���� 年からは 繊維業界への展開を本格化しました。 現在、PlaXは環境負荷低減と機能性を両立する植 物由来の次世代合成繊維として、国内外において 注目を集め、さまざまなブランドでの採用が進ん でいます。 ポリ乳酸 (PLA) はサトウキビやトウモロコシなど の植物由来の原料からつくられる環境負荷の少な いバイオプラスチックとして、 ����年代から注目 を集め、����年代初頭には、大手企業がポリ乳酸 を活用した新素材の研究開発に乗り出しました。 ����年代 ~ ����年代初頭   ����年   ����年   ����年   ����年   ����年   ����年 ポリ乳酸に注目が集まるが 物性問題で市場へ普及せず 前身のバイオベース株式会社設立 大阪大学との共同研究 PlaX 繊維事業開始 PlaX が ��ブランドで採用 国内外の企業と生地の 共同開発・製造販売を開始 植物由来の 添加剤開発 PlaX 樹脂成形品 事業開始 PlaX 繊維開発 本格化 Bioworks 設立
  15. Progress Report 2025 19 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    PlaX 原綿 / 原糸の開発生産 Bioworksは����年から����年までの間のポリエステル増分のうち��% (�� 万 t)を PlaX で代替することを目標に掲げています。目標達成の鍵となるの は、価格競争力・安定供給・品質の確保です。既存の石油由来素材を代替す るうえで大きな課題となる価格について、コストダウンのために、歩留の向 上とともに、 ポリ乳酸メーカーの供給量の拡大と PlaXの生産規模の拡大を目 指します。安定供給に向けては、国内外、とくに ASEAN 地域を中心としたサ プライチェーンの構築を加速し、生産基盤の安定を図ってまいります。安定 した品質を保つためには、加工処置をした際の分子量など強度・耐久性につ いて測定を行い、その都度、自社研究所や公的検査機関において品質確認が 取れる体制を確立しています。また Bioworks は製造工場を持たないファブ レス企業であるため、品質安定にはパートナー企業との緊密な連携が不可欠 です。紡糸、紡績、織り編み、染色、縫製における各パートナー企業と協力 し、PlaX 繊維の製造工程に関する技術や知見、ノウハウを検証・共有するこ とで、品質の安定・向上に努めています。 植物由来 CO� 排出量 削減 循環性 抗菌・防臭 PlaX の特性 PlaXはサトウキビ由来のポリ乳酸を原料に、独自開発した植物由来の添加剤 によって耐熱性、耐久性、染色性を従来のポリ乳酸と比べて大幅に向上した 新素材です。PlaX は、石油由来の合成繊維と比較し、製造時のCO� 排出量 を削減します。また既存の合成繊維にはない機能性として、化学的な後加工 を必要としない乳酸由来の抗菌・防臭性を備えています。この新たな機能性 が評価され、肌に直接触れる下着、インナー、靴下での採用や、化学的な後 加工を規制するベビー用品ブランドでの活用が進められています。 資源循環についても、微生物によって最終的に水や二酸化炭素に分解される 「生分解性」 の特性を活かした循環手法や、水と熱の影響によって分子結合が 切れる「加水分解」の特性を活かした、廃棄物から同等の素材を再生産する 「ケミカルリサイクル」 が可能であり、社会実装に向けて研究開発、実証実験 が進められています。 ���� 年から ���� 年までの間の ポリエステル増分のうち ��%(�� 万 t) を PlaX で代替 (価格/品質共に競争力のある PlaX を安定供給) TARGET ���� 年の目標
  16. Progress Report 2025 20 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    PlaX の採用事例 PlaX はかつてのポリ乳酸の弱点、物性と染色を安定させることに成功し、���� 年に繊維事業にシフトして以降、パートナー企業の協力のもと量産体制を確立してきました。 国内外での拡販を進め、���� 年度には最終製品として �� ブランド以上で採用※、上市されています。      ※ 弊社が把握している採用ブランド数です。
