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20241226_くまもと公共交通新時代シンポジウム

Traffic Brain
December 26, 2024

 20241226_くまもと公共交通新時代シンポジウム

Traffic Brain

December 26, 2024
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  1. 2 2 自己紹介 太田 恒平(おおた こうへい) (株) トラフィックブレイン 代表取締役 交通データ分析・コンサルティングの会社、2017年設立

    • 2021年秋より熊本にて交通の研究PJを実施中 • 「車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」の言い出しっぺ • 熊本市の船場町下に滞在中
  2. 4 「車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」 自動車 64.4% 二輪車 14.1% 徒歩 15.7% 公共交通 5.9%

    鉄道 1.4% バス・市電 4.5% ①車の交通量が少し(1割)減るだけで渋滞は大きく減少(半減)する ②車の1割(6.4%)転換には、公共交通利用は倍増(5.9→12.3%)が必要 熊本都市圏の代表交通手段(2012年パーソントリップ調査) しかし2023年の調査では、公共交通は減少(5.9→5.3%)、自動車は増加(64.4→67.0%)してしまった
  3. 6 熊本市中央区の「車1割削減、渋滞半減」 平均時間交通量[台/h] (JARTIC断面交通量情報) 平 均 速 度 [km/h] (

    ホ ン ダ プ ロ ー ブ デ ー タ ) 交通量が 776 → 698台/h (10%↓) 速度は 13.5 → 17.9km/h (33%↑) 渋滞損失時間は (20km/h走行に対する追加時間) 115 → 63秒/台km (45%↓) 0 5 10 15 20 25 30 0 100 200 300 400 500 600 700 800 雨なし速度 雨速度 ほぼ半減! 交通量と速度の関係をビッグデータで明らかにした(2021年11-12月の1時間毎) 少し交通量が減れば 速度は大幅に向上
  4. 10 増便すれば利用者は増える 10 富山ライトレール 本数を3.5倍 ↓ 平日は2.2倍(感度0.49) 休日は5.3倍(感度1.75) 栃木県小山市 おーばす

    11年で1.8倍の経費増 ↓ 利用2.0倍(感度1.2) 富山県朝日町 5年で便4.1倍 ↓ 利用2.8倍(感度0.6) 山形県鶴岡市 便数4倍 ↓ 利用3倍(感度0.7) ※ルートを再設計、 バス停を58→79に増設 一概には言えないが、 増便率の半分程度は利用増が見込める?
  5. 11 本数の現状とあるべき姿 11 area trunk_name direction terminal_time_min terminal_time_max trip_count travel

