Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
キーワードで振り返る暗黙知の次元
Search
kawakawa
August 29, 2020
Technology
0
430
キーワードで振り返る暗黙知の次元
「MPD Osaka Extra 3」でのLT資料です。
あとで境界制御の原理など、おいおい追加していきます。
kawakawa
August 29, 2020
Tweet
Share
More Decks by kawakawa
See All by kawakawa
モデル図の難しさについて
kawakawa
1
270
オブジェクト指向の「語る」と「示す」
kawakawa
9
22k
心理的安全性ゲームをやってみよう
kawakawa
2
2.9k
ドメインオブジェクトとユースケースの関係について
kawakawa
10
3.8k
Other Decks in Technology
See All in Technology
株式会社ログラス − エンジニア向け会社説明資料 / Loglass Comapany Deck for Engineer
loglass2019
3
32k
podman_update_2024-12
orimanabu
1
280
5分でわかるDuckDB
chanyou0311
10
3.2k
サービスでLLMを採用したばっかりに振り回され続けたこの一年のあれやこれや
segavvy
2
490
複雑性の高いオブジェクト編集に向き合う: プラガブルなReactフォーム設計
righttouch
PRO
0
120
Wantedly での Datadog 活用事例
bgpat
1
520
Amazon Kendra GenAI Index 登場でどう変わる? 評価から学ぶ最適なRAG構成
naoki_0531
0
120
生成AIのガバナンスの全体像と現実解
fnifni
1
190
新機能VPCリソースエンドポイント機能検証から得られた考察
duelist2020jp
0
230
re:Invent をおうちで楽しんでみた ~CloudWatch のオブザーバビリティ機能がスゴい!/ Enjoyed AWS re:Invent from Home and CloudWatch Observability Feature is Amazing!
yuj1osm
0
130
AWS re:Invent 2024で発表された コードを書く開発者向け機能について
maruto
0
200
watsonx.ai Dojo #5 ファインチューニングとInstructLAB
oniak3ibm
PRO
0
170
Featured
See All Featured
The Straight Up "How To Draw Better" Workshop
denniskardys
232
140k
Learning to Love Humans: Emotional Interface Design
aarron
273
40k
[RailsConf 2023] Rails as a piece of cake
palkan
53
5k
Building Flexible Design Systems
yeseniaperezcruz
327
38k
Save Time (by Creating Custom Rails Generators)
garrettdimon
PRO
28
900
ピンチをチャンスに:未来をつくるプロダクトロードマップ #pmconf2020
aki_iinuma
111
49k
Visualizing Your Data: Incorporating Mongo into Loggly Infrastructure
mongodb
44
9.3k
A Philosophy of Restraint
colly
203
16k
How to Think Like a Performance Engineer
csswizardry
22
1.2k
How to Ace a Technical Interview
jacobian
276
23k
StorybookのUI Testing Handbookを読んだ
zakiyama
27
5.3k
Building Adaptive Systems
keathley
38
2.3k
Transcript
キーワードで振り返る 暗黙知の次元 MPD Osaka Extra 3 @kawakawa
自己紹介 • かわべたくや • Twitter:@kawakawa • 業務系開発がメイン 宜しくお願いします! 2
3 「対象を知っている」 (knowing what) と 「方法を知っている」 (knowing how)
知るとは? ポランニーは「知る」という構造は ・「対象を知っている」 ・「方法を知っている」 という二面性が互いに影響しあい、 他方がないと存在し合えないものと言っています。 どういう事か、考えてみたいと思います。 4
知るとは? 子供が算数の宿題を、電卓でやってました。 「68+57=125」 この場合、この子は68 足す 57は 125であることを 知っていると言っていいのでしょうか? 「足し算」を理解していると言っていいのでしょ うか?