  17. Progress Report 2025 21 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    ����年に創業した繊維商社の株式会社ヤギは、社是である「終 始一誠意」 の精神を守りながら時代と社会の変化に機敏に対応し、 現在はマテリアルから、 ライフスタイル、 アパレル、 ブランド・リ テール領域に至るまで、 多岐にわたるビジネスを展開しています。 株式会社ヤギ 福盛 昭二 グローバルマテリアル本部第二事業部 (���) 事業部長 Q�  貴社が目指している環境や社会に配慮した製品づくりに おいて特に重視している価値観や基準について教えてください。 A�   私たちの事業が与える環境への影響は、原材料調達から 製品を届けた後まで幅広く及びます。世界規模で環境問題が深 刻化していくなか、持続可能性のある地球を次の世代につなぐ ため、気候変動への対応・循環型社会の推進・カーボンニュー トラルへの取組に貢献します。 Q�  PlaX の特性(環境性能、質感、機能性など)が、貴社の 取り組みとどのようにマッチしていると感じましたか?また実 際にPlaXを使ってみて感じた特徴や魅力的な点があれば教えて ください。 A�   弊社の環境に対する行動指針である【原材料の調達から 製品の製造・供給・廃棄など、あらゆる事業領域において、地 球環境に配慮し、持続可能な社会の実現に取り組む】にマッチ しており合成繊維の新たな素材として、植物由来という、時代 が必要としている素材の販売に携われることは今までにない魅 力を感じております。 Q�  貴社が Bioworks とのパートナーシップを通じて注力さ れている取り組みにおいて、今後の展開や課題について教えて ください。 A�  当社の得意とする原料事業から製品事業の知見を活用し、 海外を中心としたサプライチェーンの早期確立を目指してお取 組をさせて頂いております。安定した製品の供給には、時間を 要すると思われますが、パートナーシップを通して解決を図り たいと考えております。 Q�  Bioworks との協力を通じて、どのような未来を実現し ていきたいと考えますか? Bioworks への期待や、これからの 共創に向けたメッセージがあれば教えてください。 A�  豊かなライフスタイルを実現するため PlaX を活用した イノベーションの創出によって、世の中に新しい価値を提供す ることを目指したいです。 Partners Voice ASEAN におけるサプライチェーン構築パートナー「株式会社ヤギ」
  18. Progress Report 2025 22 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    � グローバルにおける PlaX の認知拡大(PR/ コミュニケーション活動) 持続可能な社会の実現には、既存の素材に代わる循環可能で環境負荷の少ない素材の普及が不可欠です。将来的には、石油由来の素材を代替する植物由来の新素材や再生資源 を活用した素材が、特別な選択肢としてではなく、社会の標準として受け入れられることが望まれます。そのために、より多くの企業や消費者に、石油原料に依存しない代替 素材を新たな選択肢として認識してもらうことが第一歩となります。さらに、それらの代替素材が生産過程における環境負荷を低減し、リサイクルが可能であること、耐久性 においても従来の素材と遜色がなく、加えて新たな機能性という付加価値を携えていることを正しく伝え、新たな選択肢についての理解を深めてもらうことも重要になります。 Bioworks はこうした背景のもと、グローバルにおける PlaX の認知拡大を、パートナー企業との協業を通じて推進しています。パートナー企業の皆様との取り組みの中でも、 特に国内外の展示会への参加は新素材の認知拡大の場として大きな役割を担っています。���� 年 � 月にはフランスで開催された国際的な生地見本市 Première Vision Paris の 「Smart Creation」エリアに � 度目の出展を果たしました。本展示会では、紡糸・紡績・生地メーカー・生地商社の協力のもと、PlaX を使用した多種多様な生地を展示。ブー スに訪れる海外ブランドや糸・生地メーカーは ��� 社を超え、PlaX のグローバル展開に向けての協業、開発が進められています。 石油原料に依存しない代替素材として グローバルにおける PlaX の認知拡大 PlaX の開発を行うパートナー企業サポートのもと 国内外の展示会で PlaX 生地や製品サンプルを展示 し、 認知拡大を推進しています。 グローバル市場に 向けては、���� 年 � 月よりPremière Vision Paris に参加し、 PlaXの国際的な認知向上に貢献していま す。 また、 Première Vision Paris への出展に加え、 瀧定名古屋株式会社のサポートによる PlaX 単独展 示会や、 株式会社ヤギの総合展出展などの取り組み は各メディアにも取り上げられ、 注目を集めました。 国内外の展示会への参加 TARGET ���� 年の目標 PROGRESS ���� 年 � 月時点での進捗
