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2025年度ICT職専門研修(海外派遣研修)報告書 No.4

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2025年度ICT職専門研修(海外派遣研修)報告書 No.4

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  1. 2 目次1 背景・目的 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問詳細 4.

    今回の学び 5. 都政への還元と今後に向けて 6. まとめ
  2. 3 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 東京都全体のデジタルサービスの品質向上に向けた取り組み|背景・目的 東京都では「誰ひとり取り残さない」「質の高い」デジタルサービスの実現(*1)を目指して、品質 向上のための様々な取り組みを行っている。 (令和4年度)「行動規範ーデジタル10か条」の策定 (令和4年度)「サービスデザインガイドライン」の策定 (令和5-6年度)VERSION2への改定および内容の更新 そのほか、東京都全体で多角的にさまざ まな取り組みを進めている

    • 「2050東京戦略」の実現に向けた構 造改革「シン・トセイX」(*2)の策定 • GovTech東京の職員による専門知識 を活かした技術的支援 • プロジェクト監理(*3)などの品質管 理・クオリティチェック体制の構築、 推進 • 「TOKYOスマホサポーター制度」な ど、デジタルデバイドの是正事業の 推進 (*1) デジタルサービスに係る行動指針|東京都デジタルサービス局 , https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/business/digital-guideline [最終閲覧日:2026/2/4] (*2) シン・トセイX, https://www.spt.metro.tokyo.lg.jp/seisakukikaku/shintoseix [最終閲覧日: 2026/2/4] (*3) 東京都デジタルサービス開発・運用規程, https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00005261.html?id=j2_k1_g14 [最終閲覧日:2026/2/4]
  3. 5 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 個人的な課題感|背景・目的 これまで、東京都各局のデジタルサービス支援や広報などの業務に従事したほか、アクセシビリティのカン ファレンス参加などを経験してきた。その中で、利用者体験を軸にしたサービス設計や、多様な利用者を想定 した情報設計及び情報公開などに課題を感じることがあった。 そのような経験を経て、今後、行政サービスを利用する「さまざまな」都民の満足度を高めるためには、以下 の2つの取り組みが不可欠であると考えている。 • 利用者のニーズを的確に捉え、使いやすいサービスを実現するため、企画段階からユーザーの声を取り入れ、サービス

    の価値や体験全体を設計する(サービスデザイン) • 高齢者や障害のある方を含め、すべての都民が利用できるサービスを提供するため、アクセシビリティに配慮したサー ビス設計及びユーザーテスト等を実施 デジタルサービス局では、GovTech東京と協働し、都民向けアプリケーションである東京アプリに関する取り 組みを進めることとしており(*5) 、現在、私も関連業務に従事しているが、都民に真に価値のあるデジタル サービスを提供するためには、これらの取り組みを体系的に整理し、多様な利用者の声を丁寧に取り入れなが ら実践することが重要である。 そこで、サービスデザイン・アクセシビリティにおいて先進的な取り組みを行っている海外の政府機関や民間 企業を訪問し、具体的な手法や組織体制、成功事例を学ぶことで、東京都のデジタルサービス向上の取り組み に活かすことを目的とし、今回のテーマを設定した。 (*5) 東京都公式アプリ「東京アプリ」|GovTech東京 , https://www.govtechtokyo.or.jp/services/tokyoapp/ [最終閲覧日: 2026/2/4]
  4. 6 目次2 渡航概要 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問詳細 4.

    今回の学び 5. 都政への還元と今後に向けて 6. まとめ
  5. 7 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 テーマ・訪問先の選定理由|渡航概要 以下のテーマを設定し、カンファレンス参加や行政機関・民間企業へのヒアリング等を実施した。 テーマ:満足度の高い行政のデジタルサービスを実現するために ーサービスデザイン・アクセシビリティの視点からー 概要 • 総日数:26日間(移動・週休日含む) •

    訪問先:4カ国・6都市(9機関) • 米国:ダラス(テキサス州)、サンフランシスコ(カリフォルニア州)、レドモンド(ワシントン州) • フィンランド:ヘルシンキ • ドイツ:ベルリン • イギリス:ロンドン • 訪問先の選定理由 • デジタル政府ランキング(*6)で上位に位置する国々のうち、比較的、高齢化率の高い国を基準とした • 政府レベルの機関だけでなく、地方自治体や関連するGovTech機関なども対象とした (*6)第19回世界デジタル政府ランキング2024, https://idg-waseda.jp/pdf/2024_Digital_Government_Ranking_Report_Japanese.pdf [最終閲覧日: 2026/2/4]
  6. 8 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 米国|渡航概要 • 訪問場所①:【テキサス州ダラス】Service Design Global Conference 2025 •

    訪問場所②:【カリフォルニア州サンフランシスコ】Salesforce本社、Figma本社、サンフランシスコ市視察 • 訪問場所③:【ワシントン州レドモンド】Microsoft本社視察 ※米国では他3名とグループとして同行 © OpenStreetMap contributors ① テキサス州ダラス ▪ Service Design Global Conference 2025 • 世界最大級のサービスデザインのカンファレンス に参加し、先進事例について情報収集を行う • サービスデザイン実践事例を把握し、今後のヒン トを得るほか、ネットワーキングの機会とする ③ ワシントン州レドモンド ▪ Microsoft本社 • Microsoft本社を訪問し、M365に関する最新の技術 動向を把握し、理解する • プロダクトの要望を受け、改善する方法や仕組みに ついて、実践事例を知ることで今後のヒントを得る ② カリフォルニア州サンフランシスコ ▪ Salesforce • Salesforce製品の最新動向を把握し、理解する • 行政機関における活用事例を知り、今後の業務に活 用できるヒントを得る ▪ Figma • Figma製品のAI等の最新動向を把握し、理解する • CPOとの意見交換を通してプロダクトを継続的によ り良くする実践のヒントを得る ▪ サンフランシスコ市 • デジタルサービス部門に訪問し、住民向けオンライ ンサービスのデジタル化やアクセシビリティに関し て、実践的な取り組みからヒントを得る
  7. 9 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 ヨーロッパ|渡航概要 • 訪問場所④:【フィンランド・ヘルシンキ】DVV、Kela視察 • 訪問場所⑤:【ドイツ・ベルリン】CityLAB Berlin、DigitalService視察 • 訪問場所⑥:【イギリス・ロンドン】現地在住日本人へのヒアリング、Public

