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令和7年資金決済法改正案と実務上の対応

 令和7年資金決済法改正案と実務上の対応

2025年5月12日に行われた『資金決済法 改正:持続可能なデジタル金融へ〜FinGATE Campus 第19回(フィンテック養成勉強会#52)』で、関口 諒 弁護士氏が講演した「令和7年資金決済法改正案と実務上の対応」の発表スライドです。
https://fintech-engineer.connpass.com/event/352095/

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Transcript

  1. [email protected] 【近著】 ・ 新たな信託ソリューションと法務~円滑なM&A・事業承継等のために~(きんざい・2022年) ・ 海外の決済関連サービスの我が国での適応可能性-事業面および法規制面からの検討-(金融法務事情2019年11月25日号) ・ 海外の保険テックサービスの我が国での適応可能性-事業面および法規制面からの検討-(金融法務事情2019年12月10日号) 関口 諒(せきぐち

    まこと) 堀総合法律事務所 弁護士 ⓒHori & Partners All rights reserved 2 2012年 慶応義塾大学法科大学院修了 2013年より堀総合法律事務所にて執務 2015年より外資系金融機関(銀行/証券会社)に出向 2019年 カリフォルニア大学バークレー校法科大学院 修了(LL.M.) 2019年10月 NY州司法試験合格 米国Smith, Gambrell & Russell 法律事務所での執務を経て、日本での執務に復帰 銀行、信託会社、証券会社、ベンチャーキャピタル、資産運用会社、決済事業者等の金融法務を幅広く担当
  2. 留意事項 ・ 本資料は、本資料の作成日現在において公表されている情報に基づいて作成されたものであり、本資料の作成日以降に 公表・施行される法令・行政解釈・裁判例等により内容が修正される可能性があります。 ・ 本資料における意見や解釈に関する記述は、行政当局や裁判所の意見と一致しない可能性があります。また、会計及び税務 の点を踏まえて検討したものではありません。 ・ 本資料における個別具体的な商品・サービスに関する記述は、本資料の作成日現在に公表されている情報及び当該情報から 合理的に推測され得る事項を基に作成されたものです。したがって、当該商品・サービスに係る内部情報・機密情報を含むもの

    ではなく、また、実際の事実関係・法的整理とは一致しない可能性があります。 ・ 本資料は、本セミナーのために作成されたものであり、個別の事案に関する法的アドバイスを目的としたものではありません。 個別の事案に関する相談につきましては、弁護士等の専門家にご相談ください。 ・ 本資料における意見や解釈に関する記述は、発表者の個人的な見解によるものであり、所属事務所の見解を示すものでは ありません。 ・ 本資料の無断転載・複写は禁止します。 ⓒHori & Partners All rights reserved 3
  3. ・ 2025年1月22日 金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告書の公表 ・ 2025年3月7日 「資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」提出 4 ⓒHori & Partners

    All rights reserved ・ 2024年8月26日: 資金決済制度等のあり方に関する検討について諮問に付される → 2024年9月25日~2024年12月24日まで全7回のWGが開催 資金決済法改正案の国会への提出
  4. ・ 資金移動業者は、履行保証金を本店の最寄りの供託所に供託しなければならない(資決法43条) ※ 履行保証金: 各営業日における未達債務の額 + 権利実行手続の費用額 = 資金移動業者は顧客資金について全額保全義務を負担する ・

    例外としての金融機関保証 = 金融機関との間での履行保証金保全契約で保全される金額で供託に代替(資決法44条) ・ 例外としての信託 = 信託会社等との間での履行保証金信託契約で保全される金額で供託に代替(資決法45条) ※ 供託・金融機関保証・信託のミックスも可能 資金移動業における顧客資金の保全 8 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  5. 【資金決済WG:見直しの方向性】 ・ 資金返還の確実性・安全性を担保しつつ、迅速な資金返還を実現する選択肢を設ける観点から・・・ → 資金移動業者の破綻時に、供託を経由することなく、利用者に対する直接返還を可能とする方法を導入 ・ もっとも・・・ → 資金移動業者の規模・サービス内容は多様 →

