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感染症の数理モデル14

 感染症の数理モデル14

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Daisuke Yoneoka

May 16, 2025
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  1. 目次 1. 感染症のコンパートメントモデル 2. 基本再生産数 3. 最終流行規模 4. R実装 5.

    人口の異質性とSIR 6. 再生産方程式とエボラ vs インフル 7. R0 の推定方法(流行初期) 8. 内的増殖率の検定 9. Effective distance 10. 分岐過程 (Branching process) 11. 大規模流行確率と水際対策 12. Backcalculation 13. 致死率の計算 14. (シンプルな)ワクチン接種の自然史と流行条件 15. ワクチン接種VEの推定 16. 従属性現象における因果推論 17. ワクチン接種戦略について 18. 報告間隔の緩和 19. 予防接種戦略 20. 麻疹のモデリングについて(Mizumoto et al. 2018, Euro Surveil) 本書の内容をカバーします。 具体的なコードなどは右の本 詳細なプログラムなどは https://github.com/objornstad/epimdr/tree/ master/rcode (結構間違ってる。。。) 2/48
  2. 報告間隔について • 毎日報告するのは正直しんどいです...報告間隔どこまで緩めれますか? • 細ければ細かいほどいいのは当たり前.でも現場の負担はそういうんじゃないんだよ. • 一つの考え方として, 「報告期間Δtの間に別の世代が入らない方がいいよね」という基準 • 流行初期のEpiカーブは

    で近似できる • 要は,Δtの間の新規感染者は 人 • この新規感染者がR0(ある一人の人が生み出す二次感染者数)であればよい 92 もっと言うと,右のような 関係があることを思い出す M()は世代時間分布のモーメント母関数 = lognormal分布などだと平均と分散パラメータで記述可能
  3. R 0 の統計的推測 (1,再掲) 今までは、γやβは天下り的に与えてきた→データから推定したいよね 再生産方程式 時刻 tにおける新規感染者数 I(t) は、a日前の過去の新規感染者数を

    I(t−a)を用いて 93 ただし、 は世代時間のpdf この解を と一旦してみる (rは内的増殖率という) でないといけない。両辺 で割れば (オイラー=トロカの特性方程式) (上のただしの部分を使うと)よって
  4. R 0 の統計的推測 (2,再掲) 世代時間のpdfをg(t)と書くと したがって、rとg()の形が決まれば、R 0 は推定可能 • 実際の現場的には、g()は過去文献から持ってくることが多い

    • rは右図のようなepi curveに対して あたりをfitting • rの推定は別に最小二乗法とかでもOK 94 M()は統計家ならみんな 大好きgのモーメント母関数
  5. 予防接種の数理的考え方 • ワクチン接種率p • 各個体のワクチンの二次感染リスクの相対的減少(防御効果)ε 感受性人口は 100% → 100(1-εp)% へ減少

    同時にR0は • 臨界接種率なんて面倒くさいこと考えなくても,接種率なんて上げるほどいいんでしょ? 95 流行を制御するた めには,ここが<1 であれば良い ←目指すべき接種率 臨界接種率 駄目です. 副反応によるデメリットが考慮されてないからです.
  6. 死亡数の最適化 • ワクチン接種率pのもとでの,死亡リスクを以下のように仮定する • qは副反応による死亡割合 • g()は感染による死亡リスク(を表す非線形関数) • dは感染した際の致命割合 96

    副反応で 死亡 感染による死亡は,pと R0とdに依存している この領域では,死亡者数は増える = 臨界接種率くらいで十分でそれ以上 目指すのは理論的にはダメ??? 集団の意味ではそうかもしれないけど,ワクチンを打つかどうかの決 定は個人でしょ?その意思決定プロセスを考えなくっていいの? ワクチン接種のゲーム理論(Nash均衡とかを説明しないといけない ので,今回は割愛させてください...)
  7. COVID-19での経験(デルタ株について) • 最初の従来株(というかデルタ株以前)はR0 = 1.5~3.5 (中央値2.5) • mRNAワクチンの有効性(2回接種)は95%程度(ε = 0.95)

    • But,デルタ株はR0 = 5.75付近 • mRNAワクチンの有効性は高々 ε = 0.8 97 これを計算すると,0.63 63%に接種すると日本は希望が持てる! これを計算すると,1.03 103%に接種すると日本は希望が持てる! 100%を超えているので無理ですね. (理論的には)必ず流行します.
  8. Mizumoto et al. 2018, Euro Surveil (Cont.1) • i: classic

    or modified. a: age group (<20 or ≥20). t:時刻 • ci,a (t): 時刻tのa歳グループのtype iの麻疹の新規感染者数(unknown) • f(t): serial interval(発症から発症までの期間)の密度関数(ここではガンマ分布) • ci,a (t)の期待値を以下とする(論文よりこっちがわかりやすいと思います...) • Ri,ab はtype iのb群→a群への一人当たりの二次感染の平均値だが,これはさすがに推定が きついので,以下で近似的に推定(mab はb→aへの接触割合で既知) • Ri,ab がpublic awarenessなどで変わることもガクンと変わる(人流などのときもある) 99
  9. Mizumoto et al. 2018, Euro Surveil (Cont.2) • 観察された感染者数の履歴をH(t) •

    発生率(という表現はおかしいと思うけど発生数が≥1である確率):qia • ascertainment rate:θia (どれくらい報告された?) • 時点tの観察された感染者数をhi,a (t)とし,以下のzero-inflated Poisson (ZIP) model • したがって,尤度はパラメータ に対して,ZIPで表現 可能.あとはMCMCで解けばOK. 100 1-q ia の確率で報告は0でq ia の確率で報告はポワソン分布
  10. Mizumoto et al. 2018, Euro Surveil (Cont.3) 101 ← Child,

    Modifiedが0.4くら いなので,1/0.4 = 2.5倍く らい感染者がいるかもね. 逆に,Adult, Classicの方は ,ほとんど1なので,あん まり見逃している感染者い ないかもね. 今の麻疹はどうでしょう?