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モノリスから小さなシステムへ / Chatworkシステム移行の現在地と今後について@開発生産性カンファレンス

tan-yuki
June 29, 2024

モノリスから小さなシステムへ / Chatworkシステム移行の現在地と今後について@開発生産性カンファレンス

2024/06/29(土)開発生産性Conference2024での登壇資料です

tan-yuki

June 29, 2024
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Transcript

  1. 自己紹介 名前 田中 佑樹(たなか ゆうき) 経歴 エンジニア󰞵 ⇢ EM󰳗 誰?

    Chatwork株式会社 執行役員 兼 CP本部 副本部長 お仕事 プロダクト人材に関わる採用や 組織開発など。 2
  2. 事業概要 *1 Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView Customized Report 2023年5月度調べ月次利用者(MAU:Monthly

    Active User)調査。 調査対象はChatwork、Microsoft Teams、Slack、LINE WORKS、Skypeを含む44サービスをChatwork株式会社にて選定。 *2 2024年3月末時点 • 国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」を展開。 業界のパイオニアであり国内利用者数No.1*1、導入社数は44.1万社*2を突破 • 圧倒的な顧客基盤とプラットフォームを背景に、DXされた業務プロセスそのものを提供する クラウドサービス、BPaaSを展開 BPaaS (Business Process as a Service) ビジネスチャット「Chatwork」 お客様 オペレーター 6
  3. 単位:% ビジネスチャットの市場環境 *1 当社依頼による第三者機関調べ、2023年12月調査、n=30,000 *2 内閣府「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」より テレワーク率の変化 東京23区 全国

    ビジネスチャット ツールを利用している 未だ低水準に止まる ビジネスチャット国内普及率*1 DX推進の流れを受け テレワークが急激に普及*2 普及率は19.0%ほどで、非常にポテンシャルが大きいマーケット 7
  4. 「Chatwork」の企業規模別 有料ユーザー割合 「Chatwork」のポジショニング プロダクトのターゲットを中小企業としているため、 主要な競合とは、中心となるターゲット層が異なっている 企業規模 大 企業規模 小 ITスキル

    低 ITスキル 高 B社 中小企業を中心とした独自のポジショニング B社 A社 有料ユーザーのうち、ユーザー数ベースで 300人未満の契約が97.2%を占める*1 ※中小企業が大半であり、個社依存が少なく安定 *1 2024年3月末時点 8
  5. 長期ビジョン:ビジネス版スーパーアプリ ドキュメント 管理 Web会議 タスク管理 プロジェクト管理 ストレージ エンゲージメント SaaSで業務効率化 CRM/SFA

    BPaaSで業務提供 人事評価 採用 電話代行 勤怠管理 労務管理 経営支援 資金調達 助成金 請求管理 契約管理 決済 会計 受発注管理 Chatworkはビジネス版スーパーアプリへ スーパーアプリ = プラットフォーム化し、あらゆるビジネスの起点になるアプリ • ビジネスチャットは、他SaaSと比較して圧倒的に滞在時間が長く、プラットフォームとしての価値が高い • Chatworkはオープンプラットフォームとして、様々なサービスやユーザー同士の連携が容易 BPaaSで業務提供 コアビジネスに注力できる環境 9
  6. • ビジネスチャットは、業種や職種問わず、全従業員が業務時間中を通して使い続け るという特性を持つ • そのため、トラフィック量が膨大になる傾向 • 24時間365日止めることのできない、ビジネスにおける”インフラ”となるサービス =パフォーマンスとシステムとしての信頼性、どちらも高いレベルで担保する必要がある 高い非機能要件 利用ユーザーの多さ

    導入社数 ※ 2024年3月末時点 44.1万 登録ID数 685.3万 DAU 112.4万 現状のトラフィック量 www.chatwork.comのCloudFrontのメトリクス。 リクエスト量が現時点(※)で毎分106万ほど。 秒間約1.7万以上のリクエストをさばいている。 ※ 2024年2月時点 システムの特徴 14
  7. リプレイス作業の現在地点 目的 • 今後の事業成長のブレーキとならないためのシステム性能限界の解消 • 今後の事業成長をより加速させるための開発生産性の向上 現在地点 • DBへの負荷が高いシステムのリプレイスを実施中 今後の課題

    • このリプレイスを完了できたとしても、一部分のリプレイスにとどまってしまい巨大なアーキテク チャ全体に対してどのように戦っていくのかの戦略検討を深めていきたい • 今後の全体のアーキテクチャをどのように進化させていくか、のVisionを示す必要がある 16
  8. 開発生産性? 生産性とは? • アウトプット ÷ インプット • どの程度のインプットで、どの程度のアウトプットが出せたか? ソフトウェア開発における開発生産性とは? •

    アウトプット ◦ ソースコード、プルリクエスト量、開発した機能数、ユーザー満足度、売上、etc… • インプット ◦ 労働時間、労働人員、etc… 参考)開発生産性について議論する前に知っておきたいこと 18
  9. ソフトウェア開発ライフサイクルの指標 Lead Time, Cycle Time & Change Lead Time •

    Lead Time: バックログに積まれてから(事業責任者が意思決定してから)デプロイまでにかかる時間 • Cycle Time: 開発開始してからデプロイまでにかかる時間 • Change Lead Time: コードが 最初にcommit されてからデプロイまでにかかる時間 First Commit 24
  10. アーキテクチャ刷新は開発生産性へどう影響を与えるのか? • 「狭義の開発生産性」への影響 … 保守性の向上・変更や拡張のしやすさ ◦ 狭義の開発生産性:Cycle Time / Change

