Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

図書館における情報技術 / Information Technology in Library

Masao Takaku
September 06, 2019

図書館における情報技術 / Information Technology in Library

Masao Takaku

September 06, 2019
Tweet

More Decks by Masao Takaku

Other Decks in Education

Transcript

  1. 情報社会におけるICTの役割 • 遠隔からでも優れたサービスやコンテンツを 使える 学習、娯楽、購買(Eコマース) 検索 SNS、コミュニケーション • → AIDA

    (Attention, Interest, Desire, Action) から AISAS (Attention, Interest, Search, Action, Share) へ • 組織を効率的に運営する 情報をまとめておく 同期的・非同期的なコミュニケーション データに基づく運営 • PDCA:データ収集 → 分析 → 行動 → … 5
  2. 情報社会の現況 • インターネットの普及:10代から50代まで9割以上の 普及率[総務省,2019] • 端末の多様化:スマートフォンが市場シェアの過半数を 占めてから、まだ6~7年ほど… [総務省,2019] • 電子コンテンツの普及:電子書籍の市場規模は2,800億

    円超(紙媒体の2割弱)[インプレス総合研究所,2019] • 最近の話題  IoT、AI  デジタルアーカイブ、オープンデータ ※出典: 総務省 (2019). 令和元年度情報通信白書. インプレス総合研究所 (2019). 電子書籍ビジネス調査報 告書2019. 6
  3. 図書館における情報技術の役割 (1) • 情報の拠点としての図書館 場として • ネットワークアクセスを提供する – 今や、インターネットアクセスは市民が情報アクセスするた めの必須の情報インフラとして、そのための環境を提供する

    – 館内インターネット端末、無線LAN(WiFi)など サービスとして • コンテンツ、資料を提供する – 学習、調べもの、コミュニティ発信 – 最新の情報を活用するための電子コンテンツや学習コンテン ツ、調べものができる環境を提供する – 商用データベースや網羅的な探索ができる環境を提供する – 地域資料等を電子化したデジタルアーカイブを提供して、効 率的な資料調査に資する環境を整える 7
  4. 図書館における情報技術の役割 (2) • 図書館自体の発信ツールとして  ウェブを通じた発信、SNSを通じたコミュニケーショ ン • ウェブの環境下で信頼できる情報を自ら発信する •

    図書館サービスを発信する、SNS等のコミュニティを通じて幅 広い利用者層にリーチする  図書館間ネットワーク(連携) • 他の図書館との相互利用、相互貸出や複写利用サービス等、利 用者のニーズに応じて連携可能な情報を発信する • 場合によっては、外部の機関を紹介等して、ニーズに応える  間接サービス(目録、知識データベース) • 利用者のニーズに応えて、必要な調べものができる所蔵情報を データベース化、整備しておく • 場合によっては、地域資料の索引化や展示情報のキュレーショ ン、ブックリスト等をまとめて提供できるようにしておく 8
  5. 検索クエリ 適合文書 集合 検索結果 (ランキング) 情報要求 情報検索システム 文書集合 伝統的な情報検索モデル 検索クエリ?

    情報要求 探索目標 Webにおける動的な情報探索モデル Web サービス サービス サービス 19
  6. Googleサーチエンジンにおける 検索キーワードランキング 1. 天気 2. 東京 3. 漫画 4. ヤフー

    5. youtube 6.ニュース 7.モンスト 8.映画 9.楽天 10.京都 20 出典:Google トレンド (2018年) https://trends.google.co.jp/trends/ explore?date=2018-01- 01%202018-12-31&geo=JP
  7. 情報検索のタスク分類例 (1) • ウェブ検索エンジンにおけるタスク [Broder,2002] ※質問紙調査 + ログ分析  情報収集

    Informational  ナビゲーション Navigational  トランザクション(買い物)Transactional • クエリのトピック [Kamvar,2006] ※ログ分析  ローカルサービス、芸能・エンタメ、コンピュータ・ 技術、旅行・趣味、インターネット・通信、アダルト、 スポーツ、飲食、健康・美容、社会、自動車、ショッ ピング・消費サービス、ライフスタイル・コミュニ ティ、ゲーム、ニュース・時事、投資・保険、芸術・ 文芸、趣味、産業、家庭・園芸、科学、不動産、ビジ ネス (23カテゴリ) 21
  8. 情報検索のタスク分類例 (2) • 情報利用のための多様なタスク [Kellar,2007] ※ダイアリ法 事実発見 Fact finding 情報収集

    Information gathering ブラウジング Browsing (巡回) Monitoring トランザクション Transaction 22
  9. 情報要求とユーザタスクの次元 • 情報探索のステージ [Kuhlthau, 2004] 探索テーマの模索、テーマの選択、探索、テー マの確定、情報の収集、探索終了 • タスクの複雑さ [Liu,

    2012] 情報の規模、範囲、種類、信頼性、タスクのあ いまいさ、変化の度合い、作業内容の複雑さ、 時間的制約 • ユーザ特性 [高久, 2010][南, 2016] 探索スキル(戦術、方略) ドメイン知識 etc. 23
  10. 4. オープンデータの潮流 • 公的機関における活用から、民間活用へ • もともとは Open Government Data Data.gov