  19. Progress Report 2025 23 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    Partners Voice AceGreen Eco-Material Technology Co., Ltd.  Chou Roger   CEO 長繊維素材の開発パートナー「AceGreen Eco-Material Technology」 AceGreen Eco-Material Technology Co., Ltd.は、環境配慮型の 繊維素材を提供する企業です。現在、特定のアパレル市場を中 心に製品を供給しており、グローバルでも名の知れた存在です。 現在、さまざまなサプライチェーン関連企業と協力し、繊維素 材を活用した製品の開発を進めるとともに、国際市場でのプロ モーションおよび販売を行っています。 Q�  貴社が目指している環境や社会に配慮した製品づくりに おいて特に重視している価値観や基準について教えてください。 A�   当社が最も重視する価値は、 「持続可能性」 「社会的責任」 「革新性」 「透明性」そして「社会的影響評価」です。製品が環 境に与える負荷を最小限に抑えることを目指し、再生可能で循 環可能な素材を採用するとともに、生産過程が環境に悪影響を 及ぼさないよう配慮しています。さらに、開発の過程では社会 的責任を意識し、誠実さと透明性をもって消費者に製品の由来 や影響を明確に伝えることを大切にしています。すべての開発 プロジェクトにおいて慎重な影響評価を行い、製品が社会、環 境、経済に対して長期的にポジティブな変化をもたらすことを 目指しています。 Q�   PlaX の特性(環境性能、質感、機能性など)が、 貴社の 取り組みとどのようにマッチしていると感じましたか?また実 際にPlaXを使ってみて感じた特徴や魅力的な点があれば教えて ください。 A�  当社は現在、 主にPlaXの長繊維の製造を手掛けておりま す。糸の製造という観点から見ると、PlaX には従来の市場では 実現が難しかった特性を備えているだけでなく、生分解性や抗 菌性といった機能も兼ね備えています。素材開発の市場動向を 踏まえると、気候変動への対応が重要視される中で、環境配慮 型の素材が今後主流になっていくと考えられます。 そのため、 当 社としても PlaX の環境性能に特に注目しています。 Q�  貴社が Bioworks とのパートナーシップを通じて注力さ れている取り組みにおいて、今後の展開や課題について教えて ください。 A�   現在、 Bioworks との協業では、 主に紡績用素材を中心に さまざまな規格の開発を進めています。しかし、材料の熱分解 が進みやすいという課題があるため、製造プロセスにおいて大 きな技術的挑戦が伴います。 また、 市場での活用においても、 求 められる物性が異なる場合があり、それらの課題をクリアする ためには、材料の改質が不可欠です。こうした課題を克服する 鍵となるのが Bioworks の改質技術だと考えています。 Q�  Bioworksとの協力を通じて、 どのような未来を実現して いきたいと考えますか? Bioworks への期待や、これからの共 創に向けたメッセージがあれば教えてください。 A�  新しい素材に対するブランドの開発ニーズは多様であり、 ブランドとの連携はサプライチェーンにとっても非常に重要で す。とくに、新素材の開発には高額なコストがかかるため、ブ ランドへの提供過程で問題が生じると、その素材の信用性が損 なわれるリスクもあります。ブランドへの供給においては、単 独での対応ではなく、共同でブランドをサポートする形で開発 を進めることが理想的だと考えています。
  20. Progress Report 2025 24 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    株式会社エイガールズ  尾崎 孝夫 取締役 企画部 部長 エイガールズは、90年以上の歴史を持つ老舗ファクトリーを 背景に、ラグジュアリーで究極の着心地を追求した素材を提供 し、国内外のメゾンブランドから信頼をいただいているテキス タイルメーカーです。 Q�  貴社が目指している環境や社会に配慮した製品づくりに おいて特に重視している価値観や基準について教えてください。 A�   当社では、 「簡単に捨てられない価値のある素材づくり」 を大切にし、和歌山産地で完結できる仕組みを構築することを 目指しています。