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著作権と授業に関する出前講習会/dme-2025-05-01

 著作権と授業に関する出前講習会/dme-2025-05-01

AXIES出前講習会
2025-05-01
新潟経営大学

Takahiro Sumiya

April 30, 2025
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Transcript

  1. ͘͢͝Θ͔Δஶ࡞ݖͱतۀWeb/AXIES/CC BY 4.0 著作権の基本的な考え方 ‣ アイデアとか考え方は著作物ではなく、個別の「表現」が著作物になる ✓ これは著作物なのか? ‣ 著作権は自然に発生するが、作品を使うことに関するすべてに及ぶわけではない

    ✓ この使い方は著作権で保護されているものなのか? ‣ 状況によって権利が制限される場面がある ✓ この使い方は、著作者に無断で行えるものではないか? 4 これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、 著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展 に寄与することを目的とする。
  2. アイデアとか考え方は著作物ではなく、個別の「表現」が著作物になる 5 この法律にいう著作物を例 示 すると、おおむね次のとおりであ る。 一 小 説、脚本、論 文 、講演その他の

    言 語の著作物 二 音 楽の著作物 三   舞踊 又 は無 言 劇の著作物 四   絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 五   建築の著作物 六   地図 又 は学術的な性質を有する図 面 、図表、模型そ の他の図形の著作物 七   映画の著作物 八  写真の著作物 九   プログラムの著作物 (著作権法第10条) 思想 又 は感情を創作的に表 現したものであつて、 文 芸、学術、美術 又 は 音 楽の 範囲に属するものをいう (著作権法第2条)
  3. 著作物とはみなされないもの ‣ 「表現」でないもの - アイデア、設定、画風 ✓ 小説・漫画の世界観やキャラクターなど ✓ 4コマ漫画というアイデアとか〇〇風の絵 (←AI問題で最近微妙だが)

    ‣ ごく短いもの ✓ タイトルや登場人物の名前など ‣ 誰が表現しても同じようになるもの、事実そのもの ✓ 数式、データ、デフォルト設定のままのエクセルのグラフなど ‣ 文芸、学術、美術又は音楽の範囲ではないもの ✓ フォント、工業製品の外観など 6
  4. 著作権は多くの種類の権利の束 8 著作権 実演家の権利 著作者の権利 著作者人格権 著作権(財産権) レコード製作者の権利 放送事業者の権利 有線放送事業者の権利

    公表権 氏名表示権 同一性保持権 複製権 上映権 公衆送信権 送信可能化権 口述権 展示権 頒布権 譲渡権 貸与権 翻訳・翻案権 二次的著作物の利用に関する 原著作者の権利 実演家人格権 著作隣接権
  5. 著作権は多くの種類の権利の束 9 著作権 実演家の権利 著作者の権利 著作者人格権 著作権(財産権) レコード製作者の権利 放送事業者の権利 有線放送事業者の権利

    氏名表示権 同一性保持権 録音・録画権 送信可能化権 放送権・有線放送権 譲渡権 貸与権 (録音された場合) 実演家人格権 著作隣接権
  6. 権利制限について ✓ 私的使用のための複製(第30条) ✓ 付随対象著作物の利用(第30条の2) ✓ 著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用(第30条の4) ✓ 図書館における複製(第31条) ✓

    引用(第32条) ✓ 授業の過程における複製と公衆送信(第35条) ✓ 非営利の上演・演奏・上映・口述(第38条) ✓ 公開の美術の著作物等の利用(第46条) 10 権利の保護だけでは、公正な利用が円滑にできないため、 さまざまな「権利制限」が法律で設定されている
  7. 権利制限 35条授業目的の複製・公衆送信など 12 第三 十 五条   学校 他 教育機関(営利 目

    的 設置 除 。) 教育 担任 者及 授業 受 者 、 授業 過程 利 用 供 目 的 場合 、 必要 認 限度 、公表 著作物 複製 、若 公衆送信( 自 動公衆送信 場合 、送信可能化 含 。以下 条 同 。) 行 、 又 公表 著作物 公衆送信 受信装置 用 公 伝達 。 、当該著作物 種類及 用 途並 当該複製 部数及 当該複製、公 衆送信 又 伝達 態様 照 著作権者 利益 不当 害 場合 、 限 。
  8. 公衆送信 13 公衆によつて直接受信されることを 目 的として無線通信 又 は 有線電気通信の送信を 行 うこと(第2条7の2)

    特定かつ多数のものを含む (=不特定または多数) ‣ 放送・有線放送 ‣ 自動公衆送信 ‣ 手動
  9. 学校での他者著作物の複製・公衆送信が、許諾なしにできるためには:  □ 公表された著作物ですか?  □ 授業の過程での利用のために行うものですか?  □ 授業を担当するもの、または受けるものが行いますか?  □ 必要な限度内ですか?  □

    著作権者の利益を不当に害しませんか?  □ (出所を明示していますか?) 14 出所を明示する慣行がある場合は、出所表示も「必要」 (著作権法48条) ͘͢͝Θ͔Δஶ࡞ݖͱतۀWeb/AXIES/CC BY 4.0 必要な場合は、翻訳、編曲、変形又は翻案しての利用も可 (著作権法47条の6) 何でもOKなわけじゃない!
  10. 32条(引用)適用可能? 15 (引 用 ) 第三 十二 条   公表

