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jasdis-HospitalEvacuation

SatokiMasuda
November 05, 2024

 jasdis-HospitalEvacuation

災害情報20巻1号「大規模水害時における孤立病院からの入院患者の救助時間短縮方法の提案」に関するスライドです。

SatokiMasuda

November 05, 2024
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Transcript

  1. 既往研究 4 ⽔害時に孤⽴した病院からの患者の救助を扱った研究 • 内閣府中央防災会議(2018) 全病院の患者数は同じと仮定 • 坂本ら(2019) ボートの配置しか考えていない 患者が⽣命の危機に瀕する前に救助するという視点がない

    • 内閣府中央防災会議(2018) Ø 孤⽴病院から「3⽇程度での救助」を⽬指す ←備蓄の量から決定。ライフラインの停⽌は未考慮。 • 廣尾ら(2019) Ø 孤⽴病院内でリスクの上昇する患者種別を特定 Ø 症状別に⽣命の危機に瀕するまでの時間を設定 ←事例に基づかない仮定が多い Ø 事前避難 病院機能停⽌から何時間で患者が⽣命の危機に瀕するか について事例から検討し、救助⽅策を提案する
  2. 病院機能停⽌から何時間以内に患者を救助する必要があるか? 患者の症状 事例・⽂献 救助の⽬標時間 ①重症患者 • 東⽇本⼤震災(2011) • ⻄⽇本豪⾬(2018) ②呼吸器系疾患

    • 台⾵第14号(2005) • 関東・東北豪⾬(2015)の2事例 ③妊婦・新⽣児 • 台⾵第23号(2004) • 熊本地震(2016) • 東京都福祉保健局(2014) ④⼈⼯透析 • 東⽇本⼤震災(2011) • 関東・東北豪⾬(2015) • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 秋澤(2012) • Fissell et al.(2005) ⑤中等症患者 • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 台⾵第19号(2019)の6事例 ⼿法/救助の⽬標時間の設定 8 ↑廣尾ら(2019)より ↑本研究で調査した13事例
  3. 病院機能停⽌から何時間以内に患者を救助する必要があるか? 患者の症状 事例・⽂献 救助の⽬標時間 ①重症患者 • 東⽇本⼤震災(2011) • ⻄⽇本豪⾬(2018) ②呼吸器系疾患

    • 台⾵第14号(2005) • 関東・東北豪⾬(2015)の2事例 ③妊婦・新⽣児 • 台⾵第23号(2004) • 熊本地震(2016) • 東京都福祉保健局(2014) ④⼈⼯透析 • 東⽇本⼤震災(2011) • 関東・東北豪⾬(2015) • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 秋澤(2012) • Fissell et al.(2005) ⑤中等症患者 • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 台⾵第19号(2019)の6事例 ⼿法/救助の⽬標時間の設定 9 ↑廣尾ら(2019)より ↑本研究で調査した13事例
  4. 例)④⼈⼯透析患者 通常、週3回(中1⽇ or 中2⽇)透析を受ける 1. 透析中⽌から3⽇以内に41.3%が死亡(Fissell et al., 2005) 2.

    災害等により⾎液透析患者が透析治療を中断すると、早期に⽣命 が脅かされる(秋澤ら, 2012) 3. 2015年関東・東北豪⾬の⽔海道さくら病院(庄古,2018) 過酷な状況下にある⾼齢透析患者の透析間隔が中3⽇空くことを危惧 し、危険な夜間の救助活動を決⾏ 4. 2011年東⽇本⼤震災の⽯巻市⽴病院(⽇本透析医学会, 2013) 3⽉12⽇に透析不可能な145病院の内、126施設が他院へ透析依頼 5. 2018年⻄⽇本豪⾬災害のまび記念病院(読売新聞, 朝⽇新聞, 岡⼭⼤学) 7⽉7⽇ 10:00 全電源喪失、断⽔ 7⽉8⽇ 10:00 他の患者に先駆けて透析患者の搬送開始 救助の⽬標時間を最終透析から3⽇と設定 ⼿法/救助の⽬標時間の設定 10
  5. 病院機能停⽌から何時間以内に患者を救助する必要があるか? 患者の症状 事例・⽂献 救助の⽬標時間 ①重症患者 • 東⽇本⼤震災(2011) • ⻄⽇本豪⾬(2018) ライフライン停⽌後24時間以内