    現行の供託を経由する方法を採ることが適当な事業者も多いと考えられる ⇒ 現行の方法に加える新たな選択肢として、利用者に対する資金の直接返還の方法を導入 資金移動業における顧客資金の保全(返還方法の多様化) 10 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  6. (1)保証機関による直接返還 ① 債務引受型(改正資決法案45条の3:履行保証人債務引受契約) → 資金移動業者と保証機関(履行保証人適格者)との間で事前に債務引受契約を締結 + 届出 ⇒ 破綻時: 保証機関が、資金移動業者の利用者に対する債務を引き受けて、利用者に直接弁済

    ② 個別保証型(改正資決法案45条の4:履行保証人保証契約) → 資金移動業者の利用者と保証機関(履行保証人適格者)との間で事前に保証契約を締結 + 届出 ⇒ 破綻時: 保証機関が、利用者に対して、直接保証債務を弁済 ※ 保証機関は健全性に係る基準を満たす銀行等(履行保証金保全契約の相手方)とする 資金移動業における利用者資金の返還方法 11 ⓒ Hori & Partners All rights reserved 利用者の承諾が必要 保証機関と利用者間の契約が必要
  7. 【資金移動業者における対応】 ・ 改正により、顧客資金の保全方法は次の5つになることが想定される ① 供託 ② 履行保証金保全契約 ③ 履行保証金信託契約を維持することも可能 ④

    保証機関からの直接返還を予定する保証機関による保証 ⑤ 信託の受託者からの直接返還を予定する信託契約 ⇒ 資金移動業者は、従前の保全方法を維持してもOK ⇒ ただし、第一種資金移動業の滞留規制の緩和を受ける場合には、④ or ⑤への対応が原則必要 資金移動業における顧客資金の保全(返還方法の多様化) 13 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  8. 第一種資金移動業における滞留規制 ① 「具体的な送金指図を伴わない利用者資金の受入れは不可」(資府令32条の2第1項) → 送金額・送金日時(完了予定日)・送金先の明確な指定前の入金不可 ② 「利用者資金は、運用上・技術上必要な期間を超えて滞留不可」(資府令32条の2第2項) → 資金移動に関する事務を処理するために必要な期間内の払出し必要 ※

    送金先の誤指定・被仕向の休業日など業者に帰責性がない場合に問題解消に要する期間も含む。 16 利用者 (送金者) 第一種資金移動業者 入金 ・ 送金日時 : •月•日 ・ 送金先 : A田B郎 ・ 送金額 : XXXX 円 利用者 (受取人) 出金 資金移動に関する 事務を処理するため に必要な期間内で ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  9. 第一種資金移動業における滞留規制の緩和 【資金決済WG: 現行規制の課題】 ① 資金の滞留期間 → 利用者は送金の都度払込みが必要となり、企業間送金の定期的な実施の提供に支障 ② 具体的な送金指図の必要性 →

    利用者があらかじめ資金を入金しておき、外国為替相場等を見つつ有利なタイミングで送金指図を 行うようなサービスは不可 → 逆為替・取立委任のような資金移動サービスの場合、「資金を移動する日」を事前に決めることは困難 ③ 第一種・第二種を併営する場合の受入れ資金の取扱い → 第二種において受け入れた資金を第一種に係る送金に用いる場合、利用者に一度資金を払い出した うえで、再度利用者から第一種のアカウントに入金を受ける必要がある 18
  10. 第一種資金移動業における滞留規制の緩和 (1)滞留期間の延長の容認 ※ 改正法案では対象外 → 最大2ヵ月の滞留を認めることが考えられる ∵ 翌月末日払いという商慣習 → ただし、資金の受入れから保全までのタイムラグによる損失発生の可能性を踏まえて・・・

    ① 破綻時の損失等のリスク及びこれを減じるための態勢について利用者への説明 ② 前述の新しい資金返還方法を採用 ③ 早期に返還する体制 = 利用者の債権額の管理 + 利用者の連絡先・口座情報等の把握等 ④ 高い確実性をもって返還する体制 Ex. 信託の場合のタイムラグを2日から1日以下にする措置 利用者からの受入れを想定する上限額を保証・信託で保全 利用者から受け入れた資金が保全額を超える場合、保全までの間は超過部分を預貯金等で分別管理 19 新しい資金返還方法を原則としつつ、 ③・④を満たす限りは柔軟に考えるべきとの意見もあり
  11. 第一種資金移動業における滞留規制の緩和 (2)受任可能な送金依頼の具体性の程度の緩和 ※ 改正法案では対象外 → 送金サービスの内容等により、「資金を移動する日」が依頼時点で指定できないときは・・・ ⇒ 代わりに「資金を移動する期限」の指定を認めることが考えられる ※ 「移動する資金の額」「資金の移動先」は、具体的な指図が必要な点は変わりない