    Digital視察 © OpenStreetMap contributors ⑥ イギリス・ロンドン ▪ 現地在住日本人へのヒアリング • 直近で経験した行政手続やその方法、感じた日本 との違いなどの気づきをヒアリングする ▪ Public Digital • イギリスGDSの黎明期に活躍した経験や、現在取 り組む世界の公共機関での取り組みなどから、日 本及び東京の規模で活用できる示唆を得る ⑤ ドイツ・ベルリン ▪ CityLAB Berlin • 行政サービスに関するデータ活用事例が展示され ている施設を見学し、実践事例を知る ▪ DigitalService • 政府が出資したGovTech企業の取り組みや行政DX への寄与を把握・理解する ④ フィンランド・ヘルシンキ ▪ DVV(デジタル・データ人口庁) • Suomi.fiなど、住民満足度の高いサービスを提供 するために必要な要素についてヒントを得る ▪ Kela(社会保険庁) • Omakelaなど、住民向けの行政サービスの満足度 向上のための取り組みやアクセシビリティに関す る工夫についてヒアリングする
  8. 10 目次3 訪問内容詳細1 カンファレンス 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問内容詳細

    • カンファレンス • 民間企業でのヒアリング • 行政機関でのヒアリング 4. 今回の学び 5. 都政への還元と今後に向けて 6. まとめ
  9. 11 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Service Design Global Conference 2025|訪問内容詳細(1) カンファレンス概要 • 日時:2025年10月15日~17日

    • 会場:トヨタ・ミュージック・ファクトリー • テーマ:Business Transformation by Design: Leading Modern Organizations through Service Design • スケジュール:【Day1】ワークショップ、【Day2~3】セッション…合計20程度 【Day1】ワークショップ 「A Matter of Scale: Navigating Systemic Challenges in Practice」 「急性疾患の際の医療サービスを両親にとって管理しやすくするにはどうすればよいか?」 というテーマに関して、 ”Challenge Mapping” という手法を使い、目的や使命、行動可能な 問題となりうるアイデアを見つけるワークショップを行った Challenge Mapping • 設定した「どうすれば~できるか?」という問いに対して、抽象化と具体化を行う • 抽象化では「なぜそれが重要か?」を、具体化では「何が我々を止めているか?」をさら に問い、生まれたアイデアの中から1つを選び、再度同じように抽象化/具体化を行う • 目的や使命、行動可能な問題になるまで考え続け、最終的に納得できるものを見つける ワークショップで実施した Challenge Mappingを撮影した写真 米国 カンファレンス
  10. 12 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Service Design Global Conference 2025|訪問内容詳細(2) 【Day2~3】セッション全体の気づき • ユーザー価値も大事だが、業務効率や事業利益などの重要な因子も重視した、ビジネス文脈でのサービスデザインやデザ

    インが語られることが多かった • 生成AIとどのようにして協働し、サービス全体や体験の価値を高めていくかに関するセッションも用意されていた 【セッション紹介①】Service Design at Chase(米国の大手商業銀行) • Chaseのデザイン組織は3年間で約300人から1,000人近くまで成長 • 金融サービスの複雑性を考慮し、サービスデザインがアプローチの中心となっており、 デザインリーダーは組織内で大きな役割、影響力を持っている • 複雑な金融でのジャーニー(住宅、投資、クレジットなど)のタッチポイントにおいてお金を使うことは、人々にとって 感情的な場面となるため特に価値があると考え、事業部門間のコラボレーションや物理・デジタルの体験の接続にサービ スデザインを活用して、コンテキストを共有しながら部門間のサイロなどを打破するのに役立てている • セッションの中で紹介された「デザイン組織における7つの大罪」 ①暴食(過剰にデザインして機能を増やしすぎる)、②強欲(より多くリソース、予算、評価を求める) ③怠惰(現状に満足し、改善を推進しない)、④色欲(着実な改善よりも大規模なリデザインに誘惑される) ⑤傲慢(プロセスやフレームワークに過信する)、⑥嫉妬(競合他社を真似てトレンドに追従してしまう) ⑦憤怒(非生産的な怒りや敵対思考に陥る) 登壇者一覧のスライド(CDOなどが登壇) 米国 カンファレンス
  11. 13 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Service Design Global Conference 2025|訪問内容詳細(3) 【セッション紹介②】Bringing Complex Services

    to Life Through Immersive Mockups • Southwest Airlines(ダラスを本拠地とする航空会社)によるセッション • 複雑性が高いと失敗のリスクが高まり、規制の厳しい航空、医療、物流などの業界では、特に失敗のリスクが大きい • 空港での搭乗手続きを、段ボールや画像ファイルなどを使ったモックアップでテストした事例が紹介された 空港での搭乗手続きやトラブル時の対応について、モックアップを作成してテストしている様子 (裏側に人がいて操作したり、画像ファイルをフォルダで差し替えて案内画面を更新したりすることでテストに対応している) 【セッション紹介③】Beyond Efficiency: Reclaiming Humanity in the Age of AI • クロージングのKeynote。MITのレポートを引用し、生成AIの試行プロジェクトの95%が失敗することを紹介 • スピーカーが3人の子どもを育てていた時にバーンアウトを経験したエピソードを紹介し、ケアを軽視する社会で生き ることの問題や、生成AIがケアを模倣していることの危険性(生成AIを使う理由1位はセラピー)について紹介 • サービスデザイナーはシステムにケアを注入する機会を持ち、技術を人間のために機能させることができると提言 米国 カンファレンス
  12. 15 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 得られた気づきや洞察|カンファレンス サービスデザインという手法に関する潮流 • サービスデザインというものが広義に捉えられ、「良い体験を設計するための手法」としてだけではなく、「複雑な組織 が一貫した意思決定をするための方法論」としても拡張している(単なる成果物から組織運営のためのOSへ) • サービスデザインは創造性を高めるためのツールとしてだけではなく 、複雑性が増した場合の失敗のリスクや影響を減

    らすような、不確実性のある「(エコ)システム」を管理する技術としても捉えられている サービスデザイナーと生成AIとの協働 • 生成AIはリサーチの要約や問い合わせの分類など、定常的に集まるデータの傾向や変化の兆しを掴む業務に相性が良い • 様々な要因のうち何を優先するか(優先順位)やどこまでをAIに任せるかは、人間が担うべき判断の領域となる • 生成AIに固執しすぎず一手段ととらえ、既存の手法とも組み合わせながら目的に合わせて柔軟に使うことが重要 ユーザー価値はもちろん、それ以外の様々な価値を同じテーブルで考えること • ユーザー価値や事業価値、実装可能性、規制・リスクなども、現場では重要な要因となる • 行政組織でも、住民や議会への説明責任や、公平性、透明性など特有の要因が求められ、非常に多くの目的変数を 扱いながら最適な判断を行う必要がある • サービスデザイナーは変革のファシリテーターとして、様々な手法を活用して協働や意思決定に導いていく役割を担う • 行政組織でも、事業推進者が適切な連携・判断を行うための役割として、サービスデザイナーが重要ではないか
  13. 16 目次3 訪問内容詳細2 民間企業でのヒアリング 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問内容詳細

    • カンファレンス • 民間企業でのヒアリング • 行政機関でのヒアリング 4. 今回の学び 5. 都政への還元と今後に向けて 6. まとめ
  14. 17 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Salesforce本社|訪問内容詳細 Salesforceの政府・自治体向けのプロダクトや取り組み紹介 • 5つの組織文化を重視:「Trust」「Customer Success」「Innovation」「Equality」「Sustainability」 • 政府及び市民データを扱う上でも「信頼」を最優先の価値とし、許認可、ライセンス、検査などの自治体向けに標準化 されたアプリケーションを開発して提供している(日本でもISMAPを取得)