    _time c06 c07 c08 c09 c10 c11 c12 c13 c14 c15 c16 c17 c18 c19 c20 c21 c22 c23 人数 収入 1_植木 1A_徳王 up 6:30 22:19 91 5,652 4 8 9 7 7 7 6 6 6 6 6 5 5 4 3 1 1 0 2,615 579,242 1_植木 1B_池田三丁目 up 7:28 22:38 23 496 0 2 1 1 2 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 1 0 342 49,894 2_合志・菊池 2A_高平橋 up 6:52 21:05 39 2,335 1 3 4 4 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 2 1 0 0 1,138 228,622 2_合志・菊池 2B_須屋小屋 up 6:42 22:52 24 1,927 2 2 2 2 1 2 1 1 0 1 1 2 1 2 2 1 1 0 827 211,034 2_合志・菊池 2C_城北校前 up 6:32 23:21 31 1,760 2 3 2 3 2 2 1 2 2 2 1 2 2 1 1 1 1 1 897 169,435 2_合志・菊池 2D_立田山 up 6:35 22:56 43 2,460 2 3 4 2 4 4 2 2 2 3 2 3 3 3 2 0 2 0 1,346 246,472 3_菊陽・大津 3A_高杉 up 6:48 22:03 41 1,831 1 2 3 4 2 3 2 3 3 3 3 3 3 2 2 1 1 0 1,006 185,372 3_菊陽・大津 3B_武蔵陸橋 up 6:58 22:33 36 1,862 1 2 4 2 2 3 2 2 2 3 3 3 2 2 1 1 1 0 957 179,801 3_菊陽・大津 3C_塚の本 up 6:33 21:00 29 1,489 1 3 1 3 3 2 2 2 2 2 2 1 2 1 1 1 0 0 833 154,294 3_菊陽・大津 3D_江南病院前 up 7:03 21:10 30 1,522 0 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 0 0 624 118,985 4_長嶺 4A_渡鹿四丁目 up 6:50 21:48 61 2,474 1 5 6 5 3 4 4 3 4 4 4 5 5 4 2 2 0 0 1,412 270,900 4_長嶺 4B_熊本学園大学入口 up 6:47 22:52 66 3,261 1 4 7 4 5 5 4 5 4 4 4 4 4 4 3 2 2 0 1,509 305,898 4_長嶺 4C_帯山小学校入口 up 6:55 22:44 77 3,496 1 7 8 6 5 5 4 4 4 4 6 6 5 3 4 2 3 0 1,660 290,352 4_長嶺 4D_京塚 up 6:17 22:56 95 4,381 5 9 10 7 6 5 6 6 6 5 5 6 5 6 3 2 3 0 2,451 417,513 5_益城・空港 5A_小楠公園前 up 6:40 22:45 73 3,884 2 7 9 5 5 5 5 4 5 5 5 3 3 3 3 2 2 0 2,033 396,261 5_益城・空港 5B_東野中学校前 up 7:17 20:18 21 1,681 0 2 4 1 1 1 1 2 1 1 1 1 2 2 1 0 0 0 512 115,456 6_嘉島 6A_下江津 up 6:54 21:17 17 873 1 5 4 0 1 0 1 0 0 1 0 1 1 0 1 1 0 0 360 73,507 6_嘉島 6B_江津三丁目 up 6:43 19:10 12 521 1 1 0 1 2 0 1 0 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 219 39,683 6_嘉島 6C_田井島(浜線バイパス) up 7:54 20:16 20 913 0 1 1 2 1 2 2 1 2 2 1 2 1 1 1 0 0 0 298 48,341 6_嘉島 6D_田迎(旧浜線) up 6:09 23:41 94 5,093 7 7 8 6 7 4 7 6 7 6 8 5 5 3 3 1 3 1 1,834 409,502 6_嘉島 6E_県立高等技術専門校前 up 6:48 21:08 27 1,083 1 3 2 2 2 2 1 2 1 1 2 2 2 2 1 1 0 0 371 63,821 7_宇土・宇城 7A_熊日前(国道) up 6:20 20:45 28 946 2 2 3 1 2 2 2 1 2 3 2 1 2 2 1 0 0 0 362 71,523 7_宇土・宇城 7B_熊日前(旧道) up 6:38 22:15 46 1,804 2 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 4 3 1 2 1 1 0 1,002 206,554 8_田崎・城山 8A_新土河原一丁目 up 6:30 22:30 32 966 1 1 0 1 3 3 2 3 2 4 1 3 2 2 1 2 1 0 165 33,049 8_田崎・城山 8B_島団地入口 up 6:37 19:26 16 505 1 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 209 45,301 8_田崎・城山 8C_野口町 up 6:36 21:37 44 1,775 2 4 4 3 3 3 3 3 3 3 4 2 3 3 0 1 0 0 704 158,219 8_田崎・城山 8D_野中公民館前 up 6:33 23:21 35 822 4 3 1 2 2 2 3 1 2 3 4 2 2 2 0 0 1 1 267 48,397 8_田崎・城山 8E_稲荷入口 up 6:57 19:57 25 1,074 1 3 1 2 2 1 2 2 1 1 3 2 1 3 0 0 0 0 300 62,678 8_田崎・城山 8F_高橋中間 up 6:26 21:11 31 987 2 4 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 0 0 563 108,426 平日 幹線Lv 初着 終発 往復 上下 便数 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 8 6:10 23:30 123 上 123 4 11 11 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 6 4 3 3 1 0 下 123 3 9 11 8 8 8 8 8 8 8 8 8 10 6 4 3 3 2 0 6 6:20 23:00 93 上 93 3 9 9 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 4 3 3 2 0 0 下 93 2 7 9 6 6 6 6 6 6 6 6 6 8 4 3 3 2 1 0 4 6:30 23:00 63 上 63 2 6 6 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 3 2 2 2 0 0 下 63 1 5 6 4 4 4 4 4 4 4 4 4 5 3 2 2 2 1 0 3 6:30 23:00 49 上 49 2 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 2 2 2 0 0 下 49 1 3 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 4 3 2 2 2 1 0 2 6:30 22:30 34 上 34 1 3 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1 0 0 下 34 0 2 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2 0 0 現状 平日 上り 定義 平日 利用状況を考慮しいずれかのレベルに割り当てる
  6. 13 増便・バスレーンの効果予測 ◼増便 • 熊本市の幹線8方面のバスを48%増便。日中は7.5~30分間隔に設定 • 増便率の0.5倍の利用増を仮定(20%増便なら10%利用増) ◼バスレーン • 3箇所(産業道路、子飼橋-浄行寺、県庁通り)の所要時間を3~5分短縮と設定

