Regional Scrum Gathering Tokyo 2021( #RSGT2021 )で発表した内容です。
顧客に愛されるヒット商品を作るための、ソフトウェア開発以外の重要なポイントを一気に抑えてしまうセッションです。次のような悩みに効きます。
プロダクトが良くなってきたもののライバルに負ける。
「ユーザーが増えた! サービスが成長した! ところが大手企業が丸パクリしてきて、資本力で顧客を奪ってく!!」
お客さんに下手に出てお願いしないと買ってもらえない。
「いいプロダクトだねー! でも、高いなー、もう少し安かったら買うかも」
「不確実性への適応」というテーマがよく話されています。
不確実性とは、一般的には「直接コントロールできないが、目標達成に重大な影響を与える要素」とされています。経営組織論では「組織が活動するために必要な情報と、実際に組織がすでに入手している情報との差」と表現されることもあります。つまり十分に分かっていたら確実性が高い行動がとれるわけですね。
たとえば、いつ大地震がやってくるのか、大雪がいつ降るのかは私たちにはコントロールできません。ところが物流や公共交通機関に仕事として関わる人たちに大きな影響を与えます。
同じように、お客様の考え、市場の不特定多数のユーザーの考えを直接マインドコントロールのように操作できませんが、私たちの仕事の前途に大きな影響を与えます。これらは不確実といえるでしょう。
もし直接コントロールできたり完全な情報を知れたら有利にプロダクト開発ができるでしょう。ですから、私たちは不確実性に適応していくために様々な取り組みをしています。不確実への適応は重要なはずです。
しかし、私たちが感じている不確実なさまざまな事柄は、本当に不確実なのでしょうか。
実は不確実ではないものまで不確実だと思い込んでいないでしょうか。
私は新規事業やヒット商品を20代はじめから関わってきました。そこで分かったのは『不確実性が重要な領域は実は限られている。しらない、できない、興味ないという態度のほうが影響が大きい。つまり積極的な無知、無能、無関心が大きな障害となっている』ということです。
これはプロダクト開発の隠れた真実だと思います。
不確実とは言い換えれば「十分な知識や経験を持つ専門家でも判断に迷う、分からない」と言い換えれます。つまり、乱暴ですが、専門家でも分からなかったら不確実といえるでしょう。ちょっと専門家が調べれば分かる事柄は不確実ではないということです。
私たちは本当は不確実ではないものまで、不確実に押し込んでしまっていないでしょうか。例えば私たちの仕事を乱すチーム外の人たちからの関わり…役員の依頼だったり、他の部署の人たちの行動があったりします。
「営業が無茶な案件を押しつけてくる」
「上司が前例がないからと許可してくれない」
「社長が変なことを言い出した」
企業の外側でもいろいろなことが起きます。
「お客様が突然契約キャンセルしてきた」「お客様に価格を下げるよう強く主張された」
「大企業が、自社製品にそっくりなプロダクトをリリースしてきた」
自分達のプロダクト開発でも様々なことが起きます。
「プロダクトを紹介するwebページどうしよう。競合との機能比較表がよくあるけれど、これでいいのかな」
これらは全てが不確実というよりも、「しらない、できない、興味ない」によるところが多く、うまく対応できるところも多いはずです。これに真っ向から立ち向かうのがプロダクトマネジメントです。
プロダクトマネジメントとは製品開発、組織開発、財務、マーケティング、流通、セールス、保守、顧客サポート、業務提携、企業間競争といった諸活動を通じて、現在から未来にかけて顧客の要望をこれまでにない高い水準で満たすことにより、業界内で独走状態を築くことを目標にしたマネジメントと私は考えます。
プロダクトを成功させるためには必要な様々な専門領域があり、うまく協力することで経済活動として成り立ちます。このセッションでは、これらの「スクラムが直接扱わないがスクラムを通してプロダクトの成功に不可欠な領域」についてポイントを抑えてお話ししたいと思います。
ヒット商品作りの隠れた真実
・不確実性と、無知・無力・無関心