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感染症の数理モデル12

 感染症の数理モデル12

Daisuke Yoneoka

April 09, 2025
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  1. 目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5.

    人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 13. 致死率の計算 14. (シンプルな)ワクチン接種の自然史と流行条件 15. ワクチン接種VEの推定 16. 従属性現象における因果推論 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48
  2. ワクチン接種の効果VE (vaccine efficacy) • ワクチン接種者の発病割合は 56/(56+10322) = 0.0054 • ワクチン未接種者の発病割合は

    272/(272+8664) = 0.00304 • VEは1-RR(Relative risk)で以下のように定義される • ちなみに、独立性の検定(χ2検定)では、p<0.01でワクチン接種と発病リスクには何らかの 関連があるという示唆 76 重要な仮定 1. 対象とする感染症 は定常状態にあり, 感染頻度は時刻に依存しない 2. ある個体の観察はほかの個体の観察 と独立であること(従属性現象が当 てはまらないこと). 仮定2はかなり怪しくないですか?
  3. 従属性現象における(個体レベルの)因果推論 • 個人iが感染したらXi =1、しなかったらXi =0 • ワクチン未接種者の反応変数をX0 、接種者をX1 • 従属性がなければ、ワクチン接種の平均的効果(ATE:

    average treatment effect) • ワクチン接種するかどうかのindicator: ワクチン接種 Y=1、未接種 Y=0 • 多くの因果推論ではT= A が成立するが、従属性があるのでT≠A (これが問題) 78 観測されるのはこれ ほんとに推定したいのはこれ 感染症の研究においては、シンプルにリスク比 や寄与危険度の計算を用いるとバイアスが入る じゃあどうするか?→ 条件付き因果効果 (CTE: conditional treatment effect)の推定
  4. (個体レベルの)条件付き因果効果 (CTE) • 感染者への接触(曝露)に対して条件付けて推定すればいい • 複雑な「従属性の仕組み」の一部分を「曝露の有無」としてコントロール可能 • 「この人は確実に感染者と接触した」という条件を課すことで、少なくとも「接触の機会(曝露)」と いう要因はワクチン接種者と未接種者で同一に扱える •

    感染者との接触 K+、接触がない場合 K- • 普通にやると推定できないので、接触に条件付ける ワクチン接種および未接種者の感染リスクの期待値を「接触を経験した集団」のみで検 討する • 更に、ワクチン接種にも条件付ける 79 条件付き直接因果効果 これは観測できる これは観測できない あえて、Yをベクトルで書いているのは、ある人の接 触は他の全員のワクチン接種歴に依存するから
  5. 接触者だけのデータなんてどこにあんの? • 家庭内伝播のデータ • 家庭内二次発症割合(SAR: socondary attack rate) • SARij:

    最初の持ち込み者のワクチン接種歴 j (0 or 1)と残りのワクチン接種歴 i 80 感受性の減弱効果(要は曝 露受けたときにどれだけワ クチンで防げるか?) 感染性の減弱効果(要は ワクチンでどれだけ二次 感染者が減らせるか?) 統合して
  6. ワクチン接種者の感染史 • 感染してから死亡 or 回復まで 81 ワクチン未接種者 ワクチン接種者 たいてい、 AとCがよく質問され

    るよね。 感受性の減弱効果 感染性の減弱効果 症状発現確率の減弱効果 感染期間の短縮効果 注意:発症しても死亡したり重 症化したりする確率が減弱する 効果も含む