Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

2023-03-09 suzuka

2023-03-09 suzuka

Takahiro Sumiya

March 09, 2023
Tweet

More Decks by Takahiro Sumiya

Other Decks in Education

Transcript

  1. 複製 複製 上映 公衆送信 他人の著作物 説明資料 自らの著作物に部分転載 元資料の部分的なコピー 例題 ・

    参考資料など 授業においては、これらの利用の多くを、著作権者に許可を得ることなく行えるよう 「権利制限」を適用することが多い。  ・著作権法第32条(引用)  ・著作権法第35条(授業の過程における複製・公衆送信など)
  2. 著作者の権利 4 著作者の権利 著作者人格権 著作権(財産権) 公表権 氏名表示権 同一性保持権 複製権 上映権

    公衆送信権 送信可能化権 口述権 展示権 頒布権 譲渡権 貸与権 翻訳・翻案権 二次的著作物の利用に関する 原著作者の権利 (18〜20条) (21〜28条)
  3. 複製 複製 上映 公衆送信 他人の著作物 説明資料 自らの著作物に部分転載 元資料の部分的なコピー 例題 ・

    参考資料など 授業においては、これらの利用の多くを、著作権者に許可を得ることなく行えるよう 「権利制限」を適用することが多い。  ・著作権法第32条(引用)  ・著作権法第35条(授業の過程における複製・公衆送信など)
  4. チェックポイント 6 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的)

    適用可能? 許諾をとる / あきらめる YES YES YES NO NO NO □ 著作物か? □ 保護期間内か? □ ライセンスがあるか? □ 公表された著作物? □ 公正な慣行に合致? □ 正当な範囲内? □ 基本的な要件をみたす? □ 必要な限度内? □ 著作権者の利益を不当に害さない? OK 利 用 https://youtube.com/playlist?list=PLA4qVXmVfic6gnUalSeFkH63_X8jgJIWD 教育著作権の基礎 利 用 OK 授 業 利 用 OK
  5. 著作物かどうか ‣ 著作物=思想や感情を創作的に表現したもの ‣ 人が創作するもののほとんどは著作物と考えた方がよい ‣ 著作物でないと考えられるもの(他の法律で保護されるものもある) ✓ 事実そのものやアイデアは著作物ではない ✓

    誰が表現しても同じようになるものは著作物ではない ✓ 工業製品の外観などは著作物ではない ‣ 法律等の条文や裁判所の判決文等、著作権法では保護されない 7
  6. 保護期間内か ‣ 著作者の死後70年(死亡翌年の1/1から70年間)保護 ✓ 映画の著作物や無名の著作物は、公開後70年 ‣ 著作権(財産権)は遺族に相続される ✓ 生前他者に譲渡されていることもある ‣

    著作者人格権は死亡時に消滅 ✓ 消滅するが、侵害と思われる行為はしてはならない ‣ 法人著作は発表後70年保護 ‣ 第2次世界大戦の交戦国の著作物には10年程度の「戦時加算」 8
  7. 著作権の存続期間の算出(日本人の場合) ‣ 著作者の生存中と,死後70年間(50条) 9 1970/mm/dd 1971/1/1 2040/12/31 … 70年 ※

    2018年までは死後50年だった… 1. 亡くなった年に50を足す 2. 2017以下なら,その年の12/31までが存続期間 3. 2018以上ならばもう20足した年の12/31までが存続期間
  8. 日本が第二次世界大戦で交戦していた国に対しては、 「戦時加算制度」があるので注意 10 ※相手国により、戦争期間は異なる 1900 1920 1940 1960 1980 2000

    2020 2040 アーネスト ・ ヘミングウェイ (1899-1961) グレン ・ ミラー (1904-1944) コルトレーン (1926-1967) 1994 2011 2017 2005 2041 戦争期間 3794 日 1941.12.8-1952.4.28 2018年末に、保護期間が死後50年から70年に延長されたので、なおさらややこしい… 連合国の国民の著作物は、戦争期間中日本で保護されてなかったはず、という前提
  9. ライセンスがあるか ‣ この場合のライセンス=「この範囲で利用可」と宣言・許諾するもの ✓ 利用者が著作権者に依頼する ✓ 著作権者があらかじめ宣言する ‣ Webに無料公開されていても、教材に再利用可能とは限らない ✓

    原則は、ライセンス宣言がなければ「許諾が必要」 ‣ ライセンスのはっきりした素材を利用しましょう ✓ Creative Commonsとか ✓ pexels, 看護roo!, いらすとや, ジブリ などなど ✓ Wikimedia (Wikipedia) は結構あやしい 11
  10. Creative Commons 12 Copyrighted 全ての権利を主張 Public Domain 全ての権利を放棄 Creative Commons

