Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

Agentic AI による新時代の IBP (Intelligent Business Pl...

Agentic AI による新時代の IBP (Intelligent Business Planning)

Agentic AI による新時代の IBP (Intelligent Business Planning)

Avatar for MIKIO KUBO

MIKIO KUBO

July 29, 2025
Tweet

More Decks by MIKIO KUBO

Other Decks in Business

Transcript

  1. IBPとは • Intelligent Business Planning の略(統合ビジネス計画) ERPのwrapper • S&OP (Sales

    and Operations Planning) 販売事業計画の発展型 • SAP (時価総額52兆円) • Oracle (85兆) • Anaplan (15兆) • Blue Yonder (Panasic買収) • Kinaxis (5兆) • O9 Solutions (5兆)など • 基本はダッシュボード • 人間がWebフロントエンドを操作 • カスタマイズが難(日本では必須; アドインで対応するが現場知識と 最適化知識の不足で失敗) Dashboardの例
  2. SaaS (Software as a Service) is DEAD Microsoft CEO Satya

    Nadella Agentic AI が従来のアプリケーションやSaaSプラッ フォームを置き換え、静的なユーザーインター フェースとビジネスロジックを排除する
  3. Agentic workflow vs. tradional workflow • 従来のワークフロー ✓ 人がWebフロントエンドを操作(まだまし) ✓

    ERPからExcelにデータを移行し、従来のワークフロー(手作業)で 処理して、ERPに戻す ✓ 従来のワークフローをアドインで作ろうとするが、ベンダーが業務を 理解できず or 最適化の技量不足で失敗 • Agenticワークフロー ✓ AgentがバックエンドAPIに直接アクセス ✓ 構造化データを直接処理
  4. Agentic SaaSと従来のSaaSの比較 属性 従来型SaaS エージェント型/インテリジェントSaaS インターフェース グラフィカルユーザーインターフェース(GUI) 自然言語、AIエージェント 価値提案 人間の業務効率化を支援するツール

    業務を自律的に実行するシステム ビジネスモデル ユーザー単位サブスクリプション、機能別階層 使用量ベース、成果ベース、ハイブリッド 価値指標 アクティブユーザー数/シート数 提供された成果(例:コスト削減額、完了タスク数) コア技術 クラウドコンピューティング、マルチテナントDB 生成AI、大規模言語モデル(LLM)、APIオーケストレーション ユーザーの役割 オペレーター、データ入力者、分析者 監督者、戦略家、例外処理担当者 データモデル アプリケーション毎にサイロ化された独自スキーマ 統合され、アプリケーションを横断するオーケストレーション ベンダーとの関係 トランザクション型(ソフトウェアライセンス提供者) パートナーシップ型(成果提供パートナー)
  5. Agentic AI とは • LLMを内蔵したマルチエージェントシステム • 生成AI (GenAI)の発展型 • 汎用サービスとして

    Manus、Flowith、Genspark、Skywork、MiniMax、 Suna (Kotrix AI; open source) など • 状況認識 • 目標指向 (goal-oriented) • 継続的学習/適応性 (adaptability) • 自律性 (autonomy) • 多段階問題解決(multi-step problem solving) • リアルタイム処理 • 分散型意思決定 • レジリエンス向上
  6. 自動化サービス 自動化サービスならノーコードで簡易的な Agentic AI が作れる • Zapier: 昔からあるけど、結構高い • n8n:

    オープンソース • make: 使ったことない • Dify: LLM特化(トライアルは無料) N8nの例 以下のワークフローを実現するn8nのJSONファイルを作っ てください。 1. Google Sheetへの行の追加をトリガーとする。 2. 行に含まれた会社名とメールアドレスをもとに、 会社の規模をwebで調べる。 3. 会社の規模が大きいときには、ライセンスを許可する ためのコードを含んだメールを自動返信する。 { "name": "Google Sheet行追加時に企業規模を判定しメール送信", "nodes": [ { "parameters": { "sheetId": "YOUR_SHEET_ID_HERE", "sheetName": "YOUR_SHEET_NAME_HERE", "columns": "A,B" }, "name": "Google Sheets Trigger", "type": "n8n-nodes-base.googleSheetsTrigger", …
  7. Agentic AI for IBP (AGI4OPT) • Agentic AI でサプライチェーン全体をコントロール •