    • 米国内でも、311(非緊急の市民向け窓口・チャネル)などの住民のタッチポイントにSalesforce製品が組み込まれるな ど、24時間365日の行政サービスを期待する市民へのサービス提供に寄与している • 最近は、Agentic AIとして「Agentforce」の活用を進めており、SalesforceとしてもAIを強力に推進している 米国内での活用事例:カリフォルニア州DMV(自動車局)の取り組み事例 • DMVは、州政府機関として車両登録・更新、免許申請・更新、違反処理等を担う部局 • これまでは窓口の混雑で早くても2時間程度掛かり、ネット予約でも煩雑で、 事前予約しても書類不備で受け取られないなど、満足度の低い窓口となっていた • REAL-ID法(*7)やコロナ禍の影響で住民体験改善の必要に迫られ、以下の取り組みを実施 • 対面訪問前にオンラインで正しい書類かどうかを確認し、承認されたら対面へ移行 • OCRを使用して申請書類を文字化することで、システムに取り込めるようにする • オンラインへの移行により、長蛇の列を削減(REAL-ID作成時の長時間待機問題も解決) 訪問時、自己紹介を行っている最中の1枚 (*7)REAL-ID | Transportation Security Administration, https://www.tsa.gov/realid [最終閲覧日: 2026/2/4] 米国 民間企業
  15. 18 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Figma本社|訪問内容詳細(1) Figma製品のAI等の最新動向 • FigmaはプロダクトにAIを統合し、アイデアから本番環境への実装・公開までのプロセスを効率化することを目標とする • その中でも、単なる効率化だけではなく、よりよいデザインと製品作りに時間を使えるようにすることを重視 • Figma

    Make:AIプロトタイピングツール • 自然言語を使用して、コードベースのプロトタイプを作成できる(非技術者でも可能) • 既存のFigmaデザインや画像を参照したUIデザインやコードを生成できる • Prompt to Edit:Figma Designの中のAIアシスタント(現在アルファ版) • Figma Designで作成した複数画面の一括編集や視覚的デザインの改良などをサポート • デザインシステムやファイル内の既存のフレームを参照して改良することなども可能 • その他、Code ConnectやFigma MCPなど、デザインと開発の双方向の連携が実現できるような機能をサポート オフィスづくりの工夫 • 組織文化:Build Community / Love Your Craft / Run with it / Glow As You Go / Playを体現 • 自分の興味があるテーマに関する本を社員が自作している(本棚にあり自由に見れる) • 1年に1回テーマを決めて社員で協力してクラフトする機会を設ける オフィスの様子(訪問時に新規職員の オンボーディングも開催されていた) 米国 民間企業
  16. 19 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Figma本社|訪問内容詳細(2) CPO山下氏との意見交換 • アクセシビリティへのアプローチ • デザインシステムを活用し、繰り返し発生するアクセシビリティの問題を解決できる • PRDや仕様書に最初からアクセシビリティ要件(タブ順序、ARIAラベルなど)を含める

    • WCAG2.2など、国際的な基準に基づいてアクセシビリティ対応を進める • プロダクト開発プロセスへの工夫 • 解決策よりも問題の定義を最初に行うことが重要 • チームでは、まずは問題の認識合わせから始める • プロジェクト開始前にプレモータム(最悪のシナリオ分析)を行い、失敗のリスクを事前に特定・軽減する • リリースする前のα版(機能が大きく変わる可能性がある共同設計段階)・β版(90%完成しており、細部の調整と フィードバックの反映段階)を用意して、実物で機能や操作感を確認することが重要 • プロダクトマネージャーのキャリア • すぐできることとして、デザイナーやエンジニアの仕事を深く理解することが重要 • また、エンドユーザーに近づく努力をすることで、プロダクトに関するセンスが磨かれてくる • 自分でできることは自分で行い、依存しない姿勢を持って取り組むことで、学習性無力感を避けることができる • 現在は生成AIを使うことでスキルの補完がしやすくなっており、以前よりも学習することへのハードルが低く なっている CPO山下氏との一枚 米国 民間企業
  17. 20 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Microsoft本社|訪問内容詳細(1) Microsoftにおける世界各地の政府機関向けAIソリューションや組織変革の歴史についてご紹介いただいた 政府サービスのためのAI活用事例 • マドリードの「VisitMadridGPT」は、観光客向けにパーソナライズされた情報を提供し、平均4分以上の利用時間と45 か国からのアクセスを記録した • UAEのスーパーアプリ「TAMM」では、2022年頃からAgent

    AIを採用し、1000以上の包括的な住民向けサービスを提供 (その中でText-to-Speech、感情分析などの技術を活用) • インドのボイスチャット「Jugalbandi」では、識字率の課題や22以上の言語がある地域で、行政サービスへのアクセス をテキストや音声形式で簡単に行うことができる(Azure OpenAI Serviceなどを利用) Microsoftの組織変革の歴史 • 1985年~2009年:クラシックなオンプレミスIT企業としてのMicrosoft • 2010年~2018年:クラウド&カルチャー(2014年サティア・ナデラ氏のCEO就任) • 2018年~2023年:モダンエンジニアリング&ハイブリッドワーク(2019年OpenAIとの協業) • 2023年:AIの時代、2025年:Agentic AI(フロンティア企業としてのMicrosoftへ) Microsoftロゴのモニュメント前での一枚 米国 民間企業
  18. 21 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Microsoft本社|訪問内容詳細(2) カスタマーゼロの取り組み 自社の新製品やサービスを顧客に提供する前に、自社内で最初に導入・利用すること • Microsoftは、従業員の体験を理解し改善するためのリスニング戦略を重視 • 2種類のデータシグナルを計測 •

    常時ONのテレメトリーデータ(例:PCログイン履歴など) • 能動的に取得する随時収集データ(例:サーベイなど) • 計測した様々なデータを専門チーム(リサーチャー、サポートエンジニア)が分析 • 複数のチャネルから同じシグナルが来ていることが分かると優先度が上がる • 優先順位の高い課題をエンジニアと連携して製品に反映し、チェンジマネジメントにより製品の変化にもスムーズに適応 できるようにすることが重要 得られた学び • テクノロジーをただ作るだけでなく、その製品を使ってもらったり、より良いものに改善していく方法に関する数多くの 試行を行っている企業であると感じた • その結果として得られた優良事例をさらなる製品改善のサイクルに活かすというプロダクトの改善サイクルなど、従業員 も利用者と捉えて、フィードバックを活かしてプロダクトを継続的に良くしていく仕組みづくりは参考にしたい カスタマーゼロの概念を説明した図 (資料より抜粋) 米国 民間企業
  19. 22 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Public Digital|訪問内容詳細 Public Digitalの組織概要 • 2010~2011年に英国政府デジタルサービス(GDS)を創設したメンバーによって設立されたコンサルティング企業 • Public

