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大学授業における著作権/FD2022-azabu-u

Takahiro Sumiya
September 14, 2022

 大学授業における著作権/FD2022-azabu-u

Takahiro Sumiya

September 14, 2022
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  1. 自己紹介 2 1990 95 2000 05 10 15 総合科学部 情報メディア教育研究センター

    情報教育 共用端末 LMS コンテンツ作成支援 ePF eラーニングコンテンツ 動画 著作権処理 2016年から、 AXIES-csdの著作権TFで活動してます https://axies-csd-cr.blogspot.jp ©︎ 20 隅谷孝洋(すみやたかひろ) 広島大学 教授 情報メディア教育研究センター 次世代オンライン教育教育研究部門/eラーニング支援室 先進理工系科学研究科/情報科学部
  2. 他者著作物を授業利用する際の注意ポイント 6 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的)

    適用可能? 許諾をとる / あきらめる 利用 OK YES YES YES NO NO NO 授 業 外 の 一 般 利 用 も O K
  3. 自由利用可能か (1) ‣ それは著作物ですか? ‣ 著作権法で保護されます か? ✓ 著作物の種類 ✓

    保護期間 ‣ ライセンスはありますか? 7 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的) 適用可能? 許諾をとる / あきらめる 利用 OK YES YES YES NO NO NO
  4. 著作物とは何か 思想⼜は感情を創作的に表現したものであ つて、⽂芸、学術、美術⼜は⾳楽の範囲に 属するものをいう(著作権法第2条) 8 × 客観的なデータ × 誰が作っても 同じもの

    × ごく短いもの × アイデア × 工業デザインやおもちゃなど × 実用ソフトの画面表示(アイコンは?) × 憲法・法令などは著作権法では保護されない(著作権法13条)
  5. BRUNSKILL, (2011) これは著作物でしょうか? 11 学長 教 育 研 究 評

    議 会 経 営 評 議 会 役 員 会 監 査 室 https://www.apple.com/
  6. 著作物とは何か 思想⼜は感情を創作的に表現したものであ つて、⽂芸、学術、美術⼜は⾳楽の範囲に 属するものをいう(著作権法第2条) 12 × 客観的なデータ × 誰が作っても 同じもの

    × ごく短いもの × アイデア × 工業デザインやおもちゃなど × 実用ソフトの画面表示(アイコンは?) × 憲法・法令などは著作権法では保護されない(著作権法13条) 要注意
  7. 自由利用可能か (2) ‣ それは著作物ですか? ‣ 著作権法で保護されます か? ✓ 著作物の種類 ✓

    保護期間 ‣ ライセンスはありますか? 13 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的) 適用可能? 許諾をとる / あきらめる 利用 OK YES YES YES NO NO NO
  8. 著作権の存続期間の算出(日本人の場合) ‣ 著作者の生存中と,死後70年間(50条) 15 1970/mm/dd 1971/1/1 2040/12/31 … 70年 ※

    2018年までは死後50年だった… 1. 亡くなった年に50を足す。 2. 2017以下なら,その年の12/31までが存続期間。 3. 2018以上ならばもう20足した年の12/31までが。
  9. 日本が第二次世界大戦で交戦していた国に対しては、「戦時加算制度」があるので注意 連合国の国民の著作物は、戦争期間中日本で保護されてなかったはず、という前提 16 ※相手国により、戦争期間は異なる 1900 1920 1940 1960 1980 2000

    2020 2040 アーネスト ・ ヘミングウェイ (1899-1961) グレン ・ ミラー (1904-1944) コルトレーン (1926-1967) 1994 2011 2017 2005 2041 戦争期間 3794 日 1941.12.8-1952.4.28 2018年末に、保護期間が死後50年から70年に延長されたので、なおさらややこしい…
  10. 自由利用可能か (3) ‣ それは著作物ですか? ‣ 著作権法で保護されます か? ✓ 著作物の種類 ✓

    保護期間 ‣ライセンスはありますか? 18 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的) 適用可能? 許諾をとる / あきらめる 利用 OK YES YES YES NO NO NO ※ライセンスある=自由,じゃないです
  11. Creative Commons 24 Copyrighted 全ての権利を主張 Public Domain 全ての権利を放棄 Creative Commons

    作品の再利用を許しつつ、 いくつかの権利を主張 表示 (BY) 作品のクレジットを表示すること 非営利 (NC) 営利目的での利用をしないこと 改変禁止 (ND) 元の作品を改変しないこと 継承 (SA) 元の作品と同じライセンスで公開すること https://creativecommons.jp
  12. (補足)「著作者の権利」について,整理するとこうなります 26 著作者の権利 著作者人格権 著作権(財産権) 公表権 氏名表示権 同一性保持権 複製権 上映権