    ②呼吸器系疾患 • 台⾵第14号(2005) • 関東・東北豪⾬(2015)の2事例 ライフラインまたは吸引・医療 ガス停⽌後24時間以内 ③妊婦・新⽣児 • 台⾵第23号(2004) • 熊本地震(2016) • 東京都福祉保健局(2014) ライフライン停⽌後24時間以内 ④⼈⼯透析 • 東⽇本⼤震災(2011) • 関東・東北豪⾬(2015) • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 秋澤(2012) • Fissell et al.(2005) 最終透析から3⽇以内 ⑤中等症患者 • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 台⾵第19号(2019)の6事例 周辺環境が 過酷でなく備蓄も⼗ 分にあるとすれば,ライフライ ン停⽌後72 時間以内 結果/救助の⽬標時間の設定 11
  6. 病院機能停⽌から何時間以内に患者を救助する必要があるか? 患者の症状 事例・⽂献 救助の⽬標時間 ①重症患者 • 東⽇本⼤震災(2011) • ⻄⽇本豪⾬(2018) ライフライン停⽌後24時間以内

    ②呼吸器系疾患 • 台⾵第14号(2005) • 関東・東北豪⾬(2015)の2事例 ライフラインまたは吸引・医療 ガス停⽌後24時間以内 ③妊婦・新⽣児 • 台⾵第23号(2004) • 熊本地震(2016) • 東京都福祉保健局(2014) ライフライン停⽌後24時間以内 ④⼈⼯透析 • 東⽇本⼤震災(2011) • 関東・東北豪⾬(2015) • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 秋澤(2012) • Fissell et al.(2005) 最終透析から3⽇以内 ⑤中等症患者 • ⻄⽇本豪⾬(2018) • 台⾵第19号(2019)の6事例 周辺環境が 過酷でなく備蓄も⼗ 分にあると仮定すれば,ライフ ライン停⽌後72 時間以内 結果/救助の⽬標時間の設定 12
  7. 浸⽔後24時間以内 重症グループ 重症患者 呼吸器系疾患を抱える患者 妊婦・新⽣児 最終透析が被災2⽇前の透析患者 結果/救助の⽬標時間の設定 13 病院機能停⽌から何時間以内に患者を救助する必要があるか? グループごとの救助の⽬標時間をもとに、

    救助シミュレーションの結果を分析する。 浸⽔後48時間以内 透析グループ 最終透析が被災1⽇前の透析患者 浸⽔後72時間以内 中等症グループ 最終透析が被災当⽇の透析患者 中等症患者 従来の「3⽇程度の救助」では危険な状況に陥る患者が存在
  8. • 荒川右岸21km地点破堤 • 浸⽔する病院・有床診療所 80施設 病院ごとに症状別の患者数を推計 • 前進拠点(船着場)の候補 60箇所 浸⽔域と交差する4⾞線以上の道路に設置

    ⼿法/救助シミュレーションモデル 15 患者の症状 推計した⼊院患者数(⼈) 特別室の患者 189 医療機器による管理が必須である患者 1212 呼吸器系疾患を抱える患者 679 ⼈⼯透析が必要な患者数 375 妊婦・新⽣児 121 その他の中等症患者 4830 総数 7406 浸⽔域内の各症状別患者数の推計
  9. 2.0km/h 1.2km/h 病院 前進拠点 救助隊のボートの動き ⼿法/救助シミュレーションモデル 17 係留 5分 患者・看護師乗船