    Digitalでは、世界40カ国以上の政府機関と直接連携し、大規模な制度改革支援を提供している • 現在、グローバルで約90のデジタルガバメントユニットが存在し、各機関に支援を提供 これまでの経験から得た知見や示唆 • 効果的な組織配置 • 強力な役割や権限を持ったデジタル推進チームを政治的中心と財政的中心の間に配置する • デジタル部門が単独で機能するのではなく、政策決定の中核に組み込まれることが効果的 • リーダーシップとの関係性 • トップダウンで「解決策を求められる」ことがあるが、まずは「問題を理解する」ことが重要 • ユーザーニーズへの対応戦略やポイント • ユーザーニーズに応えることを組織の正解にしていくには、実際にユーザーニーズ に応えることが最良の方法(ユーザーからの肯定的な反応を示すことで理解を得る) • 既存の慣習からの脱却のためのポイント • 高度なスキルを持つ人材が慣習を打ち破り、新しい実践を根付かせる • 最初の実践者が種をまき、それが組織全体に加速的に広がる「スノーボール効果」 日本で出版された「PUBLIC DIGITAL」 が壁面にポスターとして飾ってあった ヒアリング後のオフィスでの一枚 (一番左:共同創業者マイク・ブラッケン氏) イギリス 民間企業
  20. 23 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 得られた気づきや洞察|民間企業でのヒアリング • 信頼とセキュリティを重視したサービス設計(Salesforce、Microsoft) • 政府や自治体の持つ住民データを扱う上で、信頼関係の構築やセキュリティフレームワークの確立など、政府が示 す基準やプラットフォームを活用しながら安心で安全なサービス提供を設計段階から考えることが重要 • 段階的にAIを導入するための戦略(Salesforce)

    • むやみやたらにAIを導入するのではなく、職員向け/市民向けなど、信頼性を担保できる状態かどうかを確認しなが ら徐々にリスクを減らしていくことが求められる。そのための道筋を示す上での戦略が重要であると感じた • データサイロの解消とAPIファースト(Salesforce) • 異なる部門間でのデータ共有には、API層を活用した情報連携など、プライバシーとセキュリティを担保した状態で データサイロを解消する取り組みがなされていることを知ることができた • 利用者/住民体験の向上とマルチチャネル(Salesforce) • 電話、Web、SNS、アプリなど複数のチャネルを統合し、市民が使い慣れた手段(モバイル、SNS)でアクセスで きるよう行政サービスも構築することがアクセシビリティにも有効な手段である • 「言う」より「見せる」文化の実践(Figma) • 長期間の議論や計画策定に時間を費やすよりも、プロトタイプや動くものを早期に作成し、実際の価値を目に見え る形で示すことが、ステークホルダーの理解を得て変革を推進する最も強力な手段となる • 組織文化とチェンジマネジメント(Microsoft、Public Digital) • テクノロジーの導入だけでなく、それを使いこなすための組織文化の変革も両輪で推進することが不可欠
  21. 24 目次3 訪問内容詳細3 行政機関でのヒアリング 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問内容詳細

    • カンファレンス • 民間企業でのヒアリング • 行政機関でのヒアリング 4. 今回の学び 5. 都政への還元と今後に向けて 6. まとめ
  22. 25 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 サンフランシスコ市|訪問内容詳細(1) 当日は、SF.govのプロジェクトマネージャーやアクセシビリティ関連の取り組みを行うメンバーに参加いただいた サンフランシスコ市でのDXの取り組み • 200以上あったWEBサイトを「SF.gov」という単一の窓口に統一し、市民の目的別に情報を再編 • デザインシステム(*8)が公開され、色やフォント、コンポーネント、コードやストーリーブックなどを閲覧できる ウェブサイトのアクセシビリティ

    • サンフランシスコ市では国際基準WCAG2.1のAAに遵守し、米国内の障害者に関する法律(ADA)(*9)に沿う形とする • アクセシブルな仕組みが必ずしもアクセシブルなプロダクトを意味するわけではないことを意識し、デザインプロセスに おいてアクセシビリティの専門家と連携するようにしている • アクセシビリティの専門家はエンジニアとも連携し、コンテンツテンプレート用のHTMLを作成。これにより、スク リーンリーダーやキーボードユーザーがページ内をアクセシブルに回遊できる構造を構築することにつながった • 要件が長く、量が多くなりがちなアクセシビリティ要件について、ドキュメントに記載しながら一部をFigma上でもアノ テーションとして付記するようにし、エンジニアが見落とさないような対応事項の伝え方、連携方法を常に工夫している (次ページ画像) (*8)SF Design System, https://design-system.sf.gov/ [最終閲覧日: 2026/2/4] (*9)Fact Sheet: New Rule on the Accessibility of Web Content and Mobile Apps Provided by State and Local Governments | ADA.gov, https://www.ada.gov/resources/2024-03-08-web-rule/ [最終閲覧日: 2026/2/4] 米国 政府・自治体
  23. 26 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 サンフランシスコ市|訪問内容詳細(2) ユーザーフィードバックを得る画面の改善を行った、 Figmaの実際の開発画面 アクセシビリティに関するコメントを「For AX」などと付 けて赤字で記入することで、画面上からは受け取りづらい アクセシビリティ要件をエンジニアが見逃さないようにし ている。

    (キーボードフォーカスの順番やクリック後の変化など) アクセシビリティのテスト • スクリーンリーダー(PC・スマホの複数ツール)、キーボード操作のみのテストをそれぞれ実施 • 全てのブラウザとデバイスの組み合わせに対応したアクセシブルなサイトを作るのは現実的でないため、主なブラウザに 最適化して、自動テストと手動テストを組み合わせながら、見落としがないように自動テストの拡充など検討中 アクセシビリティに関する職員のトレーニング • サイト構築時だけでなく、運用に関わるサンフランシスコ市のウェブ担当者にもパイロット的にトレーニングを実施 • 障害のある方も利用できるウェブサイト・コンテンツやWord・Excel・PDFなどのドキュメントの作成を目標にトレーニ ングを行い、2時間のセッションに約30名程度が参加している 米国 政府・自治体
  24. 27 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 DVV(デジタル・データ人口庁)|訪問内容詳細(1) DVV(デジタル・データ人口庁)の概要 • フィンランド財務省管轄にある政府機関で、フィンランド全土の18拠点で800人以上の職員を擁する • ミッション:社会のデジタル化の推進/データの信頼性確保/国民のライフイベントに関連するサービスの提供 • 組織の名称から分かる通り、国民のアイデンティティ管理とデジタルサービス推進を単一の機関に集約