    エージェントに最適化や予測ツールを付与 • どのツールを使うかはエージェントに委任 • エージェント間の情報の受け渡し(状態管理) • 従来の静的な月次計画から自動化・自律化へ • 従来の定量データのみのシステムから、定性的なデータの許容、なら びにや自然言語による応答や指示 • 従来のダッシュボード中心のIBPからの脱却 • 従来のサイロ型IBPからの脱却 • エージェント間のコンフリクトは最適化とHuman-In-the-loopで解決
  8. AGI4IBP の 特徴 • Agentのプロンプト(指示文)はユーザーが書き換え可能 (カスタマイズの敷居が低い) • FullstackのIBPより簡素(作るのが簡単) • 安くできる

    • Agentの追加も簡単 • スケールも簡単 • ERPがなくても動く(ただし何らかのデータは必要) • ツールのカスタマイズも可能(自分たちで作っているから)
  9. ツールを内蔵したエージェントたち • 基本分析エージェント • 需要予測エージェント • 在庫管理エージェント • ネットワーク設計エージェント •

    配送最適化エージェント • 生産計画エージェント • リスク分析エージェント • シフト最適化エージェント • 収益管理(動的価格付け)エージェント …
  10. 基本分析エージェント 基本分析エージェント 基本分析 サブエージェント 基本分析ツール (abc_analysis, rank_analysis, mean_cv_analysis) 可視化ツール (tree_map,

    show_inventory, show_mean_cv) 在庫分析 サブエージェント POSデータ マーケティングデータ … 可視化 サブエージェント 在庫分析ツール (risk_pooling_analysis, inventory_analysis) Tree map ABC 分析
  11. Google ADK によるエージェントの実装例 scbas_agent = LlmAgent( model="gemini-2.5-flash", name=” sc_analyzer_agent", description=”Supply

    chain basis analytics agent with ABC Analysis, Rank Analysis, Risk Pooling Analysis, Demand Forecasting, Dynamic Inventory.”, instruction = 別ファイルにあるプロンプトを読み込む, tools=[demand_tree_map', 'abc_analysis', 'abc_analysis_all', 'add_abc', 'demand_tree_map_with_abc', 'generate_figures_for_abc_analysis', 'rank_analysis', 'rank_analysis_all_periods', 'show_rank_analysis', 'risk_pooling_analysis', 'show_inventory_reduction', 'show_mean_cv', 'inventory_analysis', 'inventory_simulation', 'show_prod_inv_demand', 'plot_demands’], output_key= “scbas_output” ) もしくはルートエージェントと3つのサブエージェントを作り、ツールを分ける 基本分析エージェント
  12. Google ADK によるエージェントの実装例 root_agent = LlmAgent( model="gemini-2.5-flash", name=”root_agent", description=”An orchestrator

    of sub-agents. “, instruction = “Your job is to delegate user requests to the appropriate sub-agent based on their specialized function. … " sub_agents=[sc_analyzer_agent, dispatcher_agent, inv_agent, network_designer_agent, forecaster_agent, scheduling_agent, scrm_agent, shift_agent, lotsizing_agent ] ) ルート(オーケストレーション)エージェント
  13. 需要予測エージェント 予測エージェント AutoML サブエージェント AutoMLツール 予測解釈・説明 SA POSデータ マーケティングデータ 天候データ

    静的特徴量,共変量 … 予測シナリオSA 可視化ツール (show_importance, interpret_model) 可視化SA AutoMLによる予測 特徴重要度 Ensemble + Stacking
  14. 自動予測 Agentic AI • 指示文とデータのアップロード => 予測とMLモデル(訓練済 み)の自動生成 Client Text

    Data (csv, folder, …) ファイルの分類 コード実行 (ツール利用) コーディング 予測結果とMLモデル タスクの分析 エラー分析
  15. 需要予測エージェントのプロンプト例 1. あなたの役割 (Your Role) あなたは、サプライチェーンの全体最適化を目指すAIチームの一員であり、 需要予測を専門とするサブエージェントです。あなたの任務は、過去の データに基づき、将来の需要を可能な限り高い精度で予測することです。 2. 究極的な目標

