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エンジニアリングマネージャー視点での、自律的なスケーリングを実現するFASTという選択肢 / ...

エンジニアリングマネージャー視点での、自律的なスケーリングを実現するFASTという選択肢 / RSGT2025

Yoshiki Iida

January 08, 2025
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  1. 6 FASTについて簡単に説明 • OSTから着想を得たフレームワーク • 提案されたアイテムに開発者が 集まりチームを結成 ◦ 流動的なチーム構成 ◦

    「何を開発するか」は “コレクティブ” の集合知で決まる • 個々の開発者の自律性が強く要求される ◦ ルールが非常に少なく自由度が高い 「動的なチーミングと自律 MAXで組織をスケールさせるアジャイルフレームワーク FASTとは?」 https://prd-blog.loglass.co.jp/entry/2024/09/12/181043 より
  2. 8 おことわり • FASTの話をしますが、FASTを実践しているのはLoglass経営管理 というプロダクトのみで、新規事業はスクラムで開発しているため、ス クラムをやめた話ではありません。 • エンジニアリングマネージャーはログラスにおいてはPeople, Product, Project,

    Technologyのうち、Peopleのマネジメント に軸足を置き、状況に応じてその他の領域もカバーするような役割と なっています。以下のスライドではマネージャーと記載します。
  3. 14 発生していた課題:アジャイルコーチの視点から (1) 行き過ぎたサイロ化 • 担当機能領域に閉じた開発をやっている限りは何の問題もなかった • 領域をまたいだ開発を始めた途端、問題が噴出した ◦ チームごとのカルチャーの違い

    → 摩擦、コンフリクトの発生 ◦ 1エピックに着手するたびに合同キックオフと、連携方法 の調整が随時発生 • まるで部署横断プロジェクトを毎回組んでいるようだった ログラスがスケーリングを検討した背景
  4. 15 発生していた課題:アジャイルコーチの視点から (2) プロダクトを俯瞰する視点の欠如 各チームの担当領域がユーザージャーニーを 「輪切り」にしており、開発者がユーザー体験を 俯瞰できない構造だった。 そのため、 • 真のプロダクト理解が阻害されていた

    • トータルでのユーザー体験を想定した 品質の作りこみができない状態だった (領域ごとの個別最適しかできなかった) User Journey チームA データ取込 チームB マスタ設定 データ変換 チームC データ 分析・出力 ログラスがスケーリングを検討した背景
  5. 16 背景まとめ • 課題 ◦ 機能領域を跨いだプロダクト全体の価値を捉えにくい ◦ 機能領域を跨いだ開発連携がしにくい ◦ 増員や異動の調整がやりにくい

    • 理想 ◦ 事業課題に対する全体最適の解決を全員で考えられるようになる ◦ 状況の変化に対して全員でアジリティ高く適応できるようになる 個々のスクラムの進化はそれぞれのチームで考えられるようになった。 ここからはもう一段上の視点からスケーリングを考えなければいけないのでは? 認知負荷の問題にもう一度正面から向き合おう ログラスがスケーリングを検討した背景
  6. 21 勉強会立ち上げの背景:ボトムアップな動きを作りたかった 当時は一部のリーダー的ポジションの人が と主導権を持って強く リードしがちだった。 しかし、 • トップダウンの動きだけでアジャイルのスケーリングは成功しない • 実質的に

     だけで全員がついてくるような人数規模ではなく なっていた そこで、あえてマネージャーが直接主導せず、草の根的なモメン タムをボトムアップに作りたかったのだが、そうしたムーブメント を起こせそうな人間が自分しかいなかった。 スケーリングの検討からFASTの導入へ
  7. 24 FASTを本格的に検証する意思決定へ • 勉強会での取りまとめとして、それぞれのフレームワークで現状課題は一定解消で きそうとなった ◦ どのフレームワークでも課題解決できる可能性はあったがプロセス的なGap が最も大きかったのがFASTだった • プロダクト組織全体での説明の結果として、チャレンジしたい、懸念は解消したい