    • 出生・死亡届、後見業務など、ライフイベントに密着した行政サービスを提供(国の機関が窓口業務を提供) • 「Suomi.fiサービスの開発・運用」「公共機関のデジタルセキュリティ支援」「データ利用の促進」などを担当 提供するSuomi.fiサービス(フィンランドのe-ガバメントの中核を成すサービス群)について • Suomi.fi-palvelutietovaranto (PTV) – 全国サービスカタログ • 収集したデータをオープンデータとしてOpen APIを通じて官民問わず誰でも自由に利用し、サービス開発など可能 • Suomi.fi-tunnistaminen (e-Identification) – 統一的ID基盤 • フィンランドのあらゆる行政サービスにログイン可能なフェデレーション型の認証サービス(官民で利用される) • Suomi.fi-viestit (Messages) – セキュアな公式デジタルメール • 市民や企業が、行政機関からの公式な通知を安全な単一のデジタルメールボックスで受信できるサービス • Suomi.fi-valtuudet (e-Authorizations) – 電子的委任状サービス • 基本台帳と自動的に連携し、両者の間の法的な親子関係(後見関係)を確認して代理権を許可(約190種類に対応) フィンランド 政府・自治体
  25. 28 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 DVV(デジタル・データ人口庁)|訪問内容詳細(2) 「Zero Touch」な政府・自治体と住民間の行政手続きの可能性 • 「Zero Touch」は、政府・自治体が、住民に必要なサービスをプロアクティブに特定し、自動で提供することで、住民 が行政手続きに触れる必要をなくすという概念 •

    Zero Touch実現のために、データ基盤・アーキテクチャを数十年かけて整備してきたことがヒアリングより確認できた • ベースレジストリ:人口データ(1969年開発、1971年運用開始)、土地登記、企業登録 • データ交換レイヤー(X-Road):エストニアとの共同開発により、異なる機関・サービス間のデータ交換を実現 • 段階的な開発のプロセスと進め方の工夫 • 第1段階:ベースレジストリを数十年かけて開発・整備 • 第2段階:各分野におけるドメインデータを各機関が開発・整備 • 第3段階:Suomi.fiサービスを2014年~2017年にかけて開発 (直接住民と接する組織と協力し、ユースケースを具体化) • データ管理と個人情報保護における法的整理 • 政府・自治体が取得したデータの他部門への共有 • ベースレジストリに情報が登録された時点で、データ共有に関する同意が成立(個別の同意取得は不要) • 「共通行政電子サービス」において個人情報処理権限を規定し、「公共の利益が法的根拠」となる特定の状況 を規定し、行政機関間のデータ共有を可能にしている(ワンスオンリーを法律で規定しているイメージ) ヒアリング後の一枚(国際関係を所管する Mikko Mattinen氏に対応いただいた) フィンランド 政府・自治体
  26. 29 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Kela(社会保険庁)|訪問内容詳細(1) Kelaの組織・サービス概要 • フィンランド議会を親機関とする独立した社会保障機関で、1930年代に設立された • 名称は「国民年金協会」という意味合いだが、現代のフィンランド国民の生涯における社会的・経済的セーフティネット のほぼ全体を管理・運営する組織 •

    OmaKela(社会保障手続き)とKanta(社会福祉・医療のデータ確認)の、2つのサービスを管理・運営している Kelaのサービスが示す顧客体験への寄与 • 様々な統計情報を公開し、 Kelaの提供する行政サービスがどの程度ユーザーの体験に貢献しているかを示している(*10) • 主な指標と2024年の結果 • フィンランドの人口:約550万人 • 人口比率:16-64歳は約62%、65歳以上は約23% • ウェブサイトは4590万回閲覧、OmaKelaは4360万回ログイン • そのうち83%がオンラインで申請 • サービス拠点を約70万人が訪問(13.5%が事前予約) • 電話で約220万件の問い合わせに対応 • 218の自治体(都道府県単位)でKelaのサービスが利用される (*10)Benefits and services available from Kela | Kela, https://www.kela.fi/benefits-and-services [最終閲覧日: 2026/2/4] フィンランド 政府・自治体
  27. 30 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 Kela(社会保険庁)|訪問内容詳細(2) OmaKelaのリニューアルにおけるサービスデザイン実践 • 2018年にOmaKelaのリニューアルが開始し、新規機能追加やチャット形式へのユーザー体験改善などを進めてきた • ユーザー体験向上のための工夫 • サービスデザインや利用者のインサイトに基づく分析・インタビュー・テストの実施

    • 給付の専門家と連携し、法律や業務の制約も踏まえたシステムの要件定義を行う • システムで利用される言葉、専門用語の一貫性や正確性のチェック • デザインシステム(*11)で定義された共通のコンポーネントの活用 • アジャイル開発の採用 • 共通した目的は「住民が自分自身で効率的かつ自律的に手続きを済ませられるようにするため」 OmakelaとSuomi.fiの省庁間・サービス間連携 • Suomi.fiで提供されるe-Identification(ID基盤)をOmaKelaでも活用し、公的個人認証を行っている • Suomi.fiで提供されるe-Authorizations(電子委任)を活用することにより、正当な権利を持った代理申請であることの 確認も可能となる • ユーザー視点、行政機関双方から見ても、統一した認証基盤により同じ機能を再構築する必要がないため効率的 ヒアリング後の一枚(歴史のある建物に は循環式エレベーターが残っていた) (*11)Kela Design System, https://design.kela.fi/v16/ [最終閲覧日: 2026/2/4] フィンランド 政府・自治体
  28. 31 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 CityLAB Berlin|訪問内容詳細(1) CityLAB Berlinの組織概要 • ベルリン技術財団が運営し、ベルリン市長官房(市長直下の中枢機関)が資金提供する、行政のデジタル化やスマートシ ティに関する公共イノベーションラボ •

    2019年に6人のチームから開始し、様々な実績を創出しながら運営現在は約45人の規模に成長 • プロトタイプ集団として、ベルリン市内の行政機関が持つアイデアを素早く実装・評価し、必要であれば中止もいとわな い柔軟なアプローチを取る組織方針を持つ • デザイナーやエンジニア、マネージャーなどのチームが、プロジェクトごとにニーズのプロトタイプ化に取り組む オフィス内のプロジェクト展示スペースの様子 • プロジェクトを振り返り、記録として残すため展示スペースが用意されている(数多くの視察に対応する目的も兼ねる) CityLAB Berlinの展示スペースの様子(様々な事例について、動画や実際のプロトタイプなどを使いながらどのようなアプローチで取り組んだかを説明している) ドイツ GovTech機関
  29. 32 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 CityLAB Berlin|訪問内容詳細(2) 過去のプロジェクト事例 • 街路樹マッピングプロジェクト • ベルリン市のオープンデータポータルの街路樹データセットを活用し、 開始時約60万本だった登録樹木が現在は96万本に増加