    (3)第一種・第二種を併営する場合の受入れ資金の取扱い ※ 改正法案では対象外 → 第二種で受け入れた資金を第一種に係る資金に振り替えることを認めることが考えられる → ただし、第一種の為替取引に用いる目的で第二種で資金を受け入れることがないよう、 実効性のある取組みを求めることが必要 20 ⓒ Hori & Partners All rights reserved 逆為替・取立為替型の場合に、外国為替相場の変動により、 当初指図の「移動する資金の額」と相違することは許容
  12. 【資金移動業者における対応】 ※ 改正法案では対象外 ・ 改正により、第一種資金移動業において最大2ヵ月の滞留を受けることが可能となる → 滞留規制の緩和を受けるには・・・ ⇒ 新しい資金の返還方法の採用を求められると見込まれるため、その採用の可否を検討することが必要 ⇒

    利用者への早期の返還の体制+高い確実性をもって返還する体制を求められると見込まれるため、 その採用の可否を検討 → 滞留規制の緩和は第一種資金移動業の促進に一定程度寄与するものと見込まれる ※ 緩和されるのは、 「資金を移動する日」を最大2ヵ月の範囲で「資金を移動する期限」とすることであるため・・・ ⇒ 具体的な送金に紐づかない滞留は引き続き不可であるため、滞留を前提とするデビットカード発行やATMでの引出し サービスは引き続き不可 第一種資金移動業における滞留規制の緩和 21 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  13. 債権者が事業者等である収納代行 【現行法】 為替取引に該当する収納代行(法2条の2) - 受取人(=金銭債権を有する者)からの委託、受取人からの金銭債権の譲受けその他これらに類する方法により、 当該金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託その他これに類する方法で支払いを行う者から弁済として 資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人に当該資金を移動させる行為であって受取人が個人 であることその他の内閣府令で定める要件を満たすもの ⇒ 為替取引に該当する

    ・ 内閣府令で定める要件(資府令1条の2)は・・・ → 受取人が個人であり、かつ、資府令1条の2各号に掲げる要件のいずれかに該当するもの ⇒ 実務上は、受取人が事業者の収納代行は、基本的には「為替取引」に該当するものではないと取り扱われている ※ ただし、最終的には個別判断とされているので注意(資金移動ガイドラインⅠ-2) 24 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  14. 【現状の課題】 → クロスボーダー収納代行が、海外オンラインカジノや海外出資金詐欺等の事案で用いられる → FSBの勧告において、「同じ活動・同じリスクには同じ規制を適用する」との原則 ⇒ 消費者保護上のリスク/オペレーションリスク/マネロン・テロ資金供与リスク・送金遅延リスク に対して、比例的な規制・監督を求める 【見直しの方向性】 →

    クロスボーダー収納代行のうち、銀行・資金移動業者が行うクロスボーダー送金と同機能を果たす と考えられるものについて、過剰な規制とならないよう留意しつつ、為替取引に関する規制を適用 することが考えられる クロスボーダーの収納代行の規制 26 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  15. クロスボーダーの収納代行の規制 【改正法案】 為替取引に該当する収納代行(改正資決法案2条の2) 金銭債権を有する者(以下この条において「受取人」という。)からの委託(国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から 国内へ向けて資金を移動させる行為に係る場合にあっては、二以上の段階にわたる委託を含む。)、受取人からの金銭債権の譲受け その他これらに類する方法により、当該金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む。 以下この条において同じ。)その他これに類する方法により支払を行う者(以下この条において「債務者等」という。)から弁済として 資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人又は当該受取人からの委託その他これに類する方法により支払を受ける 者(以下この条において「受取人等」という。)に当該資金を引き渡すことによって、債務者等から受取人等に当該資金を移動させる 行為(債務者等から現金の交付を受け、当該現金を受取人等に交付することにより当該資金を債務者等から受取人等に移動させる