原材料もできるだけサステナブルな原料を使 用することで、環境負荷を抑えながら持続可能なものづくりに 取り組んでいます。また素材そのものの品質や耐久性を高める ことで、長く使い続けられる製品を企画し、無駄を減らすこと にも重視しています。 Q�   PlaX の特性(環境性能、質感、機能性など)が、 貴社の 取り組みとどのようにマッチしていると感じましたか?また実 際にPlaXを使ってみて感じた特徴や魅力的な点があれば教えて ください。 A�  PlaX は、CO� 削減や環境負荷の低減に貢献する素材であ り、持続可能なものづくりを目指す当社の取り組みと非常にマ ッチしていると感じています。また、素材自体にストーリーが ある点も魅力的で、サステナブルでラグジュアリーな素材作り の可能性を感じています。また短繊維に関しては、異素材との 混紡によって新たな風合いを生み出せる点が魅力的で、幅広い 表現が可能になることに期待しています。 長繊維についても、 新 しい形状や番手の開発をされており、今後の展開が非常に楽し みです。 Q�  貴社が Bioworks とのパートナーシップを通じて注力さ れている取り組みにおいて、今後の展開や課題について教えて ください。 A�   環境負荷の少ない素材開発に取り組み、特にヨーロッパ 市場のお客様に向けて今後も積極的にアピールしていきたいと 考えています。 今後もPlaXを活かした新たなテキスタイルの開 発や異素材との組み合わせによる新しい風合いなど企画を進め ていきたいと思っています。課題として染色の難しさや品質の 安定性、さらには生分解性の条件などがありますが、引き続き これらの課題解決に向けて両社で取り組んでいければと考えて います。 Q�  Bioworksとの協力を通じて、 どのような未来を実現して いきたいと考えますか? Bioworks への期待や、これからの共 創に向けたメッセージがあれば教えてください。 A�  Bioworks との協業を通じて、環境負荷を抑えながらも 高品質で魅力的なテキスタイルを提供し、 PlaX を活用した新し い素材開発を進めることで、サステナブルでありながらファッ ション性や機能性を兼ね備えた製品づくりを目指していきます。 Bioworks には、 引き続き技術革新を進めていただき、品質の安 定性、生分解性など解決策を見出していただきながら、よりよ い素材開発を期待しています。 Partners Voice グローバルに向けたテキスタイルの開発パートナー「株式会社エイガールズ」
  21. Progress Report 2025 25 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    Seivson Tzu Chin Shen デザイナー Seivsonは 「私たち (Nos) の生活 (Vies) を多角的 ( 反転させて ) にみる」 をテーマに、 ����年設立された 台湾のファッションブランドです。デザインチームは、台湾政府によって � 年連続でアジアの新鋭デザ イナー代表に選ばれたのを皮切りに、数々のアワードを受賞し、台湾の代表として、東京とニューヨー クのファッションウィークへ参加。����年には日本法人 「株式会社 Seivson Japan」 を設立。 Q�  Seivson のものづくり(クリエイティブ)の軸となる考 えや、PlaX を採用した ��SS コレクションテーマに込めた想い、 検討経緯について教えてください。 A� 「傷跡は身体の記憶、シワは服の痕跡」 今季のコレクションでは、女性の成長を視点に、新しいデジタ ル時代における社会現象を探求しました。現実と虚構が曖昧に なっていく中で生まれる矛盾や歪みをデザインコンセプトとし て表現しています。デザイン・開発面では、さまざまなシワや テクスチャーを用いて、異なる織物の質感や特性を引き出しま した。一見ランダムに見える布の折り目は、実は緻密なバラン スの上に成り立っており、対立しながらも調和する力を生み出 しています。それはまるで、女性の肌に残るわずかな痕跡のよ うに、繊細でありながら確かに存在するものです。今季のデザ インには、Bioworks が開発した PlaX 素材を採用し、異なる質 感の素材と重ね合わせ、 多層的な加工や再構築を施すことで、 こ れまでにない表現を追求しました。新たな素材と技術の挑戦は、 成長する生命のように、たとえ傷ついても美しさを放つ存在と なることを示しています。 Q�  PlaX の特性(環境性能、質感、機能性など)が、貴社の 取り組みとどのようにマッチしていると感じましたか?また実 際にPlaXを使ってみて感じた特徴や魅力的な点があれば教えて ください。 