    著作物 、引 用 利 用 。 場 合 、 引 用 、公正 慣 行 合致 、 、報道、 批評、研究 他 引 用 目 的上正当 範囲内 行 。
  11. 演奏と配信 21 スタジオなどで演奏 ※ 非営利のイベントで、入場無料、出演者が無報酬の場合は権利制限(38条) 他者の楽曲を 公に演奏  公に再生(演奏) 他者の実演の録音を 演奏動画を撮影

    YouTubeへ投稿 視聴者が動画を再生 演奏権 対象外 複製権 複製権 公衆送信権 送信可能化権 送信可能化権 作詞・作曲家の権利  実演家の権利 演奏権 非営利→権利制限※ 演奏権 営利 演奏権 非営利→権利制限※ 演奏権 営利 録音・録画権 録音・録画権
  12. JASRACとYouTube配信については、まずこちらを見ましょう https://www.jasrac.or.jp/info/network/pickup/movie.html ‣ JASRACは多くの曲の複製、演奏、公衆送信などの権利を管理して いる ‣ 自ら演奏・録画したものは手続き不要で配信できる ✓ CDやサブスクの著作隣接権はJASRACでは扱っていない ‣

    以下の場合は手続きが必要 ✓ 広告や宣伝を目的とする動画を配信する場合 ✓ 外国曲を含む動画を、個人以外のアカウントで配信する場合 • 個人以外=法人や学校、団体・グループなど ✓ 上記の場合でも、リアルタイム配信のみの場合は手続き不要 22
  13. 必要な場合は著作権料を支払って利用すればよい (外国曲を使う場合は結構面倒です) ‣ JASRAC管理曲かどうかJ-Widで検索 ✓ https://www2.jasrac.or.jp/eJwid/ ‣ 利用料金シミュレーション ✓ https://www.jasrac.or.jp/info/

    ✓ ライブの場合 1. 公演1回ごとの使用料 •総入場料算定基準額(入場料×定員数×80%)×5%+消費税相当額 2. 1曲1回5分までの使用料 •総入場料算定基準額(入場料×定員数×80%)×0.5%+消費税相当額 23 https://www.jasrac.or.jp/info/create/calculation/concert/event.php
  14. Webに無料公開されていても、再利用可能とは限らない ライセンスを確認! ‣ Webに無料公開されていても、再利用可能とは限らない ✓ 原則は、ライセンス宣言がなければ「許諾が必要」 ‣ この場合のライセンス=「この範囲で利用可」と宣言・許諾するもの ✓ 利用者が著作権者に依頼する

    → ライセンスをもらう ✓ 著作権者があらかじめ宣言している → ライセンスを確認する ‣ ライセンスのはっきりした素材を利用しましょう ✓ Creative Commonsとか ✓ pexels, 看護roo!, いらすとや, ジブリ などなど ✓ Wikimedia (Wikipedia) は結構あやしい 25
  15. Creative Commons 26 Copyrighted 全ての権利を主張 Public Domain 全ての権利を放棄 Creative Commons

    作品の再利用を許しつつ、 いくつかの権利を主張 表示 (BY) 作品のクレジットを表示すること 非営利 (NC) 営利目的での利用をしないこと 改変禁止 (ND) 元の作品を改変しないこと 継承 (SA) 元の作品と同じライセンスで公開すること https://creativecommons.jp
  16. 「フリー素材」にも注意が必要 ‣ 近年、自治体や教育機関の不正利用案件が増えている ✓ https://mainichi.jp/articles/20181105/k00/00m/040/130000c ✓ https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ 8d0e861195f793a0448d52c72446f6ed48cba6a4 ‣ 「フリー素材」のイラストや写真を検索した場合

    ✓ 検索結果のページから安直にコピーしない ✓ 配布ページまで行って、ライセンスを確認 ✓ 透かしが入ってるものを使わない ‣ Wikipedia (Wikimedia)やOf fi ceのオンライン画像も注意 28
  17. 生成AIと著作権 ‣ 生成AIは使い方によって は「コピーマシン」になる ‣ 既存著作物に似たものを 「作らせた」場合は、複製 ‣ たまたま似たものができた 場合も「似てるな」と認識し

    たら複製 ‣ 知らずに似てるものができ てしまった場合は… 34 学習済みモデル 著作物など 学習 XXXについておしえて プロンプト AI生成物 生成 ・ドラえもん書いて ・この写真の女性の服を替えて ・この文章を翻訳して
  18. 生成AIと著作権: 著作権法上どういう問題が起こりうるか ‣ AI生成物は著作物ではないが、著作物の「複製」の可能性はある ‣ 既存著作物に類似のものが生成され、無断利用されたとき   →複製権侵害の可能性 ✓ 類似性、依拠性 ‣

    使う際には: ✓ プロンプトに既存著作物を入れない ✓ 既存著作物を複製するようなプロンプトを指定しない ✓ 生成物が(自分が知っている)既存著作物に似ていないか注意 ✓ 公開などする場合:「侵害の指摘」に備える 35
  19. 著作権出前講習会 by AXIES この講習会の講師派遣は、 授業目的公衆送信補償金等管理協会 (SARTRAS) の 共通目的基金の助成を受けて 大学ICT推進協議会 (AXIES)

    が行っています。 著作権出前講習会のアンケート(匿名、4問)にご協力お願いします。 https://forms.gle/R8t9Gp3TLBaTYMXt7