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IT子会社のグローバルトレンド #scrumsendai / Global Trends in...

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August 30, 2025

IT子会社のグローバルトレンド #scrumsendai / Global Trends in IT Subsidiaries

ITをとりまく買収やジョイントベンチャー設立や子会社設立は最近では珍しくない話です。一方で大企業におけるIT子会社の成功している部分と課題も聞くようになりました。本講演ではグローバルおよび日本のIT子会社の状況を独自にサーベイしたものを紹介します。

国内のIT子会社では「親会社への収益依存」「DXの障壁」「構想策定力不足」という3つの課題が大きくとりあげられており、関連する論文およびサーベイ結果を交えて紹介します。また、経営層向けのグローバルカンファレンスと日本国内カンファレンスの傾向を比較検討し、これらの動向とサーベイ結果との相互関係から各国のIT子会社の状況について考察します。

IT子会社の現状と未来に関する議論の土台として聞いていただけます。

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Transcript

  1. 2

  2. 各種レポートの紹介 • 発行元 経済産業省 • 発行年 2022年 • 概要 2018年のDXレポート、

    2020年からのコロナ 禍をふまえてDXの実 態を調査したところ、 全社DXをしているの は5%にとどまってい る • 発行元 NRI • 発行年 2022年 • 概要 国内企業の情報・デ ジタル子会社47社を 対象に調査 企画力不足、新技術 への感度の低さ、不 十分な育成環境に対 する問題意識が高い 5 DXレポート2 情報・デジタル子会社における 今後の方向性と課題 • 発行元 Dell Technologies • 発行年 2021年 • 概要 ビジネスリーダーの 85%は人材が「最大の 資産」であると考えて いるが、従業員が潜在 能力を十分に発揮して いないと回答。 64%が、自社のDX計画 の失敗の多くが人的側 面に起因していると回 答している DX動向調査2021 出典 : State of Testing Report 2025 PractiTest社より作成
  3. グローバルではオフショアにIT子会社設立し、グローバ ルケイパビリティセンターとして成立するようにする • ベンダー選定、ベンダーマネジメ ントにたいするコストや品質管理 が大変であることから自社で開発 できるようにするモチベーション が高まっている。 • IT部門の子会社化という側面と、

    グローバルに展開できるケイパビ リティセンターとしてオフショア に設立して雇用の促進とコスト効 率化も兼ねていることが多い。 • 北米、欧州では親会社のCIOやビジ ネスリーダーの直下に置かれて親 会社IT部門の延長として扱うこと で統一的なガバナンスを利かせる ことができる。 • これにより55%の会社では約20%の コスト低減に成功している。 6 ベンダーへの忌避からIT子会社設立 統一的なリーダーシップの重視
  4. IT子会社は内部統制を利かせて高い品質を低いコストで 戦略的に提供し続けるようにするのが主流である • 北米、欧州では戦略的に自社のコ スト低減、品質向上を狙ってIT子 会社の立ち上げ運用をしている。 IT子会社の立ち上げを検討してい る企業のうち78%は内部向けのみで 検討している。 •

    AmazonからのAWSやルフトハンザか らルフトハンザシステムズなどの ごく一部が他社へのサービス提供 で大きな利益を獲得している。 • 外販をする場合には混合させずに 外販向けの会社と内部向けとで分 けることがおおい。 • 内部向けのコスト効率重視でおこ なうためには、グローバル展開で きる程度の需要の大きさがなけれ ばコスト効率は外部ベンダーに勝 つことができない。 • 規模が小さく行き詰った結果、IT 子会社を閉鎖もしくは売却する企 業が50社以上存在する(2020 年から2023年) 7 外販する企業は一部である グローバル展開できる前提
  5. 国内IT子会社における課題3つ • 日本企業特有のグループ 経営文化に起因する部分 もあります。親会社向け 業務が大半を占めている。 だが、グループとしての ガバナンスが不足してお りコスト効率化を達成し にくくなっている。