A� PlaXはサトウキビを原料とする植物由来の合成繊維であ り、環境負荷の低減や CO� 排出削減といった特長を持ちます。 この特性は、私たちが掲げるサステナブルファッションへの取 り組みと一致しています。デザインプロセスにおいて、PlaXの 質感や特性が今季のテーマ「傷跡は身体の記憶、シワは服の痕 跡」と完璧に呼応していることを実感しました。女性の成長と ともに刻まれる身体の変化を表現するように、PlaX の細やかな 質感と風合いは、現代社会の在り方を映し出すものとなってい ます。Seivson のクリエイションにおいて、PlaX は単なる素材 ではなく、デザインの哲学を体現する要素となりました。 Q�  Bioworksとの協力を通じて、 どのような未来を実現して いきたいと考えますか? Bioworksへの期待や、 これからの共創 に向けたメッセージがあれば教えてください。 A� Bioworksのバイオテクノロジーに関する専門知識と技術 は、環境保護、資源活用、製品開発の分野で新たな可能性を切 り拓くものと確信しています。これにより、業界全体をより環 境配慮型かつ革新的な方向へと推進できると期待しています。 今後の協業においては、技術開発と市場応用のさらなる統合を 進めていきたいと考えています。特に、素材イノベーション分 野での連携を強化し、世界市場に向けた競争力のあるソリュー ションを共同開発できればと願っています。これにより、業界 の基準を引き上げ、持続可能な未来の実現に貢献していきたい と考えています。 Partners Voice 台湾発、世界的に注目を集めるファッションブランド「Seivson」
  22. Progress Report 2025 26 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    �-� 持続可能なサプライチェーンの構築 アパレル・繊維産業においては、環境負荷の問題や、サプライチェーン上の人権侵害・労働災害の課題が顕在化し、深刻化しています。こうした状況の中では、企業の 事業活動全般において、各国の法令・規制の遵守のみならず、環境や人権に関する国際基準や原則を理解・尊重し、実践していくことが求められています。Bioworksは、 パートナー企業の皆様とともに、繊維製品のサプライチェーンをより持続可能で責任あるものへと変えていくための取り組みを推進していきます。 ����年�月に策定した 「調達方針」 に基づき、 「パートナーシップ構築ガイドライン」 を策定。 まずは量産に関わるパートナー企業の皆様へ周知を行い、 持続可能なエコ システムの形成に向けた協力同意を促し、 現在� 社からの同意書を受領。今後、パ ートナーと共に本ガイドラインに基づき、 環境負荷軽減施策や社会課題への対応施 策を検討・実行予定です。 ���� 年にLCA分析によりPlaX の短繊維およびPlaX のタオル製品についてCO� 排 出量を可視化。 その後、 グローバル量産体制の構築が進んできたことを踏まえ、 新 たなサプライチェーンにおける LCA 分析を実施しました。(�� ページ参照) 食用の糖を用いることで生じる食料安全保障の問題について、グローバルの調査 レポートをもとに、現状のスタンスを整理。社内外への周知と実施調査結果を踏 まえ、非可食糖をはじめ代用の可能性や可食作物の不使用を視野に入れた探索を 開始します。 ( ページ参照) パートナーシップ構築ガイドラインの策定・周知 LCA での CO� 排出量の可視化 食料安全保障に関するデスクトップ調査実施 PlaX の製造のサプライチェーンにおける 社会・環境リスクの評価・可視化 パートナーシップ構築ガイドラインに基づく 協力体制の構築 (ガイドライン賛同率 ��%以上) 人権ガイドラインに基づく デューデリジェンスの実施 / 改善サイクルの確立 TARGET ���� 年の目標 PROGRESS ���� 年 � 月時点での進捗
  23. Progress Report 2025 27 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    ポリエステル PlaX ��� �� PlaXとポリエステル短繊維(原綿)�kg 製造時における CO� 排出量比較 �-� PlaX 繊維の CO� 排出削減効果(LCA 分析) AIST-IDEA ver�.� 「気候変動 IPCC ���� GWP ���a」 「LIME� 水資源消費量」 使用 カーボンフリーコンサルティ ング株式会社 監修 グローバル量産体制の確立に向け、サプライチェーンの再構築を進めるとともに、PlaX の製造手法をフルコンパウンドからマスターバッチ製法へ移行しました。