    (Ultimate Goal) あなたの予測は、後続の「生産計画エージェント」や「在庫最適化エー ジェント」にとって極めて重要なインプットとなります。あなたの予測精 度がサプライチェーン全体の効率(在庫コスト、欠品リスク、輸送効率な ど)を直接左右するため、常に最高のパフォーマンスを目指してください。 3. ツール、4. 出力フォーマット、5. エラー処理 … プロンプトは企業ごとに カスタマイズが可能
  16. 変更したプロンプトのテスト 機械学習と数理最適化の融合 (MOAI) 技術の利用 • 過去の問題例と解の保存 => LLMのlogging • Logデータを用いて、シナリオ(テストケース)を生成

    (問題例の生成) • テストケースに対するサンドボックスでのテスト • 使用するLLMとLLMのパラメータ(温度、Top-Kなど)の チューニング
  17. 在庫管理エージェント 在庫管理エージェント 適正在庫算出 サブエージェント 在庫最適化ツール (optimize_qr (ss), network_base_stock_sim, tabu_search_for_SSA) 発注・アクションプラン

    サブエージェント 需要予測 多段階の在庫量 製品データ リード時間データ … 在庫診断 SA 発注ツール (write_purchase_order, send_email) 定常在庫方策 vs 動的在庫方策 安全在庫配置 Multi-echelon在庫 シミュレーション最適化
  18. Agentic AIによる end-to-end 化 データ +指示 ダッシュボード Plotly Studio, Replit

    AI, Polymer AI, Google Looker Studio, … データ +指示 分類・回帰・予測 AGI4ML, DataRobot AutoML, SageMaker, … ヒヤリング +データ 最適化アプリ AGI4OPT, DataRobot Optimizer (HPO ?)
  19. ネットワーク設計エージェント ネットワーク設計エージェント 最適ネットワーク サブエージェント 最適化ツール (solve_lnd, solve_generic_lnd, solve_sndp) 可視化ツール (show_optimized_network,

    plot_scm) クラスタリング サブエージェント 顧客、製品、倉庫 工場、需要、生産 などの各データ … 可視化 サブエージェント クラスタリングツール (capacitated_k_median, k_means, weizfeld ) k-medianクラスタリング サービスネットワーク設計 結果要約・解釈 サブエージェント リスク分析・シナリオ生成 サブエージェント
  20. ネットワーク設計(プロンプト例) 6. 重要事項とガイドライン (Important Notes & Guidelines) 巨視的な視点(Macro View): 日々の細かな需要変動は無視し、年間や月間と

    いった大きな時間単位で物事を捉えてください。あなたの仕事はオペレーション の改善ではなく、サプライチェーン全体のアーキテクチャ設計です。 トレードオフの明示: 「コストを年間X億円削減するには、リードタイムが平均Y 日延びる可能性がある」といった、コストとサービスレベルのトレードオフの関 係を明確に示し、経営判断の材料を提供してください。 What-If分析の神髄: あなたの真価は、What-If分析にあります。「もしA地域の需 要が倍増したら?」「もしB工場の生産コストが半減したら?」といった未来の 問いに答えることで、変化に強い、真にロバストなネットワークを設計できます。 実行可能性(Feasibility): 提案するプランは、机上の空論であってはなりません。 現実的な予算やプロジェクトのタイムラインを考慮に入れた提言を心がけてくだ さい。 1.から 5. の基本プロンプトの他に、経営者向けシナリオ分析レポートも出力
  21. 配送最適化エージェント 配送最適化エージェント 配送最適化 サブエージェント 最適化ツール (optimize_vrp, optimize_pdvrp, optimize_vsp) 可視化ツール (gantt_for_vrp

    make_detailed_route) 配送前処理 サブエージェント 地点、ジョブ 輸送、運搬車、休憩 などの各データ … 可視化 サブエージェント 前処理ツール (compute_distance_table, prepare_solution_pool, find_near_instances) 最適ルート描画 ガントチャート 分析・ レポートSA 動的配送 SA
  22. 生産計画エージェント 生産計画エージェント スケジューリング最適化 サブエージェント スケジューリング 最適化ツール (optimize_sequencing, prepare_model, model.solve )

    可視化ツール (make_gantt make_resource_graph, show_bom) 品目、作業、需要量、 納期、資源、BOM などの各データ … ロットサイズ 最適化ツール (optimize_lotsizing, optimize-multimode) graphvizによるスケジューリングモデルの可視化 ロットサイズ最適化の可視化 ロットサイズ最適化 サブエージェント 可視化 サブエージェント 最適化モデルも カスタマイズが必要!
  23. シフト最適化 エージェント シフト最適化(+運用)エージェント シフト最適化SA シフト最適化ツール (optimize_shift, prepare_model, model.solve ) スタッフ