    4分/⼈(重症・透析) 2分/⼈(中等症・付添い) 係留解除 1分 係留 5分 患者・看護師下船 4分/⼈(重症・透析) 2分/⼈(中等症・付添い) 係留解除 1分 • 重症グループ > 透析グループ > 中等症グループの優先順 • 救助隊の活動時間12時間/⽇ → 救助の⽬標時間は実質半分の時間 (重症グループ12時間、透析グループ24時間、中等症グループ36時間) • 前進拠点で同時に活動できるボート数は前進拠点の⾞線数と同じ • 病院で同時に活動できるボート数は初めは1 (=船着場)
  10. 条件/救助シミュレーションモデル 18 2.0km/h 1.2km/h 病院 前進拠点 乗船作業12分 下船作業12分 ボート1台、病院1つ、前進拠点1つを考えると、 →救助を⾏うボート数を増やせば1時間当たりの救助⼈数は増える

    ボート数を増やしていくと病院や前進拠点で混雑が発⽣する →各病院の乗船箇所数を増やせば混雑は解消する →各前進拠点の乗船箇所数を増やせば混雑は解消する 以上の3つの観点から救助⽅策を考える。
  11. 条件/救助シミュレーションモデル 19 ボート台数 1770, 1000, 760, 500, 400, 300, 200,

    100(台) ボートの配分⽅法 各病院等に均等に配分する 2.0km/h 1.2km/h 病院 前進拠点 全体のボート台数を変化させた時の効果を⾒る 条件
  12. 2.0km/h 1.2km/h 被害軽減⽅策の提案 23 病院 前進拠点 ボート台数 1770, 1000, 760,

    500, 400(台) ボートの配分⽅法 中・⼤規模病院に集中的に配置し、余ったボートは ⼩規模病院に均等に配置する 病院の乗船箇所数 ⼤規模病院:4〜7カ所で設定 中規模病院:2カ所 病院でのボトルネックを解消する 条件
  13. 2.0km/h 1.2km/h 被害軽減⽅策の提案 26 病院 前進拠点 ボート台数 1770, 1000, 760,

    500, 400(台) ボートの配分⽅法 中・⼤規模病院に集中的に配置し、余ったボートは⼩ 規模病院に均等に配置する 病院の乗船箇所数 ⼤規模病院:4〜7カ所で設定 中規模病院:2カ所 前進拠点の条件 混雑している2つの前進拠点で、近くに別の前進拠点を 設置 & 乗船箇所数を6台に増やす 前進拠点でのボトルネックを解消する 条件
  14. 被害軽減⽅策の提案 28 ボート台数 1770, 1000, 760(台) ボートの配分⽅法 中・⼤規模病院に集中的に配置し、余ったボートは⼩ 規模病院に均等に配置する 病院の乗船箇所数

    ⼤規模病院:5〜8カ所で設定 中規模病院:2カ所 前進拠点の条件 混雑している2つの前進拠点で、近くに別の前進拠点を 設置 & キャパを6台に増やす 最終的に救助の⽬標を満たした条件 • 適切に設定されれば、ボート760台で救助⽬標を達成できる • ⼤規模な病院では病院の乗船箇所を最⼤8カ所にする必要がある • 中規模な病院では病院の乗船箇所を2カ所にする必要がある • 乗船箇所数の増加 → 場所と医療スタッフの⼈数の制約 →⼤規模病院は病院の耐⽔化を早急に進めていくべき
  15. まとめ • ⼤規模⽔害時の病院からの患者救助について、患者の症状別のリスク を考慮した詳細な検討は⾏われていなかった。 • 事例から、病院機能停⽌から何時間以内に患者を救助する必要がある かを症状別に設定した。 • 従来の「3⽇程度での救助」では⽣命の危機に瀕する可能性のある患 者が存在することを⽰した。

    • 救助シミュレーションより、救助活動時のボトルネックを解明し、被 害軽減⽅策を提案した。⼤病院での救助箇所を増やしつつ、そこに集 中的にボートを配置し、前進拠点の混雑を解消することで、救助の⽬ 標時間内で患者を救助できることを⽰した. • 対策の⽅向性 病院 孤⽴時の乗船箇所を想定する。災害時のスタッフを増員する。 ⾏政 中・⼤規模病院の救助が厳しいことを認識し、ボート配置を検討する。 29