    という意見が多かった(純粋な反対意見が意外と少なかった) • まだ(国内では)前例がないことにチャレンジしたいという純粋な好奇心もあっ た。この取り組みが我々にとっても業界にとっても大きな価値があると思った スケーリングの検討からFASTの導入へ 現場の反応をみていけるのでは?ほなやってみますか、となった
  8. 25 FASTにチャレンジできた背景 補足 ログラスの開発組織には「当たり前をアップデートしていく」 という意味の “Update Normal” というTech Value があり、「アプノマ」という愛称でメンバーに浸透していた。

    FAST導入の際にメンバーが「アプノマ」を口にする様子が 何度も観察され、変化を進んで受け入れようとするマインド の醸成に大きく寄与していることが伺えた。 スケーリングの検討からFASTの導入へ
  9. 27 実際の移行プロセス 1. 推進チーム内で推進プロジェクト自体をFASTで進めてみる 2. 組織全体でOSTに慣れていき、自律的な動きができている状態を理 解する 3. 従来のスクラムチーム内でミニFASTを試してみる 4.

    プロダクト全体でのFAST移行に向けた準備(※Big Pictureやガイ ドライン等) スケーリングの検討からFASTの導入へ ※Big Picture プロダクトゴールなど全体の目標とそれを達成 するための構成要素を可視化したもの。 ログラスではMiroでツリーを作成した。
  10. 34 自分がリードし続けることの危機感 • 場を設け、議論を前に進めることを責任を持ってやり切らなければい けないと思っていた • 最終的な組織全体の決めの問題をどう取り扱うか? ◦ 立場上マネージャーがオリャッと決めにいくことはできる ◦

    しかしそれをやり続けていたらFASTの原則を守れない • リードしなければいけないという思いと、このままではいけない という思いの両面を抱えていた マネージャーの立ち位置
  11. 37 導入の推進についての委譲 • みんなやりたい気持ちはある、、しかし移行の踏ん切りがつかない停滞期が 発生してしまった • 決めの問題だと理解し、組織全体に対して8月から始める、という方針を打 ち出すところまで実施し、そのあとは現場の推進チームに完全に任せていっ た ◦

    自分は推進チームからはフェードアウトする形を取った • 方針打ち出しから2週間程度で全体移行のためのガイドライン(社内では手 引きと呼んでいる)が作られ、移行することができた マネージャーの立ち位置
  12. 44 アジャイルコーチから見たログラス開発組織:まだまだなところ • 真のプロダクト理解はまだ遠い ◦ スコープを拡げた分、認知負荷は当然上がる ▪ プロダクトの複雑さ vs 開発者の認知負荷

    • コレクティブの結束力はまだまだ、個々人の理解度のばらつきも大き い ◦ 数十人規模、流動的チーミング ゆえの難しさ ◦ この点ではスクラムを懐かしむ人も FASTによって得られたもの
  13. 48 流動的なチームの考え方について • 拠り所にしたのは、エイミー・エドモンドソンの 「チーミング」の研究 ◦ “即興で作ったチームでもパフォーマンスを発揮 することがあるのはなぜか?” ◦ ここで発見されたファクターの1つが

    「心理的安全性」 • 「チームが機能するとは~」を推進チームの推薦図書に した • 「先行事例のない手法を導入する」際の心構えを よしきさんにアドバイスする際の根拠になった FASTの面白さ チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める 実践アプローチ、 エイミー・C・エドモンドソン 著, 野津智子 訳
  14. 52 Elastic Leadershipの使い分けの例 • 自己組織化モード ◦ 例)FASTの中で決まったことに従う。よりよい意思決定をするための情報提供で貢 献する。方針も自律的に考えてもらう。 • 学習モード

    ◦ 例)推進チームで一緒に試行錯誤を行い、仮説をアップデートしていく。方針だけ決め てあとは各自の自律性を引き出していく。 • サバイバルモード ◦ 例)緊急対応が必要になった際にトップダウンで優先順位を決め組織を動かす。組織 全体が最も対処すべきことにフォーカスできているか確認、モニタリングする。 FASTの面白さ FASTにおいては全て自己組織化モードでなければいけないと考えるかもしれない が、そうではない。 リーダーシップをとる人がサバイバルモードで動かすこともある。マネージャーに限ら ずそれが期待できるのがFASTのいいところなのではないか。
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