    シフト タスク 休憩 … 意図解釈 SA 応答生成 SA データ連携 SA 分析SA ユーザーの自然言 語をJSONに変換 データベースの検索、 作成、更新、削除 データに基づいた自然 な文章での回答生成 データ分析と レポート作成
  24. シフト最適化(プロンプト例) あなたはシフト管理システムの優秀なアシスタントです。ユーザーからの自然言語での指示を解釈し、 以下のJSON形式で操作内容を抽出してください。 日付や時刻が相対的な表現(「明日」「来週月曜」など)の場合は、現在の日({{current_datetime}}) を基に絶対的な日付(YYYY-MM-DD)に変換してください。 # 操作の種類 (action) - create_shift

    (シフト作成) - update_shift (シフト修正) - delete_shift (シフト削除) - find_available_staff (空きスタッフ検索) # 出力形式 { "action": "操作の種類", "parameters": { "employee_name": "スタッフ名", "date": "YYYY-MM-DD", "start_time": "HH:MM", "end_time": "HH:MM", "constraint": "制約条件" } } ユーザー指示: 「明日の18時から22時まで入れる人を探して」 AIの出力(JSON): ```json { "action": "find_available_staff", "parameters": { "date": "2025-07-24", "start_time": "18:00", "end_time": "22:00" } } ``` 使用例
  25. エージェント起動のタイミング (2) 調達 ロジスティクス・ネットワーク最適化 ストラテジック タクティカル オペレーショナル サプライ・チェイン・リスク管理 ロットサイズ最適化 スケジューリング最適化

    需要予測 配送最適化 安全在庫配置 在庫最適化 シフト最適化 収益管理 基本分析 定期的に起動:階層的意思決定レベルによってユーザーが設定 毎日からリアルタイム 月から週次 年から月次
  26. エージェント起動のタイミング (3) • イベントによって起動:POSデータ更新、生産ライン停止などが トリガー => 指定したワークフローが起動 Multi-Period Vehicle Routing

    Inventory Management ルート トラック手配 Deamnd Forecasting 需要予測値 実行不能 残余容量 固定費用 POSデータ更新 発注量 発注のタイミング 海外のIBPでは配送や店舗在庫は制約 としては扱わないことが多いが、 日本だと両方とも制約になりうる 配送のタイミングとルートの効率性の トレードオフの最適化 同時最適化は規模によるが困難 => エージェント間のやり取りで解決
  27. データの受け渡し(状態を介して)とオーケストレーション Production Scheduling Lot Sizing Logistics/Service Network Design Vehicle Routing

    Supply Chain Risk Optimization Stage BOM Dynamic Pricing Safety Stock Allocation Inventory Policy Optimization Shift Scheduling resource upper bound flow volume resource requirement ifeasibility info. lot flow cost network configuration risk allert safety stock lead time service level infeasibility info. assignment of products to plants perishable inventory demand Case 1 Logistics Network Design Lot Sizing 月次の生産・輸送最適化 (全工場) 週次の生産計画(工場ごと) 工場への製品の割当 Case 2 Lot Sizing Scheduling 切り替え最適化 納期遅れ最小化 IBPベンダーで対応できない問題 APSベンダーで失敗した問題 ロットまとめ
  28. Agentic システムの設計 • ヒューマンインザループ (HITL) が必須 => 複数のエージェント 間の利害の調整(企業ごとのカスタマイズ要) •

    ガードレイルの整備 • ハルシネーションの防止 • 説明責任(ブラックボックス問題) => 最適化モデル • メトリクスの設定 • シナリオ生成のためのエージェント • データセキュリティ • 適切な最適化ツールをエージェントに付与(カスタマイズ要)
  29. おわりに • 人間と最適化などのツールを付与したAgentic AIの協業 • それによる短納期化 • 人間はガバナンス、信頼、説明責任、創造性、共感(そして飲 み会)に集中 •

    モデル作成時には、必要なものは入れ、必要ないものを入れな い(そしてクライアントを説得できる)人材 • AIシステムのオーケストレーションができる人材 • 少数精鋭のAI拡張コンサルタント • それによる人月商売の消滅