    作品の再利用を許しつつ、 いくつかの権利を主張 表示 (BY) 作品のクレジットを表示すること 非営利 (NC) 営利目的での利用をしないこと 改変禁止 (ND) 元の作品を改変しないこと 継承 (SA) 元の作品と同じライセンスで公開すること https://creativecommons.jp
  11. 32条(引用)適用可能? 13 公表された著作物 公正な慣行に合致 正当な範囲(必要最小限) ‣主従関係 ‣明瞭な区別 ‣出所の明示 ‣原型を保持 ※

    翻訳しての引用は可 ※ 学術論文やレポートなどでの「引用」とはやや異なる ※ 適法な引用となれば,一般公開や販売も可能 ʢҾ༻ʣ ୈࡾेೋ৚ɹެද͞Εͨஶ࡞෺ ͸ɺҾ༻ͯ͠ར༻͢Δ͜ͱ͕Ͱ͖ Δɻ͜ͷ৔߹ʹ͓͍ͯɺͦͷҾ༻ ͸ɺެਖ਼ͳ׳ߦʹ߹க͢Δ΋ͷͰ ͋Γɺ͔ͭɺใಓɺ൷ධɺݚڀͦ ͷଞͷҾ༻ͷ໨త্ਖ਼౰ͳൣғ಺ ͰߦͳΘΕΔ΋ͷͰͳ͚Ε͹ͳΒ ͳ͍ɻ
  12. 「引用」の適用ができるかどうかは結構重要 → 「引用」の範囲で使っていれば,オープンにできる ‣ 適法な引用になるか判断が難しい ✓ 権利者と利用者で相当のギャップ ✓ 専門家でも言うことが結構違う ‣

    資料だけで引用にならない場合も ✓ 講師の説明が主で資料が従 ✓ 講義動画ならOKでもLMSでの資料だけの掲示が微妙な場合も(引用にならなくても授業利用にはなりう る) 14
  13. 権利制限 35条授業目的の複製・公衆送信など 15 第三⼗五条 学校 他 教育機関(営利 ⽬的 設置 除 。) 教育

    担任 者及 授業 受 者 、 授業 過程 利⽤ 供 ⽬的 場合 、 必要 認 限度 、公表 著作物 複製 、若 公衆送信(⾃動公衆送信 場合 、送信可能化 含 。以下 条 同 。) ⾏ 、⼜ 公表 著作物 公衆送信 受信装置 ⽤ 公 伝達 。 、当該著作物 種類及 ⽤途並 当該複製 部数及 当該複製、公 衆送信⼜ 伝達 態様 照 著作権者 利益 不当 害 場合 、 限 。 具体的な解釈が難しい→「運用指針」が公開されています
  14. 「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」で,35条解釈のガイドラインを策定。 16 改正著作権法第35条運用指針 (令和3(2021)年度版) https://forum.sartras.or.jp/info/005/ ① 複製 ② 公衆送信 ③

    学校その他の教育機関 ④ 授業 ⑤ 教育を担任するもの ⑥ 授業を受けるもの ⑦ 必要と認められる限度 ⑧ 公に伝達 ⑨ 著作権者の利益を不当に害する こととなる場合 「用語定義」+事例
  15. 35条の改正 → 授業目的公衆送信補償金制度 17 旧35条 第1項 要件を満たせば、 授業目的の複製は 無許諾で可 第2項 遠隔合同授業等の場合、

    授業目的の公衆送信は 無許諾で可 改正35条 第1項 要件を満たせば、授業目的の 複製・公衆送信・公の伝達は 無許諾で可 第2項 上記の公衆送信を行う場合は、 「教育機関の設置者」が 補償金を著作権者に支払う 第3項 遠隔合同授業等の場合、 授業目的の公衆送信は 補償金不要 2015年から議論 2018年5月25日公布 2020年4月28日施行 補償金(授業目的公衆送信補償金)の扱いについては104条の11〜17
  16. 役割を再確認 ‣ 補償金の管理団体 ✓ 著作権管理団体の協議会が母体 ✓ 補償金制度の設計 ✓ ライセンス制度の設計 ‣

    中立の「意見交換の場」 ✓ 教育機関と著作権管理団体が同数の委員を ✓ 有識者も参加。関係省庁も出席 ✓ 35条運用指針(ガイドライン)を策定 21 SARTRAS フォーラム 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム 授業目的公衆送信補償金等管理協会
  17. 「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」で,35条解釈のガイドラインを策定。 22 改正著作権法第35条運用指針 (令和3(2021)年度版) https://forum.sartras.or.jp/info/005/ ① 複製 ② 公衆送信 ③