    行為を除く。)であって、次の各号のいずれかに該当するものは、為替取引に該当するものとする。 ① 受取人が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合におけるものを除く。)であることその他の内閣府令で定める要件 を満たす行為(次号に該当する行為を除く。) ② 国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為(当該行為の態様その他の事情を 勘案し、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるものを除く。) ⇒ 要するに、クロスボーダーの収納代行は、府令で除かれるもの以外は為替取引に該当する 27 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  16. 【越境収納代行事業者の対応】 ・ 越境の収納代行事業を行う事業者は・・・ → 上記の整理におけるクロスボーダー収納代行に該当するかを検討することが必要 → クロスボーダー収納代行に該当する場合には、以下に配慮して、為替取引に該当する可能性を検討 ① 金銭債権の発生原因の成立に関与する者が行うクロスボーダー収納代行は基本的に対象外 ②

    金銭債権の発生原因の成立に関与しない者が行うクロスボーダー収納代行は基本的に為替取引として規制 - ただし、次のものは為替取引の適用対象外となり得る ・ エスクローサービス ・ 受取人との経済的一体性が認められるものが行うクロスボーダー収納代行 ・ 他法令が規律する分野におけるクロスボーダー収納代行 クロスボーダー収納代行の規制 29 ⓒ Hori & Partners All rights reserved
  17. 暗号資産交換業者等の破綻時における資産の国外流出の防止 34 ⓒ Hori & Partners All rights reserved ⇒

    暗号資産交換業者及び電子決済手段等取引業者について、資産の国外流出を防止する規定を導入 (改正資決法案63条の16の2、62条の21の2) 金融商品取引業者については、資産の国内保有命令の根拠条項あり(金商法56条の3) ・ 暗号資産交換業者については、資産の国内保有命令の根拠条項なし ・ 電子決済手段等取引業者についても、資産の国内保有命令の根拠条項なし
  18. 暗号資産等に係る事業実態を踏まえた規制のあり方 36 ⓒ Hori & Partners All rights reserved ・

    ゲームアプリやアンホステッドウォレット等をウェブ上で提供する事業者が、利用者に対して暗号資産 交換業者等を紹介するなどの場合に・・・ → 暗号資産・電子決済手段(以下「暗号資産等」)の売買・交換(以下「売買等」)に関与することがある → 関与の態様によっては、「媒介」に該当し、暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者としての 登録が必要となる ※ 上記のような仲介者が暗号資産等の取引画面を自ら提供するか否かは「媒介」への該当性を判断する一要素 であるものの、それをもって「媒介」該当性が一義的に導かれるものではない 暗号資産交換業者 電子決済手段等取引業者 になると・・・
  19. 暗号資産等に係る事業実態を踏まえた規制のあり方 38 ⓒ Hori & Partners All rights reserved 【資金決済WG】

    ・ 利用者の財産の預託を受けることなく、暗号資産等の売買等の媒介のみを業として行うことを内容とする 新たな仲介業を創設することが考えられる
  20. 暗号資産等に係る事業実態を踏まえた規制のあり方 40 ⓒ Hori & Partners All rights reserved (1)

    電子決済手段・暗号資産サービス仲介業(改正資決法案2条18項) → 次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいう ① 電子決済手段仲介行為 = 電子決済手段等取引業者以外の者が、電子決済手段等取引業者の委託を受けて、電子決済手段の売買又は 他の電子決済手段との交換の媒介を当該電子決済手段等取引業者のために行うこと ② 暗号資産仲介行為 = 暗号資産交換業者以外の者が、暗号資産交換業者の委託を受けて、暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換 の媒介を当該暗号資産交換業者のために行うこと
  21. 暗号資産等に係る事業実態を踏まえた規制のあり方 41 ⓒ Hori & Partners All rights reserved (2)

    登録制(改正資決法案63条の22の2) → 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業について登録制を採用 (3) 所属制(改正資決法案63条の22の3第1項7号等) → 特定の暗号資産交換業者等のために仲介を行う所属制を採用 (4) 行為規制(改正資決法案63条の22の7~13、 63条の22の15) → 利用者への説明義務・情報提供義務や広告規制について、暗号資産交換業者等と同様の規制 → 利用者から金銭その他の財産の預託を受けることは禁止
  22. 暗号資産等に係る事業実態を踏まえた規制のあり方 42 ⓒ Hori & Partners All rights reserved (5)

    財産的基礎 → 財産的基礎に係る参入規制は課さない ∵ 利用者財産の預託を受けない+所属制を採用 (6)AML/CFT → AML/CFTの履行義務は課さない ∵ 暗号資産交換業者等において売買に伴うAML/CFTの義務を履行
  23. 電子決済手段の種類 ⓒHori & Partners All rights reserved 44 ・ 電子決済手段