    Lead Time • 「広義の開発生産性」への影響 … 組織構造の最適化 ◦ 広義の開発生産性:Lead Time アーキテクチャ刷新と開発生産性との関係性 25
  11. 「Chatwork」のリプレイスの歴史のふりかえり • 「Chatwork」は過去にメッセージ機能のリプレイスを実施 ◦ 大規模なリプレイスを計画し、年単位のPJを実施したが途中で挫折 ◦ その後、メッセージ機能にのみ焦点を当てリプレイス作業を実施 参考)Chatworkの新メッセージングシステムを支える技術 • その後もいくつかのサブシステムを実装・リリース

    • 現状は他の領域へのリプレイスも計画・実行に移している状態 ◦ しかし、10年以上の歴史が積み重なったアプリケーションを すべてリプレイスするのは非常に難易度が高い ◦ 現在は特に負荷の高い部分に範囲を絞りリプレイスを実施中 27
  12. タスクフォースチームの具体的なタスク ゴール(再掲) • 将来必要になるであろうアーキテクチャと組織体制を定義する • そこへ向かう道筋を示し、組織全体が「今何をするべきなのか?」が理解されている状態を目指す 想定インクリメント • AsIs(現状)の分析 ◦

    現状把握 / 課題認識、イシューの特定 / ドメイン分析 / 開発プロセス • Visionの策定 ◦ 理想的な組織体制 / 組織体系に沿ったアーキテクチャ • 戦略の策定 ◦ Visionに向かうまでの時間軸を伴う方針 ◦ 具現化する上で必要なCapability、採用計画 34
  13. タスクフォースチームの成果 • 当初、3週間(3 Sprint)と最初に期間を決めゴールを目指す ◦ 毎週スプリントを実施し、ステークホルダー(= チームの代表者、PdM)からのレビューを実施 • なんとか期間内で目標自体は達成 🎉

    ◦ 自分はファシリテーターとして振る舞い、今後やることついての取りまとめ、レビュー会のファ シリテーションなどを担当 • 方向性についてはある程度見えてきた スプリントレビュー用資料 スプリントレビューに対してのコメント 35
  14. モノリスの種類 • 「Chatwork」のシステムに当てはまっているモノリス ◦ アプリケーションモノリス ◦ データベース結合モノリス ◦ モノリシックビルド /

    モノリシックリリース (出典)マシュー・スケルトン,マニュエル・パイス.『チームトポロジー 価値あるソフ トウェアをすばやく届ける適応型組織設計』.日本能率協会マネジメントセンター.2021年 ソフトウェア開発組織について語るためには 避けては通れない神本 39
  15. • データベース結合モノリス ◦ データベース結合モノリスは、同一のデータベーススキーマと結合している複数のアプリケー ションやサービスから構成されており、それぞれ別々に変更、テスト、デプロイするのが難し い。これは、組織がサービスではなくデータベースをコアのビジネスのエンジンだと考えている 場合に発生することが多い。* • 現在の状態 ◦

    複数のシステムがありながらそれぞれのアプリケーションが共通のデータベースに依存し、 強い整合性を前提として設計されている ◦ データモデルの変更難易度が高く、データベース分割などの改善を行うのも難しい データベース結合モノリス *(出典)マシュー・スケルトン,マニュエル・パイス.『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』.日本能率協会マネジメントセンター.2021年.p138 42
  16. モノリシックビルド / モノリシックリリース • モノリシックビルド ◦ モノリシックビルドでは、コンポーネントの新バージョンのために、単一の巨大な継続的インテ グレーション(CI)でビルドを行う。アプリケーションモノリスがモノリシックビルドをもたら すが、小規模なサービスでも同じ問題は起こりうる。* •

    モノリシックリリース ◦ モノリシックリリースは、小さなコンポーネントをまとめて「リリース」する。コンポーネント やサービスはCIで独立してビルド可能でも、サービスのモックは使わず共有の固定環境でしかテ ストできない場合、全コンポーネントの最新バージョンをまとめて同一の環境に導入することに なる。コンポーネント一式をひとかたまりとしてデプロイすることで、テストしたものが本番環 境でも実行されるという確証を得るのだ。** *(出典)マシュー・スケルトン,マニュエル・パイス.『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』.日本能率協会マネジメントセンター.2021年.p139 **(出典)マシュー・スケルトン,マニュエル・パイス.『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』.日本能率協会マネジメントセンター.2021年.p139 43
  17. デプロイメント分割のメリット / デメリット • メリット ◦ 節理面さえわかればソースをコピーし自チームで管理することでチーム分割は早い段階で可能 • デメリット ◦

    一度デプロイメントを分割してしまうともとに戻すことは非常に大変 ◦ 複数アプリケーションから一つのDBへの依存をすることでDBモノリスの側面を強めてしまう DBモノリスの負の側面を強めてしまう デプロイメントを分けた後は基本的には元 には戻れない 51
  18. 以上、タスクフォースチームでやったことの紹介でした • Chatworkでの今後のモノリスの解消の方法を紹介しました • これからは、先に述べた2つのパターンを使い分けながらモノリスを解消していく ◦ デプロイメント分割から始めるパターン ◦ データベース分割から始めるパターン •

    分割していくシステムの特徴と、それぞれの分割パターンのメリット・デメリットを照らし合わせた うえで移行パターンを決定していく 一筋縄ではいきませんが、モノリスを解消し開発生産性を飛躍的に上昇させ、チームと会社が幸せになる 未来を目指していきます 60