    • 水やりの記録ができる市民参加型の機能を提供し、11000人がユーザー登 録を行っている • Parla.berlin(行政職員向け文書検索システム) • 議会質問に3週間以内で対応する必要があり、課題を感じていた • 本システムの開発により、約15000件の文書を含むデータベースを検索可 能に(関連文書も表示してくれる) CityLAB Berlinだから可能な素早い仮説検証の仕組み • IoTデータとセンサーデータを設定・変更するプラットフォームを開発し、カ ンファレンスなどで宣伝したが、6か月間でこれ以上は続ける価値がないと判 断し、中止した • 失敗から学んだことをブログ記事で公開したり、コードをオープンソース化す るなどして、失敗からの学びを記録 • 直近も、行政内で利用できるAIアシスタント(BärGPT)(*12)をリリースし、 運用開始から6週間で1万人の利用者を獲得するなど成功事例を創出 https://citylab-berlin.org/en/projects/giessdenkiez/ サービス画面(https://citylab-berlin.org/en/projects/giessdenkiez/ より) https://www.parla.berlin/ サービス画面(https://www.parla.berlin/ より) ドイツ GovTech機関 (*12)BärGPT, https://www.baergpt.berlin/ [最終閲覧日: 2026/2/4]
  30. 33 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 DigitalService|訪問内容詳細(1) DigitalServiceの組織概要 • 2020年10月に連邦政府の所有する有限会社として設立され、ドイツの行政機関のデジタル化に取り組む組織 • デジタル化・国家近代化省の所属機関であるが、独立性を持った組織として他の省庁からの仕事も受託するほか、地方自 治体とも協働する(法制化や標準策定などの段階から省庁と協働することで、利用者起点のサービス実現に貢献する) •

    現在は約200人の組織であり、民間セクターから様々な人材を採用し、政府内部で働く方針を採用している DigitalServiceのプロジェクト事例 • Work4Germany https://digitalservice.bund.de/en/fellowships/work4germany • 民間および非営利セクターから新しい働き方の専門家を期間限定で連邦政府機関に派遣し、新たな視点と専門知識の構築を支援する フェローシップ制度 • デジタル対応の法整備のためのDigital Check https://digitalservice.bund.de/en/projects/digitalcheck • 法案作成の上流段階でデジタルの実行可能性を評価し、技術的に円滑なデジタル導入を可能にするツールを開発 • 固定税申告の効率化 https://digitalservice.bund.de/en/projects/property-tax-return-for-private-property • 2022年の固定資産税改革に伴い、ユーザー中心のシンプルで分かりやすいオンラインサービスの構築を支援 • サービス標準(Servicestandard 2.0) https://digitalservice.bund.de/en/projects/servicestandard • ドイツにおけるオンライン行政サービスのデジタル化品質基準のさらなる開発のため、DigitalServiceでも採用 • 2025年3月にはDIN SPEC 66336が公表され、政府オンラインサービスにおける品質要件を13章で初めて定義 ドイツ GovTech機関
  31. 34 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 DigitalService|訪問内容詳細(2) サービス開発手法とアプローチの工夫 • 「小さく始める」戦略 • 小規模なプロジェクトから始めて成功事例を示し、その結果をもとに段階的に拡大する戦略 • 「ユーザーのことを知る」フェーズ

    • ほとんどのプロジェクトで、開発前にユーザーのニーズを深く理解するための徹底したユーザーリサーチを行う • 継続的なユーザーテスト • 初期のプロトタイプフェーズから頻繁にテストを実施し、全国の施設を訪問した現場の利用者によるテストを重視 • アジャイル開発 • 小さなサイクルでの開発と学習を重視し、フィードバックを素早く反映する仕組みづくり • ユーザー中心設計の徹底 • 常に市民の視点を考慮し、ステークホルダーの要望とユーザーニーズとのバランスを取る アクセシビリティへの取り組み • 過去に視覚障害者へのテストが遅くなり、後からサービスを変更した経験があり、早期段階でのテストの重要性を認識 • 例えば8人のテストユーザーがいる場合に、必ず1人はスクリーンリーダーやキーボードのみの利用者を含める • 全ユーザーにテストするのは不可能だが、各工程で加えた新たな視点を踏まえて修正する継続的改善のアプローチを意識 ドイツ GovTech機関
  32. 35 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 その他、ヒアリング|訪問内容詳細 イギリス在住日本人への行政サービスに関するヒアリング • イギリスでは、日本から引っ越してきた30代女性の方にヒアリングを行う機会も設けることができた • 属性情報:30代女性、子ども2人(6歳、3歳)、夫の仕事の転勤により2025年9月にロンドンに引っ越し • 公的な個人の証明について

    • イギリスには日本のような人口登録制度が存在せず、住んでいることを証明するには公共料金の請求書や銀行明細、 賃貸契約書などを使うことが一般的(日本のように全国で統一された住民票制度を持つ国は珍しい) • 日本のマイナンバーのような統一的な国民IDシステムは存在しないが、2025年に就労資格目的のためのデジタルID の義務化が発表されるなど、効率性や身元確認の正確性のため、現在進行中で取り組みが進行している • 学校情報の透明性や多様性への対応 • イギリスでは、生徒や教師の比率、人種構成、試験結果、学校の財務情報などのデータが教育省により公開(*13) • 保護者が十分な情報に基づいて学校を選択できる環境が整備されている • 外国語を母語とする子どもへのサポート体制や、障害を持つ子どもも同じクラスで学ぶなど、多様な価値観や人種 が前提で、学校側も柔軟に対応する姿勢がある • どんなアプリを新たにインストールしたか • 行政手続きでは、UK Immigrationアプリでの入国審査を最初に使ったほか、学校への支払アプリを使用 • 地域のイベント情報把握やコミュニケーションについては、FacebookやInstagramを使っているとのことだった (*13)Get Information about Schools – GOV.UK, https://get-information-schools.service.gov.uk/ [最終閲覧日: 2026/2/4]
  33. 36 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 得られた気づきや洞察|行政機関でのヒアリング • 専門人材の配置と外部組織の戦略的活用 • 行政内部にはデザインやアクセシビリティの専門家を配置して「ユーザー視点」を内部に埋め込む一方、失敗リス クのある試行錯誤やプロトタイピングは関連組織が担う役割分担が機能していた • これにより、行政内部では難しい「素早く作って試し、ダメなら止める」柔軟な開発が可能となり、民間出身者や

    異文化を持つ人材が組織に変革をもたらす動きが機能している • アクセシビリティの「デフォルト化」とプロセスへの組み込み • アクセシビリティ対応を開発後の修正事項とせず、調達時の必須機能要件や開発初期のテストプロセスに組み込む • 法制度や標準化だけでなく、デザインシステムの共通コンポーネントレベルで品質を担保することで、手戻りコス トを最小化している • 徹底した透明性による信頼の醸成と市民の自律 • 行政への信頼は、成功だけでなく失敗事例や不都合なデータの公開によっても醸成される • 行政が市民を管理するのではなく、市民自らが価値観に基づいて選択・判断できる環境を整備している • また、市民からのフィードバックに対して結果を返すことで、双方向の信頼関係を構築している • 「車輪の再発明」を防ぐ共創と横展開 • 他国や他都市で実証済みのオープンソースや共通基盤を積極的に採用し、リソースの浪費を防いでいる • デザインシステムやコードを他機関と共有可能な形で整備し、リソースの少ない地方自治体でも高度なデジタル サービスを利用できるよう、広域連携や相互援助を前提としたエコシステムの構築が進められている
  34. 37 目次4 今回学んだこと 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問詳細 4.