これに より、混練量や輸送量の削減が可能となり、さらなる CO⒪排出量の抑制が期待されることから、LCA 分析の再試算を実施しました。 ※今回新たに算出した数値 ��% 削減 約 ポリエステル PlaX ��� �� PlaXとポリエステル長繊維 �kg 製造時における CO� 排出量比較 ��%削減 約 ※ポリエステルの排出量を ��� とした場合 ※ポリエステルの排出量を ��� とした場合 PlaX 短繊維 PlaX 長繊維 試算対象 指標 前回試算 ���� 年 LCA 分析による CO� 排出量 ポリエステル代替に よる CO� 削減率 ポリエステル代替に よる CO� 削減率 LCA 分析による CO� 排出量 �.���kg-CO� e (原綿) �.���kg-CO� e (紡績糸) 今回試算 ���� 年 � 月 前回試算との 差分の理由 �.���kg-CO� e (原綿) 添加剤のマスター バッチ化によって 混錬量・輸送量を 削減できたため 排出量は削減した が比較対象のポリ エステルの数値が データーベース上 低くアップデート されたため 試算なし (紡績糸) 試算なし (紡績糸) ��% 減 (原綿) �.���kg-CO� e ��% 減 (原綿) ��% 減 (紡績糸) 試算なし 試算なし ��% 減
  24. Progress Report 2025 28 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    �-� 持続可能な原料調達への取り組み タイ全土の耕地面積のうち、 PLA 原料向け サトウキビを生産する耕地の割合は タイの粗糖全生産量のうち、 PLA 製造向け に必要な粗糖の量の割合は Source:TOTALENERGIES CORBION 「PLANTING THE FUTURE WITH PLA」(����) 現時点、 食料安全保障への影響は僅少 将来、 バイオマス原料の需要増加により影響が大きくなる恐れ �.�� �.�� �.�� �.�� 小 麦 ト ウ モ ロ コ シ テ ン サ イ サ ト ウ キ ビ 単位 : t/ha ( 参考)主要可食バイオマス原料の生産効率 バイオマス原料として使用される 可食作物の中でも、サトウキビは 土地の有効利用という点において 優れた植物。 Source:lfBB (����) ���� ���� ���� ���� バイオプラスチック バイオ燃料 ���� � 億 ��� 万 t � 億 ��� 万 t ��� 万 t � 億 ���� 万 t 可食バイオマス原料を用いて生 産されるバイオ燃料(バイオエ タノール、バイオディーゼルな ど)や、PLA をはじめとするバ イオプラスチックは将来、大幅 な需要像が予測されており、現 状は食料安全保障上のリスクが なくとも、今後影響が大きくな ることも否めない状況です。 Source:棟居洋介、増井利彦「バイオマスプラスチックの普及が世界の食料不安に及ぼす 影響の長期評価」(����)、Textile Exchange「The Sustainability of Biosynthetics」 今後、 世界人口の増加に伴い、 食料需要の拡大が予測される一方、 ファッション業界では環境負荷の軽減が喫緊の課題となっています。 私たちはできるだけPlaXの食料需要 に対する影響を最小限にしながら、 持続可能な形でファッション産業の課題を解決に導けるよう、 原料調達において常にさまざまな選択肢や可能性を検討し続けています。 使用済み PlaX 回収とケミカルリサイクルによる再資源化 > 回収済み PlaX から PLA 原料の収率 � 割、純度 ��.�% を達成し、高品質 PLA を生成 非可食糖 PlaX のコスト・効率・環境面からの事業性検討 �.��%  【土地利用の観点】 �.�%  【食料生産の観点】 TARGET ���� 年の目標
  25. Proress Report 2025 29 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    � PlaX のリサイクル技術開発 / スキーム構築 PlaX 繊維の最大の特徴は、 「加水分解可能である」という点です。これは従来の PLA の特性としても備わっていたものですが、どちらかというと経年劣化や品質の不安定 さなどを招くネガティブな要素として、これまで認識されてきました。しかし、Bioworks は、 「加水分解可能である」ことを強みとして捉え、それによって実現する何度 でも再資源化できるケミカルリサイクルの可能性に注目し、量産化に向けた研究開発、実証実験を行っています。 