    Data.gov.uk • 地方自治体 オープンデータシティ(鯖江市、横浜市など) • 国の政策的展開 官民データ活用推進法 データ公民連携, オープンイノベーション 政府標準利用規約(第2.0版)※CCライセンス準 拠 25
  11. オープンデータとライセンス • 「オープン(Open)」の意味 無償利用 非営利使用 加工、再利用 • Creative Commons (CC)

    ライセンス  権利者表示 (BY) (+継承) - Share Alike (SA) (+非商用) - Non Commercial (NC) (+改変禁止) - No Derivatives (ND) • パブリックドメイン(public domain) 27
  12. 5. 情報セキュリティと 安全な情報システム • インターネットの普及に伴って、悪意ある情報技術 の利用、情報の漏洩、事件、事故などがみられるよ うになってきている • 悪意あるものであるかを問わず、こうした事案は、 セキュリティ・インシデント(security

    incident) と呼ばれる • 公共図書館には不特定多数の利用者が存在し、特に 図書館利用の情報には個人の思想や信条等の機微情 報を含むと考えられるため、インシデントを予防し て、被害の拡大を防ぐ対策が求められる • ここでは特に、ネットワークを通じたセキュリティ の考え方をいくつか挙げる 29
  13. セキュリティの3要素 • セキュリティを担保して、安全な情報管理を実現す るための要素として、以下の3要素がよく知られる  機密性 • 不正アクセスや情報の漏洩を防ぐ  完全性

    • 情報の正確性やソフトウェアの整合性を担保する  可用性 • システムやサービスが利用できる状態を保つ • また、セキュリティと情報サービス水準の確保は、 トレードオフ(天秤状態)となることが多いことに 注意が必要  組織、人、物理的対策、技術的対応の4つの側面から、 インシデント予防策と事後対応を検討しておくことが もっとも重要 30
  14. セキュリティ対策 • 組織的側面 セキュリティポリシー • ローカルレベルと上位組織レベル等 • 関連組織との連携性 • 人的側面

    認証、情報アクセスの範囲、情報の格付け 研修や教育体制 • 物理的側面 物理的に触れる場所や範囲、保存メディアの管理 • 技術的側面 アンチウィルス等の防御システム、検知システム 31
  15. ネットワーク経由のインシデント例 Librahack事件 • 2010年頃、とある利用者が開発した、岡崎市 立図書館のOPACシステムへの検索を自動実行 する独自プログラムがシステム障害を発生 • システム障害を契機として、警察への被害届 へと進み、この利用者が業務妨害容疑により 逮捕された事件(起訴猶予処分)

    システム側の不備と対応策の不手際により、ネッ トワーク経由のインシデントへの対応を誤った ケースとみられる ネットワークプロバイダーやCSIRTと呼ばれる ネットワーク管理者への相談、問合せが重要 33
  16. まとめ • 図書館サービスの発信や利用者コミュニティ とのコミュニケーションを図れる基盤として、 情報技術を活用することが有用 • 情報の拠点としての図書館の役割を考えた時 に、多様な情報源と情報技術の活用は今後、 ますます重要となってくる •

    ネットワーク経由のアクセス経路を増やすこ とにより、来館利用者と同等に、非来館型の 利用者に向けたサービスを強化していくこと ができる • 先進的なサービスとして、オープンデータや デジタルアーカイブ等の外部情報探索サービ ス連携が進んでいる 34
  17. 参照文献 • [Broder,2002]  Andrei Broder. A taxonomy of web

    search. SIGIR Forum, Vol.36, No.2, pp.3-10, 2002. https://doi.org/10.1145/792550.792552 • [Kellar,2007]  Melanie Kellar, et al. A field study characterizing Web-based information- seeking tasks. Journal of the American Society for Information Science and Technology, Vol.58, No.7, pp.999-1018, 2007. https://doi.org/10.1002/asi.20590 • [Kuhlthau, 2004]  Carol Kuhlthau. Seeking meaning : a process approach to library and information services. 2nd Edition. Libraries Unlimited, 2004, 247p. • [Liu, 2012]  Peng Liu, Zhizhong Li. Task complexity: A review and conceptualization framework. International Journal of Industrial Ergonomics, Vol.42, No.6, 2012, pp.553-568. https://doi.org/10.1016/j.ergon.2012.09.001 • [Kamvar,2006]  Maryam Kamvar, Shumeet Baluja. A large scale study of wireless search behavior: Google mobile search. Proceedings of SIGCHI 2006. pp-701-709, 2006. https://doi.org/10.1145/1124772.1124877 • [高久, 2010]  高久雅生ほか. タスク種別とユーザ特性の違いがWeb情報探索行動に与える影響: 眼球 運動データおよび閲覧行動ログを用いた分析. 情報知識学会誌, Vol.20, No.3, pp.249-276, 2010. https://doi.org/10.2964/jsik.20-026 • [南, 2016]  南友紀子ほか. ウェブ環境における情報検索スキル. 日本図書館情報学会誌, Vol.62, No.3, pp.163-180, 2016. https://doi.org/10.20651/jslis.62.3_163