    • コスト効率化をするため のリーダーシップを発揮 できない状況にあるため、 収益を高めることを求め て 、 外 販 へ の プ レ ッ シャーがつよくなるが、 人材のミスマッチがおき る。 1. 人材確保 2. 予算の確保 3. 予算のROI 4. ゴールや戦略の決定 5. 経営層の合意 • 国内IT子会社は自社の開 発及びDXを求められてい るが、上記トップ5が理 由で親会社のDXが進まな い。2,3についてはコスト 効率を出せるほどの規模 がないことの証左であり、 5は先述のとおりであり、 1は人口減少でさらに悪化 している。 9 リーダーシップとコスト効率 DXの障壁 • ほとんどのレポートでは、 国内IT子会社は親会社の 経営課題・戦略を反映し たIT戦略を立案する能力 の不足を指摘している (グローバルではむしろ コンサルティングや先端 技術への投資を積極的に している) • 親会社のリーダーシップ が不足しているなかでIT 子会社が受け身のため、 お見合い状態が続いてし まう。 構想策定力不足 出典 : DX動向調査 Dell Technologiesより作成
  6. 各種レポートからみる国内IT企業への提案 • IT子会社をコスト削減の 装置から、IT戦略立案の 組織へと転換する • 親会社のDXを牽引できる 能 力 を

    備 え た 上 で 、 グ ループ外へのサービス提 供を拡充し、自社の収益 基盤を強固にする • DX先進企業の約25%が 「失敗を恐れない文化」 があると回答したのに対 し、未推進企業ではわず か4%である。 • 失敗を許容する文化にす るには多面的な施策が必 要である • 人材戦略(採用・育成) • レガシーシステム刷新 • 組織文化改革 • 経営層のコミットメント 10 外販モデルへの転換 失敗を許容する • 構想策定力強化の5つの 要素 • デジタルビジョンを構想 する力 • 新規デジタルビジネスを 創発する力 • ビジネスを拡大する力 • それを支えるシステムを 構築する力 • 組織・人材・文化を作り 上げる力 構想策定力強化 出典 : DX動向調査 Dell Technologies、情報・デジタル子会社における今後の方向性と課題 NRI より作成
  7. グローバルIT子会社における課題3つ • 内部向けのコスト効率重 視でおこなうためには、 グローバル展開できる程 度の需要の大きさがなけ ればコスト効率は外部ベ ンダーに勝つことができ ない。 •

    規模が小さく行き詰った 結果、IT子会社を閉鎖も しくは売却する企業が50 社以上存在する(202 0年から2023年) • 大規模な人材プール(イ ンド、ポーランドなど) へのアクセスを目的とし て設立されるが、熟練し たIT専門家の確保と維持 は依然として困難である。 世界的に、企業は「戦略 的人材不足」が新たな採 用モデルの必要性を促し ていると訴えている。 • 従業員がキャリア成長に 制限を感じれば、より良 い機会を提供するベン ダーや他社へ移籍してし まうし、保守業務のみを 扱う場合、この傾向はさ らに顕著になる。 11 規模拡大とコスト効率 人材不足とスキルギャップ • 国境を越えてIT子会社を 運営すること(グローバ ルなキャプティブに共 通)は、コンプライアン ス上の課題がある。 • データセキュリティ、知 的財産保護、規制順守に 対するマネジメントと体 制確保の重要性が高い 規制とセキュリティ 出典 : State of Testing Report 2025 PractiTest社より作成
  8. CIOがもつべき力と経営チームの知識獲得が鍵である • 321組織を対象にCIO/経営チームの ペアを調査した • CIOの主体的なリーダーシップが組 織のアジリティを達成する上で極 めて重要であり、多様なタイプの CIOの経営陣の権力(構造的権力、 専門的権力、威信的権力)がCIOの

    主体的リーダーシップを強化し得 る • CIOの主体的なリーダーシップの好 影響をより効果的に活用するため には、経営チームが多くの戦略的 IS知識を蓄積する必要がある 13 Chief Information Officer and Organizational Agility: Exploring CIO Power and Demand Side Leadership Zhang, Yanlin; Zhang, Xuwei; Chen, Daniel; Xiao, Jinghua; and Xie, Kang, "Chief Information Officer and Organizational Agility: Exploring CIO Power and Demand-Side Leadership" (2024). Hawaii International Conference on System Sciences 2024 (HICSS-57). 7. https://aisel.aisnet.org/hicss-57/os/it_governance/7
  9. デジタル技術を活用したビジネスにおける社内起業家の フレームワークをサーベイから導出した事例 • 1980-2023年の386の灰色文献を対 象にし、最終的に36の文献がもと に理論を構築した。 • 社内起業家に求められる質を次の 3つと定義した •