    (資決法2条5項) ① 次の要件を満たすもの a. 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用可能 b. 不特定の者を相手方として購入・売却を行うことができる財産的価値 c. 電子機器その他の物に電磁的方法により記録されている通貨建資産 d. 電子情報処理組織を用いて移転可能 e. 有価証券、電子記録債権、前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるものでないこと ※ 流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものはe.を満たす ② 次の要件を満たすもの a. 不特定の者を相手方として上記①に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値 b. 電子情報処理組織を用いて移転可能 c. 下記③に不該当 ③ 特定信託受益権 ④ 上記①~③に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの
  24. 信託型の電子決済手段(特定信託受益権)の定義 ⓒHori & Partners All rights reserved 45 ・ 特定信託受益権は次の要件を満たすもの(資決法2条9項)

    a. 金銭信託の受益権 b. 電子情報処理組織を用いて移転可能な財産的価値 c. 電子機器その他の物に電子的方法により記録されるもの d. 受託者が信託契約により受け入れた金銭の全額を預貯金により管理するものであること e. その他内閣府令で定める要件を満たすものであること(電決府令3条) ① 円建てで発行される場合: 信託財産の全部が要求払いの円建て預貯金により管理されるもの ② 外貨建てで発行される場合: 信託財産の全部が要求払いの当該外国通貨建て預貯金で管理されるもの ※ 譲渡性預金・特別国際金融取引勘定で経理された預金・預金等に係る証書が無記名式である預金は除く
  25. 特定信託受益権の発行見合い金の管理・運用方法 47 ⓒ Hori & Partners All rights reserved 【現状の課題】

    → 特定信託受益権の発行者は、信託財産のみをもって償還請求に応じる責任を負う ⇒ 信託財産が減少すると保有者が償還を受けることができる金額も減少する ⇒ 全額を健全性基準を満たす銀行等への要求払預金で管理することが必要 【見直しの方向性】 → 国際的な動向を踏まえ、特定信託受益権の発行見合い金の管理・運用方法を柔軟化 ⇒ 要求払預金以外の管理・運用方法は信用リスク・価格変動リスク・流動性リスクの低い資産の保有に限る ⇒ それらの資産の組入比率には一定の上限を設ける ⇒ 為替リスクを回避するために、電子決済手段と運用対象資産は同一通貨建てとする
  26. 特定信託受益権の発行見合い金の管理・運用方法 49 ⓒ Hori & Partners All rights reserved (1)運用対象資産

    ※ 改正法案では対象外。内閣府令で規定される見込み。 → 国債による運用を認める ∵ 信用リスクがなく、価格変動リスク・流動性リスクは限定的 ※ 外貨建ての特定信託受益権については、当面は米国債に限って認めることが考えられる → 定期預金: 健全性基準を満たす銀行等を預入先とし、かつ、満期前の中途解約が常時認められるものであれば、 要求払預金による管理方法と同程度に安全 (2)満期及び残存期間 ※ 改正法案では対象外。内閣府令で規定される見込み。 → 最も価格変動リスク・流動性リスクが低い満期3ヵ月の短期日本国債を認めることが考えられる → 満期3ヵ月超であっても、取得時点の残存期間が3ヵ月以内であれば、認めることが考えられる → 外貨建て特定信託受益権の場合の米国債は、満期及び残存期間が3ヵ月以内のものとすることが考えられる
  27. 特定信託受益権の発行見合い金の管理・運用方法 50 ⓒ Hori & Partners All rights reserved (3)信託財産減少リスクへの対応

    ※ 改正法案では対象外。内閣府令で規定される見込み。 → 国債価格の下落で信託財産が減少した場合は、信託委託者に減少分相当の追加信託義務を課す → 定期預金については、信託財産が減少しない場合に限定して認める ※ 中途解約時の解約手数料を考慮しても元本割れが生じない商品など (4)国債及び定期預金の組入比率の上限 ※ 改正法案では対象外。内閣府令で規定される見込み。 → 国債及び定期預金の組入比率の上限は50%とすることが考えられる ※ 組入比率の上限については、今後、特定信託受益権が実際に発行され、発行見合い金の管理・運用の実務データが 積み上がった段階で改めて見直しの検討をすることが考えられる