    今回学んだこと 5. 都政への還元と今後に向けて 6. まとめ
  35. 38 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 変化への適応と透明性|今回学んだこと 変化への適応を前提とする • たとえ何を作るか明確に定義されたプロジェクトであっても、利用者の前提は変わりうる(関連する別システムが登場す る可能性もある、法制度や社会状況も変化する)。計画の精度を上げても、環境の変化をコントロールすることは不可能 • だからこそ計画が崩れたときに軌道修正できる仕組みを持つことが、完璧な計画を立てることより重要だと感じた •

    ただし、全てを流動的にするわけではなく、「ユーザーニーズから始める」「誰ひとり取り残さない」という原則や、ア クセシビリティ・セキュリティなどの品質基準は変えないコアとして、それ以外を状況に応じて調整する すべてを「変数」として扱う • この前提に立つと、組織・体制、方法論、課題のスコープ、場合によってはゴール自体も固定されたものではなく、状況 に応じて調整しうる「変数」として扱う必要がある • 設定された問いを磨き、スコープを広げることで、課題が置かれている状況を幅広く深く理解できる。どの部分が比較的 安定しているか、どの部分が変わりやすいか、どこに手を打てば効果が大きいのか、などを把握することで、より確度の 高い仮説を立て、変化に応じて柔軟に変化に対応することができる 透明性は適応のための手段 • 早く公開してフィードバックを得ることや、意思決定のプロセスを可視化することにより、組織全体の学習を加速するこ とにつながる。これらはすべて、環境の変化を早く察知し、軌道修正するための手段となる • 透明性は、それ自体が目的なのではなく、変化に適応し続けるための条件となる
  36. 39 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 重要なプロセスや考え方|今回学んだこと 1. 解決策の前に「問い」を磨く:「何を作るか(What)」の前に「なぜ作るか(Why)」を具体化すること • プロジェクト開始時に、仕様策定前の「探索フェーズ」を必須とすることで、ユーザーニーズやユースケースを具体化する • Southwest Airlinesの事例における段ボールモックアップでのプロトタイプやPublic

    Digital、DigitalServiceによる経験知などが関連 • 解決策(アプリやシステム)に飛びつく前に、解決すべき真の課題をユーザーニーズなどから特定し、プロトタイプを作ってみるなど小さ く始めることで失敗を防ぐことができ、課題の明確化にもつながる 2. 文脈や制度をデザインの対象とする:UI改善だけでなく、法やルールのリデザインにより課題解決の確度が高まる • アプリの画面改善だけでなく、背後にある法制度やデータ連携の仕組み自体をデザイン対象とすることで課題解決の確度が高まる • DVVによる「Zero Touchサービスを実現するためには、法制度を含めたアーキテクチャの再設計が不可欠」という考えが関連 3. まずは内部からはじめ、信頼を築いて外部に展開する:職員体験(EX)の向上が市民体験(CX)の基盤となる • いきなり市民向けのサービスを展開するのではなく、内部の業務効率化を通じて、組織の対応能力と安心・信頼を確立することが重要 • Figmaのα版・β版を踏まえたユーザーへの公開のプロセスや、Microsoftのカスタマーゼロの概念などが関連 • 職員自身がデジタルツールの恩恵を感じていない状態で、良質な市民サービスを提供することは困難である 4. 変革を駆動する組織と人・体制の整備:「異文化」を注入しながら自走する組織を作る • 外部人材を単なる「助言者」としてでなく、組織文化を変える「暫定的なリーダーや推進者」として戦略的に配置し、マインドセットを 内部に浸透させる • Public Digitalの「スノーボール効果」やDigitalServiceの「Work4Germany」などが関連
  37. 40 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 行政DX推進のためのエコシステム|今回学んだこと • 政府 • デジタルに関する法制度の整備 • 共通基盤の構築(ID、認証、データ連携基盤) •

    標準、ガイドラインの策定 • 国全体のデジタル戦略の方向づけ • 広域自治体 • 国の方針や標準を、地域の実情に合わせて具体化 • 域内の基礎自治体間のシステム共通化・連携の推進 • 基礎自治体への技術的支援・人材育成 • 国と基礎自治体の間の「翻訳」 • 基礎自治体 • 住民接点でのデジタルサービスの実装、運用 • 利用者からのフィードバック収集と改善 • デジタルに不慣れな住民への支援(対面窓口との併存) • 行政と協働するデジタル組織 • 行政組織の近くで技術面からサービスの設計・構築を支援 • 行政の外の視点や他事例の知見を持ち込み、変革を加速させる • 民間企業 • プロダクトの提供による職員や利用者の体験価値向上 • 組織文化の変革やサービス設計の方法論に関する知見の提供 政府 基礎自治体 広域自治体 デジタル組織 デジタル組織 デジタル組織 民 間 企 業 協働 協働 協働 連携 連携 プロダクトや知見 を通じた外部支援 ツール・方法論・ 組織変革の支援 住民 サービス提供 フィードバック 政府・広域自治体・基礎自治体とそれぞれのデジタル組織、 民間企業全体のエコシステムを表した図
  38. 41 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 ユーザー価値を起点にするマインドセット|今回学んだこと 各レイヤーでデジタル組織が協働 • 訪問先では、政府にも基礎自治体にも、協働するデジタル組織が存在 • いずれも行政の「完全な内部」ではなく、外部組織として設立され協働 • 外に置くことで専門人材の確保や柔軟な動きを可能にしつつ、近い距離での協

    働により行政の文脈理解と継続性を担保 行政内部でもデジタル人材が活躍 • DVV、Kela、サンフランシスコ市はいずれも組織内にエンジニア等の技術人材 を抱え、自らデジタルサービスを構築・運用 • 外部デジタル組織に任せきりではなく、内部人材との協働により効果的に機能 • 東京都の外部に設立しながら近い距離で協働する形は、各国のデジタル組織と 共通の選択 「何を作るか」より「どう向き合うか」 • エンジニアが行政と協働すること、民間プロダクトを活用すること、外部から 組織変革を支援すること—手段はそれぞれ • 共通しているのは「ユーザーにとっての価値を起点に考える」という考え方を 行政組織に届けようとしている点 今回の訪問先 東京都・関連組織 凡例: 政府 基礎自治体 広域自治体 デジタル組織 デジタル組織 デジタル組織 民 間 企 業 協働 協働 協働 連携 連携 プロダクトや知見 を通じた外部支援 ツール・方法論・ 組織変革の支援 住民 サービス提供 フィードバック サンフランシスコ市 Salesforce Figma Microsoft DigitalService CityLAB Berlin Public Digital DVV Kela GovTech東京 東京都 行政DX推進のためのエコシステムを表した図に今回の訪問先各機関をマッピングしたもの
  39. 42 目次5 都政へ還元したいこと ・今後に向けて 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問詳細