    対象現象の基本的性質をカプセル化す る • 循環論法や同語反復を避ける • 簡潔に定式化すること • プロダクト、サービス、プロセス、 ビジネスモデルイノベーション、 コーポレートベンチャーをアウト プットするというのが社内起業家 である 14 What is Digital Intrapreneurship? Insights from a Structured Literature Review. Pätzmann, Lena-Marie & Cahenzli, Marcel & Bitzer, Michael. (2024). What is Digital Intrapreneurship? Insights from a Structured Literature Review. 10.24251/HICSS.2024.649.
  10. 各カンファレンスの比較 リーダーシップとコス ト効率 DXの障壁 構想策定力不足 scrum sendai 2 0 1

    経営情報学会2024 4 2 0 HICSS2024 11 14 13 16 経営情報学会採択論文、HICSS採択論文との比較
  11. まとめ • グローバルでは経済規模に合わせたIT子会社化設立の戦略とリーダーシッ プをとっており、適切なコスト効率化とDXができている。 • だが、日本国内ではIT子会社が親会社依存をやめるべきと言われている。 これは日本国内の市場がある程度あることで国内にとじがちで、デジタル 赤字につながっている話に通ずる課題である。 • 米国では会社ごとに役割を変えているが、日本国内ではミックスしていることがお

    おく、それがうまくいっていない。とるべきリーダーシップの違いを意識できてい ない可能性がある。 • IT子会社の課題に向き合っているカンファレンスや学会は国内ではすくな いが、HICCSのようなトップカンファレンスでは言及されており、論文が 参考になりそう。 17 全体の所管
  12. デジタル赤字とAI時代という2つのトレンド • 高利益率・高成長率の資本・知識 集約型事業(アプリケーション、 ミドルウェア/OS、計算資源インフ ラ、デジタル広告)の市場シェア は軒並み外資に押さえられている • ベースシナリオで2035年に約18兆 円のデジタル赤字を計上する見込

    み • 第四次産業(AI)革命に伴う悲観シ ナリオでは、約10兆円の追加赤字 が見込まれ、総額約28兆円に達す る • AIのための学習データは今後 2028年には枯渇の可能性 • 一次データの重要性が急激に高 まる • データの保存先や所有権が国益 を大きく左右する世界がくる • データがなければ価値あるソフ トウェアが生み出せず、競争力 が維持できない「聖域なきデジ タル市場」が確実に迫っている 19 デジタル赤字 AI 出所 : 経済産業省 デジタル経済レポート 2025/08/01 参照
  13. レポートのバイアスを疑って取り組む • コスト最適化のためにIT子会社は 作られるが、大規模に展開できな いかぎりは外部ベンダーに対して コストメリットが出ないうえに、 日本国内であればデジタル貿易赤 字になっており、企業、国の双方 にとってデメリットが大きい。 •

    企業と国がともに黒字化する戦略 を双方から実践していくことが求 められているし、そのために製造 業系IT子会社などの機能整理と リーダーシップは重要な論点であ る • 外販をすべきという国内レポート が多いが、グローバルとは逆行し ており各種レポートの視野が狭い 可能性がたかい。 • これはデジタル経済レポートがあ ぶりだしてくれたように、現在の レポートは各国の実態をふまえた 比較ができていない可能性を示唆 している。 20 IT子会社にお金を払ってもデジタル赤字 国内レポートの元ネタが国内CIO
  14. グローバルファーストとリーダーシップが鍵となる • 最初からグローバルで成功するプ ロダクトの立ち上げと成長へのコ ミットをするような人材不足が大 きい。 • 国内はこれからリソースの縮小化 からはじまって、市場の縮小化が 見込まれ、米国、中国、欧州との

    差が大きくなるばかりなので、グ ローバルファーストで事業にコ ミットできる人材確保が重要であ る。 • 各種制度設計を含めた経営戦略 の策定と実行をトップダウン、 ミドルアップ、ボトムアップで 進められる組織への変革が必要 である • 国内IT子会社とスタートアップ では得意なことが異なるため、 双方の良さを最大化するような 経営モデルを追求していくべき で、国内IT子会社がなんでもで きるようになるには規模の経済 を生かすような覚悟が必要とな る 21 グローバルファーストへの転換 IT子会社の良さを活かす