「植物由来でありながら、高い加工性と機能性を備え、 何 度も循環する素材」の実現を目指しています。 京都本社ラボにて、PlaX 製品を対象とするケミカルリサイクルの技術検証を実施。 東京都によるスタートアップ支援事業として「PlaX を用いた靴下製品の循環設計   (ケミカルリサイクル) 」 プロジェクトが採択。製品ライフサイクルが短く、 リユー スされづらい消耗衣類品である靴下を、植物由来のポリ乳酸素材 PlaX を用い製造、 回収し、 さらにケミカルリサイクルで再度ポリ乳酸原料に戻す。 半永久的に捨てる ことなく履き続けることができる靴下の新たなビジネスモデル設計を、 技術・コス ト・環境負荷の観点から検証します。 ケミカルリサイクルの実証実験開始 東京都支援事業における PlaX 製品の ケミカルリサイクル実証プロジェクト ケミカルリサイクルのサプライチェーン構築 > 使用済み PlaX 製品の回収から分別、素材分離、再資源化、 繊維化までの一連のサプライチェーンプロセスを構築 リサイクル PLA を用いた PlaX の量産開始 > 量産可能な品質の安定性の確保、必要な認証の 取得を通じて、リサイクル PlaX を製品として量産 > ライセンス付与などを通じた、更なる流通量の 拡大スキームを構築 ���� 年 PROGRESS ���� 年 � 月時点での進捗 TARGET ���� 年の目標
  26. Progress Report 2025 30 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    � PlaX 製品の透明性・トレーサビリティの向上 長く複雑なアパレルのサプライチェーンの構造において、どこで、誰によって、どのように作られたものであるか、すなわち透明性を高めることは、そのサプライチェーン に潜む社会課題をクリアにするための重要な取り組みであると考えています。PlaX は、タイで生産されたサトウキビを用い、世界の様々なパートナー企業との協業によっ て作られる繊維です。このプロセスの透明性を高め、トレース可能な状態とすることは、私たちの商品が世界に普及していくための「信頼の土台」であると考えています。 トレーサビリティシステムの確立 > PlaX 繊維が製造されるまでのサプライチェーンにおいて、 どの国でどのように作られたのか、 どのような原料が使われているのか 情報を明らかにし、開示する > 情報をトレース可能な状態とするための システムを構築する TARGET ���� 年の目標 PlaX の原綿(短繊維) 、原糸(長繊維)において、 世界最高水準の安全な繊維製品の証である「エコ テックス ® スタンダード ���」の認証を「Annex � 製品クラスⅠ (乳幼児用製品) 」にて取得しました。 PlaXテキスタイルの開発・販売パートナーである瀧定名古屋株式会社と、 テキスタ イルの提供先となるブランドの � 社でサプライチェーン情報の可視化に取り組み、 PlaX を用いた製品やサンプルとともに、パネル展示を通じて情報を公開しました。 国内・海外ブランドとの「透明性向上プロジェクト」 OEKO-TEX 認証の取得 PROGRESS ���� 年 � 月時点での進捗 Seivson Première Vision Bioworks ブース (����年� 月 ) emmi ���� A/W 展示会 (����年�月 )
  27. Progress Report 2025 31 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    株式会社マッシュスタイルラボ 岩木 久剛 執行役員 生産管理本部 本部長 マッシュスタイルラボは、 ファッション、 ビューティー、 フード、 デザイン、 不動産など多岐にわたる事業を展開しているマッシュ グループのファッション事業を担い、 「SNIDEL」 や 「gelato pique」 など �� を超えるファッションブランドを展開しています。 Q�  貴社が目指している環境や社会に配慮した製品づくりに おいて特に重視している価値観や基準について教えてください。 A�   弊社が最も重要視しているのは、サプライチェーンにお けるCO� 排出量を軽減し環境負荷を減らしていくこと。将来的 にはカーボンニュートラルを実現し、地球温暖化に歯止めをか けることに寄与していきたいと考えております。 実現に向け、 現 在は弊社の展開する各ファッションブランドにおいて � 製品当 たりの環境負荷(LCA 分析によるCO� 排出量) 可視化に尽力し ております。 Q�   PlaX の特性(環境性能、質感、機能性など)が、 貴社の 取り組みとどのようにマッチしていると感じましたか?