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感染症の数理モデル13

 感染症の数理モデル13

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Daisuke Yoneoka

May 14, 2025
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  1. 目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5.

    人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R 0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 13. 致死率の計算 14. (シンプルな)ワクチン接種の自然史と流行条件 15. ワクチン接種VEの推定 16. 従属性現象における因果推論 17. ワクチン接種戦略について 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48
  2. ワクチン接種の集団への効果推定 • 従属性現象:個人への効果 ≠ 集団への効果(両者の関係はめっちゃ非線形かもね ) • さて現実的な設定で考えましょう、JIHSですしね。 82 新型インフルが流行した。

    1.どれくらいワクチンを生産すればいいか? 2.ワクチン接種は何回すべきか?1 or 2回? 3.ワクチン接種はどういった人から始めるか? 4.流行途中にワクチン接種を開始する場合、そ れにより、どういう効果がでるのか? 推定するなら早くしろ でなければ帰れ 制約条件 1. ワクチン製造のキャパシティには限界(年5000万人分程度)がある 2. 他のワクチンは今もつくっている 注:あくまでイメージ 新世紀エヴァンゲリオンより抜粋
  3. まずは情報収集です • 必要な疫学データは以下 • あとは、潜伏期間や世代時間の分布型なども必要 83 次世代行列 R ij は個体群jの一人が生み出した個体群iの2

    次感染者数の平均値 i, j = 1は20歳未満、2は20歳以上 ←横のRはこのKのスペクトル半径(=最大固 有値) これはどうやって取るのか? → 1つは血清疫学調査。全感染者のうち何%が報告されたかもわかる
  4. (再掲)ワクチン接種者の感染史 • 感染してから死亡 or 回復まで 84 ワクチン未接種者 ワクチン接種者 たいてい、 AとCがよく質問され

    るよね。 感受性の減弱効果 感染性の減弱効果 症状発現確率の減弱効果 感染期間の短縮効果 注意:発症しても死亡したり重 症化したりする確率が減弱する 効果も含む
  5. ワクチンの回数 • 1回でもしOKなら(2回に比べて)倍の人口をカバーできる 数理的問題:1回 vs 2回の集団レベルでの効果を比較 87 これは2回接種の効果とする。1回の場合は これのf倍 (f≤1)

    つまり、1回接種だと 感受性の減弱効果はfα s 感染性の減弱効果はfα i fがどれくらいかは血清疫学調査などで見積 もっておく
  6. ワクチンの優先度 • (インフルだとして) 基礎疾患の多い高齢者に優先的に打つべき? • 流行の中心である若年層に打つべき? 90 最初の年齢別次世代行列 R ij

    は個体群jの一人が生み出した個体群iの2次感染者数の平均値 i, j = 1は20歳未満、2は20歳以上 クロネッカー積は、固有値に関し ては可換なので、逆でもいいよ ↑この行列の要素をR ij 個体群iの最終規模z i これはclosed formな解ではなく、数値計算で解を計算する これは、ワクチン接種と非 接種者の間の次世代行列