    公衆送信権 送信可能化権 口述権 展示権 頒布権 譲渡権 貸与権 翻訳・翻案権 二次的著作物の 利用に関する原 著作者の権利 (18〜21条) (21〜28条)
  13. (補足)罰則を他の罪と比較(?)すると… ‣ 著作権侵害:十年以下の懲役もしくはatu 以下の罰金,またはその両方(119条) ‣ 親告罪(123条) ✓ ただし,営利目的で有償著作物を原作のまま公衆送信(またはそ のための複製)をしたものを除く ✓

    引用の際の出所表示義務違反(122条,50万円以下の罰金)も除 く 28 0 5 10 15 傷害 著作権侵害 窃盗 業務上横領 住居侵入 不正アクセス 業務妨害 懲役(年) 「1千万円以下の罰金」 特別背任,営利目的覚醒剤輸出入,児童売春斡旋業など
  14. 他者著作物を授業利用する際の注意ポイント 29 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的)

    適用可能? 許諾をとる / あきらめる 利用 OK YES YES YES NO NO NO 権 利 制 限 適 用 ?
  15. 「引用」は、著作権侵害にならない転載 30 (引⽤) 第三⼗⼆条  公表 著作物 、引⽤ 利⽤ 。 場合

    、 引⽤ 、公正 慣⾏ 合致 、 、報道、批評、研究 他 引⽤ ⽬的上正当 範囲内 ⾏ 。 • ほぼあらゆる利用ができる ⭕ • 適法な引用となるための条件がきつい • 元のものを変えてはいけない(翻訳は可) ❌
  16. 「引用」の適用ができるかどうかは結構重要 → 「引用」の範囲で使っていれば,オープンにできる ‣ 適法な引用になるか判断が難しい ✓ 権利者と利用者で相当のギャップ ✓ 専門家でも言うことが結構違う ‣

    資料だけで引用にならない場合も ✓ 講師の説明が主で資料が従 ✓ 講義動画ならOKでもLMSでの資料だけの掲示 が微妙な場合も(引用にならなくても授業利用にはなりうる) 33
  17. 他者著作物を授業利用する際の注意ポイント 34 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的)

    適用可能? 許諾をとる / あきらめる 利用 OK YES YES YES NO NO NO 権 利 制 限 適 用 ?
  18. 35条の改正 → 授業目的公衆送信補償金制度 35 旧35条 第1項 要件を満たせば、 授業目的の複製は 無許諾で可 第2項 同時中継型の場合、

    授業目的の公衆送信は 無許諾で可 改正35条 第1項 要件を満たせば、授業目的の 複製・公衆送信・公の伝達は 無許諾で可 第2項 上記の公衆送信を行う場合は、 「教育機関の設置者」が 補償金を著作権者に支払う 第3項 同時中継型の場合、 授業目的の公衆送信は 補償金不要 2015年から議論 2018年5月25日公布 2020年4月28日施行 補償金(授業目的公衆送信補償金)の扱いについては104条の11〜17
  19. 授業目的複製・公衆送信の基準は… 37 第三⼗五条 学校 他 教育機関(営利 ⽬的 設置 除 。) 教育

    担任 者及 授業 受 者 、 授業 過程 利⽤ 供 ⽬的 場合 、 必要 認 限度 、公表 著作物 複製 、若 公衆 送信(⾃動公衆送信 場合 、送信可能化 含 。以下 条 同 。) ⾏ 、⼜ 公表 著作物 公衆送信 受信装置 ⽤ 公 伝達 。 、当該著 作物 種類及 ⽤途並 当該複製 部数及 当該複製、公衆送信⼜ 伝達 態様 照 著作権者 利益 不当 害 場合 、 限 。 2 前項 規定 公衆送信 ⾏ 場合 、同項 教育機関 設置 者 、相当 額 補償⾦ 著作権者 ⽀払 。
  20. 役割を再確認 ‣ 補償金の管理団体 ✓ 著作権管理団体の協議会が母体 ✓ 補償金制度の設計 ✓ ライセンス制度の設計 ‣

    中立の「意見交換の場」 ✓ 教育機関と著作権管理団体が同数の委員を ✓ 有識者も参加。関係省庁も出席 ✓ 35条運用指針(ガイドライン)を策定 39 SARTRAS フォーラム 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム 授業目的公衆送信補償金等管理協会
  21. 運用指針 ‣ 用語定義+事例 41 ① 複製 ② 公衆送信 ③ 学校その他の教育機関

    ④ 授業 ⑤ 教育を担任するもの ⑥ 授業を受けるもの ⑦ 必要と認められる限度 ⑧ 公に伝達 ⑨ 著作権者の利益を不当に害することとなる場合
  22. 運用指針の主な内容(大学関係に絞っています) 42 「教育のDXを加速する著作権制度」(文化庁) p.14 を改変, 2021/01/29, オンライン説明会 https://sartras.or.jp/educationcopyright/ 用語 対象の例