また実 際にPlaXを使ってみて感じた特徴や魅力的な点があれば教えて ください。 A�  原料における LCA 分析の根拠があること、トレーサビリ ティが保証できていることは非常に魅力的であり、弊社が取り 組んでいきたい CO� 排出量可視化の実現においてもマッチし ていると感じました。将来的にマストになっていくと考えると、 弊社との先進的な取り組みが出来たことは大変有難く思ってお ります。また、素材の風合いも進化が感じられ、環境配慮素材 だからという妥協をすることもなく、商品の表現も問題なく展 開できております。 Q�  貴社が Bioworks とのパートナーシップを通じて注力さ れている取り組みにおいて、今後の展開や課題について教えて ください。 A�   今後は、実際に可視化できた排出量を「どう削減するか」 が課題と認識しています。特に素材の生産工程、商品の製造工 程それぞれで使用エネルギーの把握~再エネ、省エネ対応、更 にはお客様のお手元に渡ってから実際の使用~使用後の廃棄方 法等までを網羅した取り組みが出来れば非常に有意義であると 考えます。 Q�  Bioworksとの協力を通じて、 どのような未来を実現して いきたいと考えますか? Bioworks への期待や、これからの共 創に向けたメッセージがあれば教えてください。 A�  弊社のグループスローガンである「ウェルネスデザイン」 は、お客様をはじめ、関わる全ての人々の “笑顔” を創造する ことを意味しています。サステナブルな選択をすることで、未 来の子供たちの笑顔を守るというポリシーを、御社と協業する 中で体現してまいりたいと考えます。御社の開発する、より環 境負荷の少ない原料を弊社が積極的に採用し商品化することで、 一歩ずつでも歩みを前に進めていければと考えます。 Partners Voice 「ウェルネスデザイン」 を掲げ、 事業を展開する「株式会社マッシュスタイルラボ」
  28. Progress Report 2025 32 Introduction Our Vision Our Approach Progress

    瀧定名古屋株式会社  河内 明彦 婦人服地部部長代理 婦人服地 �� 課 課長 婦人服地部門営業推進室 室長 PlaX TF リーダー 瀧定名古屋は、 ���年以上の歴史を誇る、 原料及びテキスタイ ルとアパレル製品を扱う繊維専門商社です。原料 ・服地・アパ レルなど各種繊維製品の企画開発から仕入・生産・販売まで を一貫して手がけています。 Q�  貴社が目指している環境や社会に配慮した製品づくりに おいて特に重視している価値観や基準について教えてください。 A�   当社は、 「品質の安定」 を最も重視しております。お取引 先様が安心して使用できる商品づくりを心掛けるとともに、安 定供給を行うことで市場に対しての供給責任を全うすることに 注力しています。 Q�   PlaX の特性(環境性能、質感、機能性など)が、 貴社の 取り組みとどのようにマッチしていると感じましたか?また実 際にPlaXを使ってみて感じた特徴や魅力的な点があれば教えて ください。 A�  PlaX は、 抗菌・防臭性や弱酸性のデータが実数値として 出ており、環境負荷低減だけではなく、肌にやさしい素材とし ても評価をしています。実際に、展示会イベントの際に � 日間 同じPlaXを使った T シャツを着用しましたが、 コンディション よく着用することができました。改めてこの素材の機能特性の 高さを感じています。 Q�  貴社が Bioworks とのパートナーシップを通じて注力さ れている取り組みにおいて、今後の展開や課題について教えて ください。 A�   海外で開催された展示会 (Première Vision Paris) にも共 同出展をしましたが、関心を持っていただける機会は増えてい ます。一方で、想定よりも採用までのリードタイムが長くかか っている印象です。課題を分析しながら対応を進め、プライス を含めて調整をしていく必要があると考えています。 Q�  Bioworksとの協力を通じて、 どのような未来を実現して いきたいと考えますか? Bioworks への期待や、これからの共 創に向けたメッセージがあれば教えてください。 A�  短繊維に関しては、世の中にあるインナーや肌に触れる アイテムの素材を、PlaX へと替えていきたいという想いがあり ます。そのために、物性のさらなる向上と、市場のニーズにマ ッチするプライスの実現を期待しています。 長繊維に関しては、 耐久性、耐熱性、堅牢度の向上を極限まで追求していただきた いです。 Partners Voice PlaX テキスタイルの開発・販売パートナー「瀧定名古屋株式会社」