    4. 今回の学び 5. 都政へ還元したいこと・今後に向けて 6. まとめ
  40. 43 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 個人やチームとして|都政へ還元したいこと(1) 1. 計画は仮説であるという前提で動く • Before:ウォーターフォール的に進めるプロジェクトでは、計画通りに進めることが重要だと考えていた • After:どんな進め方であっても、計画や前提は変化しうるものだと捉えるようになった。計画を守ること自体が目的で はなく、状況に応じて見直せる柔軟さを持つことが重要

    • 取り組むこと • システム全体や変化する可能性のある要素を把握し、スコープや解決策について関係者と明示的に合意しておく • 「これは今の時点での仮説」という共通認識を持ってプロジェクトを進める 2. 透明性を「批判」ではなく「改善の機会」と捉える • Before:自分の考えに対してもらう意見を批判と捉えてしまうことがあった • After:訪問先では、透明性は批判を受けるためではなく、早くフィードバックを得て改善するための手段として捉えら れていた。透明性に対する考え方自体が異なると感じた • 取り組むこと • 自分の業務を可能な限り関係者にオープンにし、フィードバックを改善の機会として活かす • 得た学びをナレッジ化し、チーム内で共有する
  41. 44 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 個人やチームとして|都政へ還元したいこと(2) 3. 問いを磨くことにリソースを使う • Before: ICT職として早く解決策を出すことが求められ、解決策に飛びつきやすかった • After:解決策に飛びつく前に、そもそも何を解決すべきかを明らかにすることが、結果的に手戻りを減らし、確度の高

    い解決策につながると理解した • 取り組むこと • 解決策を考える前に、システム全体がどうなっているか、解決すべき課題やスコープを明らかにする • 可能な限り実際の利用者や当事者に話を聞く努力を行い、一次情報にあたることを重視する 4. アクセシビリティの意識醸成から着実に始める • Before:アクセシビリティに考慮して事前に対応されている事例が少なく、「対応すべき要件」として捉えていた • After:訪問先ではアクセシビリティがデフォルトの前提として組み込まれていた。一方、日本ではまだ必要性の実感が 薄い段階にあると感じた。まずは意識醸成から着実に取り組む必要がある • 取り組むこと: • 様々な業務の前提条件にアクセシビリティが担保されているかを確認する習慣をつける(本報告書もGovTech東京 UIUXグループでアクセシビリティを担当する方、視覚障害を持つ方にアクセシビリティチェックを行った) • 必要性が実感されていない場合は、当事者実感を持てる機会を作る/声掛けをすることを心掛ける (例:スマホのスクリーンリーダーを実際に使ってみる、一時的な障害の疑似体験など)
  42. 45 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 ユーザーの方を向いて価値を届けるために|今後に向けて 【提案】利用者の声を聴きながら、東京都全体の”サービス”をユーザー視点で最適化する取り組みを行うこと ができる組織体制の構築、サービスデザイナー等の採用、組織内育成 • 東京都は国と区市町村の中間に位置する広域自治体として、全体を俯瞰しながら繋ぎ役を果たす役割があり、各組織や サービス全体の連環が求められる • 横断的にオンライン・オフライン問わずサービス全体を俯瞰し、ユーザー価値の高いサービスを提供するため、サービス

    デザインを専門とした役割を持つ組織(サービスデザインオフィス)を設置することで、東京都全体としてユーザー視点 でのデジタルサービス以外も含めたサービス最適化に組織的に取り組む • サービスデザインオフィスの取り組み案 • 現在東京都から提供されている様々な行政サービスやタッチポイントを利用者起点で可視化 • 利用者に実際にインタビューを行い、様々なサービスに関する満足度を調査 • 利用者視点に立ったユーザー体験や価値を再整理し、部門間連携によるサイロ解消の推進役を担う • 利用者起点で不要なサービスは止めることも推奨し、東京都全体の行政サービス体験の核となる • その中で、アクセシビリティの専門家なども体制に含め、主要なサービスのアクセシビリティ対応を行うほか、代替手 段が用意されているかも確認し、「誰ひとり取り残さない」行政サービスを支援 • アクセシビリティのチェック体制としてレビューフローに組み込む • アクセシビリティ・バイ・デフォルトの実践ができるよう標準仕様として要件を具体化 • 技術的な実装仕様までを支援できるエンジニアなどの専門家を採用し、多様な角度から支援できるようにする
  43. 46 目次6 まとめ 1. 背景・目的 2. 渡航概要 3. 訪問詳細 4.

    今回の学び 5. 都政への還元と今後に向けて 6. まとめ
  44. 47 ©令和7年度ICT職専門研修(海外派遣研修)|東京都デジタルサービス局 まとめ 今回の研修では4カ国9機関を訪問し、各国の歴史や置かれている状況を踏まえながら、デジタル化の難易度や進捗の違い を実感することができた。デジタルへの親和性やトップダウン/ボトムアップのアプローチなど、各国で異なる部分がある 一方、住民の声を聴くことや課題解決に向き合うマインドセットなど、共通して重要だと考えられる要素も確認でき、多く の気づきと示唆を得ることができた。 また、東京都やGovTech東京(日本)の行政DXの取り組みが世界と比べて大きく遅れているわけではなく、要所を押さえな がら着実に進んでいることを個人的に体感できたのは、今回の大きな収穫であった。自分たち(自国)の取り組みは課題ば かりに目が向きがちだが、こうした機会を通じて前進している点を確認することも、次の一歩を踏み出すためには必要だと

    感じている。 一方で、透明性の確保や失敗の公開、変化への柔軟な適応といった姿勢については、各国から学ぶことが多いとも感じた。 東京都でも都民の方々から声を聴き、プロセスを開示しながらサービスを改善していく取り組みは進んできているが、これ らをプロジェクトの前提となるマインドセットとして組織に根づかせていく働きかけが、今後さらに必要になると考える。 今回の学びを踏まえ、私自身は以下の3点に取り組んでいきたいと考えている。 • 住民向け・事業者向け・職員向けのアプリケーションを自ら使い込み、エンドユーザーの視点で課題にいち早く気づき、改善につなげる • 個別機能の改善にとどまらず、サービス全体の体験を俯瞰し、最適化に向けた提案ができるようになる • 各国の動向を継続的に収集しながら実践経験を積み、得られた知見を自分の中に留めず、チームや組織の財産として共有・蓄積していく 最後に、今回の海外研修の機会をサポートいただいた運営事務局の皆様、不在中の業務をサポートいただいた所属部署の皆 様、快く訪問を受け入れていただいた訪問先の皆様に心より感謝申し上げます。この経験を東京都およびGovTech東京の取 り組みに還元できるよう、引き続き尽力していきます。