5
知るとは? 電卓のどのボタンを順番に押せばよいのか、 「電卓の使い方」は知っていると言えそうです。 「6」「8」「+」「5」「7」「=」 (※ただ、これは文字が読めるようになった 幼児がピコピコ押してたら、偶然にも同じことが できるかもしれないが、この場合も幼児は電卓を 知っていると言えるだろうか。) 6
知るとは? 話を戻して、子供は電卓の使い方は知っていると して、「足し算」を知っていると言えるのでしょ うか? 紙と鉛筆で「68+57」を解かせてみると、 ・一の位から足し算を行う ・桁上がりをメモする など、足し算の「技法」を使っていることを確認 できました。 7
知るとは? まとめると、 ・「68+57=125」の意味を知っている ・「68+57」の解き方を知っている つまり、 「68+57=125」 を知っていいると言えそうです。 8
知るとは? そして、大事なのはそれらは「暗黙知」上に成り 立っているという事です。 ・「68+57=125」を知っている ⇒式の意味を理解している ⇒+や=の記号の意味を理解している ⇒数値を足すというのを理解している ・・・などなど ・「68+57」の解き方を知っている ⇒一の位から演算を行う
⇒繰り上がりの操作が行える ・・・などなど 9
10 「近位項」 と 「遠位項」
「近位項」と「遠位項」 ポランニーは手に持つ杖に喩えています。 ・杖を持つ手=近位項 ・杖の先 =遠位項 最初は手に持つ杖の質感、重さ、振動などが意識 されますが、徐々に意識は杖の先に移動していき ます。 ある時、杖の先に触れているのが、固い岩なのか 柔らかい土なのか、まるで直接触れているかのよ
うに感じることが出来ます。 このように人は、近位項を通して遠位項を認知で きるのです。 11
「近位項」と「遠位項」 では、近位項と遠位項の働く様相(Aspect)を 例を使ってみていきたいと思います。 12
「近位項」と「遠位項」 ▪機械的様相 13 全体 遠位項 各部分 近位項 近位項を内面化(暗黙知化)し、遠位項に導く。 そのため遠位項は、近位項に依存する。 また、近位項は内面化するため、各部分を明確
には認識できなくなります。
「近位項」と「遠位項」 ▪機械的様相 14 グレゴリーのダルメシアン犬 (脳と視覚―グレゴリーの視覚心理学―ブレーン出版) 「質問」 ワンちゃん が見えま すか?
「近位項」と「遠位項」 ▪機械的様相 15 グレゴリーのダルメシアン犬 (脳と視覚―グレゴリーの視覚心理学―ブレーン出版) 模様(各部 分)を統合 することで、 ワンちゃん (全体)が
見えました ね。 「質問」 ワンちゃん が見えま すか?
「近位項」と「遠位項」 ▪現象的様相 16 全体 遠位項 各部分 近位項 導かれた遠位項から与えられる条件と関連する、 近位項を意味づける。
「近位項」と「遠位項」 ▪現象的様相 17 グレゴリーのダルメシアン犬 (脳と視覚―グレゴリーの視覚心理学―ブレーン出版) 「質問」 ワンちゃん と道や木 の陰の違 いわかりま
すか?
「近位項」と「遠位項」 ▪現象的様相 18 グレゴリーのダルメシアン犬 (脳と視覚―グレゴリーの視覚心理学―ブレーン出版) 「質問」 ワンちゃん と道や木 の陰の違 いわかりま
すか? ワンちゃん の後ろ左 足が見え ずらいけど、 あると認識 してますよ ね?
「近位項」と「遠位項」 ▪意味的様相 19 全体 遠位項 各部分 近位項 近位項の意味は、遠位項の状況 のなかで決まる。 そして近位項の意味が、遠位項の
意味に翻訳されていく。 意味は私たちから遠ざかっていく。
「近位項」と「遠位項」 ▪意味的様相 20 グレゴリーのダルメシアン犬 (脳と視覚―グレゴリーの視覚心理学―ブレーン出版) 「質問」 ワンちゃん は何を やってます か?
(※回答は ありませ ん)
「近位項」と「遠位項」 ▪存在論的様相 21 全体 遠位項 各部分 近位項 包括的存在 近位項と遠位項により、包括 的な全体が構成される。
暗黙的認識とはこの包括的存 在を理解することである。 そして、この包括的存在自体 が次なる遠位項への近位項と なる。
「近位項」と「遠位項」 ▪存在論的様相 22 グレゴリーのダルメシアン犬 (脳と視覚―グレゴリーの視覚心理学―ブレーン出版) 「質問」 ワンちゃん (近位項)の 思い出(遠 位項)ありま
すか? (※回答は ありません)
23 まとめ
まとめ 近位項と遠位項の関係は、無限に続くものだと理 解しました。 そうなると困った事になります。 24 包括的存在 遠位項 近位項 遠位項 包括的存在
上位に無限 に続く 遠位項 包括的存在 下位に 無限に続く
まとめ 永遠に続くのならば、どこまで上位に行けば「意 味」を理解できるのでしょうか? どこまで下位に行けば「条件」を認知できるので しょうか? 25 包括的存在 遠位項 近位項 遠位項
包括的存在 上位に無限 に続く 遠位項 包括的存在 下位に 無限に続く
「近位項」と「遠位項」 つまり、暗黙知とは人間が手に入れた知的戦略な のだと思います。 俗に「フレーム問題」と言われる認知の問題を、 適切な時間内で、脳が処理できる範囲内で、認知 するための能力なのです。 そのおかげで、適度な「近位項」で「遠位項」を 認知できる能力、創造の飛躍ともいえるべき 「創発」の能力を手に入れることができたのです。