    対象外の例 公衆送信 LMSなどへの掲載/電子メール一括送信 (履修生以外にもアクセスできるもの) 授業 単位の出る授業/教員免許状更新講習/公 開講座、規模の制限あり/履修証明プログ ラム ※予習,復習は「授業の過程」とする 大学説明会,オープンキャンパスでの模擬 授業など/FD,SD/サークル活動/自主 的なボランティア活動 教育を担任する /授業を受ける 者 教授,講師など、名称,雇用形態は問わない /学生,科目等履修生など実際に学習する もの/事務職員など教育支援者,補助者 (支援業者に依頼するもの) 必要と認められ る限度 例示なし ※必要性は授業担当者が判断,主 観のみでなく客観的に説明できること 文献情報を示せば足りるような参考資料 の複製・公衆送信 著作権者の利益 を不当に害する 場合 ※ 多くの記述があ るので「運用指針」 を参照のこと (不当に害する可能性が低い例) 受信者の数は履修生の数まで/新聞の一つ の記事/テレビ番組を投影しているところ を録画して送信/一報の論文全部。ただし、 発行後相当期間が経っているなどいくつか の条件あり (不当に害する可能性が高い例) 放送から録画した映画や番組の全体/授 業を履修する学生の数を超える利用/試 験対策問題集など学生購入を前提とした もの/小部分の複製を繰り返し,結果とし て大部分になるもの 括弧書きは、運用指針には直接の記載がないもの
  23. SARTRASについてこれまでの動向 ‣ 2018年11月:「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」発足 ‣ 2019年1月:SARTRAS設立 ‣ 2020年4月:35条運用指針公開(フォーラム) ‣ 2020年4月:改正著作権法施行。コロナ対策として補償金0円で制度開始 ‣

    2020年12月:35条運用指針2021年度版公開(フォーラム) ‣ 2021年4月:補償金制度本格稼働開始 ‣ 2021年7月:2021年度「利用報告」 1000校へ依頼送付 ‣ 2022年3月:共通目的事業公募開始(6月まで) ‣ 2022年6月:補償金分配規定一部変更 ‣ 2022年5月:分配のための調査開始 ‣ 戸惑う人々 https://twitter.com/i/events/1563192870848188416 44
  24. 補償金… 45 管理 手数料 共通目的事業 分配額 補償金 約5,000,000,000円 SARTRAS 教育機関

    著作権管理団体 補 償 金 支 払 分 配 分配 所属 \ \ \ 著作権者 教員/学生 利用調査 \ 2022.6.20から
  25. 他者著作物を授業利用する際の注意ポイント(まとめ) 48 自由利用可能? 32 条 (引用) 適用可能? 35 条 (授業目的)

    適用可能? 許諾をとる / あきらめる YES YES YES NO NO NO □ 著作物か? □ 保護期間内か? □ ライセンスがあるか? □ 公表された著作物? □ 公正な慣行に合致? □ 正当な範囲内? □ 基本的な要件をみたす? □ 必要な限度内? □ 著作権者の利益を不当に害さない? OK 利 用 実 際 平 行 可 能 性 考 慮
  26. (おまけ)よくある質問 ‣ テレビ番組の録画をZoom/Teams会議で共有してもよい ですか? ‣ 映画のワンシーンを動画ファイルとしてLMSに掲載しても 良いですか? ‣ 絶版の本を複製して共有しても良いですか? ‣

    授業で論文1本を共有しても良いですか? ‣ 授業で使った資料を一般の講演会で使っても良いですか? ‣ 教員が知らないうちに,学生が著作権を侵害するものを LMSの掲示板に載せてしまった。誰に責任がありますか? ‣ 授業目的の公衆送信は,授業が終わったら止めなければな らないですか? 50
  27. (おまけ)よくある誤解 ‣ 出典を書けば,著作権法上の「引用」になる ‣ 学術論文の図表は「引用」できない ‣ 教員が補償金を払わなければならない ‣ 補償金を支払っていない大学の授業で公衆送信をすると, 著作権侵害になる

    ‣ SARTRASに参加している著作権管理団体のもの以外は 使えない ‣ インターネットで公開されている資料はこの制度とは関係な い ‣ 外国の著作物は使えない ‣ SARTRASは新しい天下り団体だ 51
  28. 関連URL ‣ 教育用著作物ネット配信制度 ‣ 著作権法条文 (e-GOV) ‣ 授業目的公衆送信補償金制度のオンライン説明会 ‣ 改正著作権法第35条運用指針(2021年度版)

    52 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/92223601_01.pdf https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048 https://sartras.or.jp/entrance/ https://forum.sartras.or.jp/info/005/