    学校その他の教育機関 ④ 授業 ⑤ 教育を担任するもの ⑥ 授業を受けるもの ⑦ 必要と認められる限度 ⑧ 公に伝達 ⑨ 著作権者の利益を不当に害する こととなる場合 「用語定義」+事例
  18. 著作権法第35条運用指針の主な内容 用語 授業目的公衆送信補償金制度の対象の例 授業目的公衆送信補償金制度の対象外の例 公衆送信 サーバへの掲載/電子メールでの一括送信 (履修生以外にもアクセスできるようなもの) 授業 単位の出る授業/教員免許状更新講習/公開講座 (規模の制限あり)/履修証明プログラム

    ※予習,復習は「授業の過程」とする 大学説明会,オープンキャンパスでの模擬授業など /FD,SD/サークル活動/自主的なボランティア 活動 教育を担任する/授業 を受ける者 教授,講師など(名称,雇用形態は問わない)/学 生,科目等履修生など(実際に学習するもの)/事務 職員など教育支援者,補助者 (支援業者に依頼するもの) 必要と認められる限度 例示なし ※必要性は授業担当者が判断,主観のみ でなく客観的に説明できること 文献情報を示せば足りるような参考資料の複製・ 公衆送信 著作権者の利益を不 当に害する場合 ※ 多くの記述がある ので「運用指針」を参 照のこと 不当に害する可能性が低い例 受信者の数は履修生の数まで/新聞の一つの記事 /テレビ番組を投影しているところを録画して送信 /一報の論文全部。ただし,発行後相当期間が経っ ているなどいくつかの条件あり 不当に害する可能性が高い例 放送から録画した映画や番組の全体/授業を履修 する学生の数を超える利用/試験対策問題集など 学生購入を前提としたもの/小部分の複製を繰り 返し,結果として大部分になる 括弧書きは,運用指針には直接の記載がないもの 「教育のDXを加速する著作権制度」(文化庁) p.14 を改変, 2021/01/29, オンライン説明会 https://sartras.or.jp/educationcopyright/
  19. 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」 ‣ 著作物の種類 ‣ 著作物の用途 ‣ 複製の部数・公衆送信の受信者の数 ‣ 複製・公衆送信・公の伝達の態様 24

    、当該著作物 種類及 ⽤途並 当該複製 部数及 当該複製、公衆送信⼜ 伝達 態様 照 著作権者 利 益 不当 害 場合 、 限 。
  20. 具体的に考えてみる ‣ 公開されたデータを自分でグラフ化する→OK ‣ 公開されているグラフ→グレー〜NG ‣ 説明図などの借用→一般的にはNG ‣ 説明図などを「その作者が公開してる」ことを伝えたい→引用になる可能性 ‣

    書影, Webサイトのスクリーンショット→紹介のためなら、引用になる可能性 ‣ 実験器具の写真→自分で撮影したものならOK (メーカーの許諾不要) ‣ 他人の撮影:カタログ的な写真はOK(正面から単純に撮影したものなどは著作性なし) ‣ 他人の撮影:利用場面の写真はたぶんNG(利用している人の肖像権の問題なども配慮) 25
  21. (おまけ)よくある質問 ‣ テレビ番組の録画をZoom/Teams会議で共有してもよいですか? ‣ 映画のワンシーンを動画ファイルとしてLMSに掲載しても良いですか? ‣ 絶版の本を複製して共有しても良いですか? ‣ 授業で論文1本を共有しても良いですか? ‣

    授業で使った資料を一般の講演会で使っても良いですか? ‣ 教員が知らないうちに,学生が著作権を侵害するものをLMSの掲示板に載せてしまった。 誰に責任がありますか? ‣ 授業目的の公衆送信は,授業が終わったら止めなければならないですか? 27
  22. (おまけ)よくある誤解 ‣ 出典さえ書けば,著作権法上の「引用」になる ‣ 学術論文の図表は「引用」できない ‣ 教員が補償金を払わなければならない ‣ 補償金を支払っていない大学の授業で公衆送信をすると,著作権侵害になる ‣

    SARTRASに参加している著作権管理団体のもの以外は使えない ‣ インターネットで無料公開されている資料はこの制度とは関係ない ‣ 外国の著作物は使えない ‣ SARTRASは新しい天下り団体だ 28
  23. 関連URL ‣ 教育用著作物ネット配信制度 ‣ 著作権法条文 (e-GOV) ‣ 授業目的公衆送信補償金制度のオンライン説明会 ‣ 改正著作権法第35条運用指針(2021年度版)

    29 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/92223601_01.pdf https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048 https://sartras.or.jp/entrance/ https://forum.sartras.or.jp/info/005/