    • 所要時間×4%/分 の利用増を仮定(5分短縮なら20%利用増) ◼利用増・収支 • 年532万人(32%)、9.3億円減益 ◼渋滞解消効果 • 交通量:年403万人・0.7%削減(中央区は177万・2.2%削減) • 速度:14.0→15.1km/h(中央区平日8時)、走行時間:178万時間短縮 • 便益:47.6億円(公費支出の5.1倍の効果) 車1人削減あたり中央区1814円、他区824円 シナリオ 推計結果
  7. 14 御代志~セミコン~原水にBRT 開発が進む菊池南部に交通軸が必要 道路拡幅に合わせて専用レーンを確保し BRTで早期開通が望ましいのでは? 諸外国ではミニ専用レーン(Queue Jump Lane)を導入 https://nacto.org/publication/transit-street-design- guide/intersections/intersection-design/queue-jump-lanes/

    北米都市交通運輸協会(NACTO) Transit Street Design Guide https://en.wikipedia.org/wiki/Queue_jump 交差点をまたぐ場合 先出し信号の場合 イメージ図 アメリカ マディソン https://t.ly/HDXR アメリカ シアトル https://vimeo.com/185180972 熊本県 説明会資料より Merkmal:https://merkmal-biz.jp/post/44386/2 3連節バス「日本に合わない」は大間違い!世界各地で大流行する納得の理由とは フランスのメッス市に2013年導入の定員155人(40席)3連節バス(ベルギー製) 県道30号 大津植木線拡幅 のイメージ図 6車線も造るなら バスレーン設置が 妥当 連接バスなら輸送力もLRTに遜色ない
  8. 16 熊本市電「利用者2倍」に向けた体質改善 ① 運転手確保・待遇改善、安全対策 2億円/年(人件費) 全員非正規・335万円、トラブル年15件 行きすぎたコストカットを改め人に投資。年収100万UP。 ② 3連節車への統一 180億円(車両)

    + 車庫 3連接6本を5年で導入。今さら単車も並行導入。 全車3連節車に。量産可能なメーカーへの切替も必要。 ③ 本数を2000年代レベルに回復 2億円/年(収支差) 平日昼はA10分毎、B20分毎。21:50に駅終電 昼もA5分毎、B10分毎。23時台まで運行。 ④ 速達性を回復・向上 +1億円/年(効率向上) A系統58分(20年で+13)、市街地は6.8km/h 全扉乗降、信号サイクル短縮、調整時間削減、電停削減 ⑤ バスと協調した経営・運賃 ? 市電だけ極端な均一運賃、乗継や定期の便宜なし。 バスとシームレスな運賃。緩急の役割明確化。共同経営。 ⑥ 独立採算からの脱却計画 0.2億円(計画策定) 新車導入も定員10%増、利用7%増の長期計画 独立採算を脱却した利用者倍増への投資計画 延伸は、体質改善を前提に再検討。東町線は、所要時間が計画と実態で大幅に異なるのと、バスとの競合を要精査。
  9. 18 電鉄は同格の都市の 1/5以下の利用者数。 都心非直結が致命的 数字で見る地方鉄道 都市 人口 事業者・路線 複 線

    輸送密度 (2019) 昼の 本数/h 熊本 74万 熊本電鉄 1,946人 2本 JR熊本-肥後大津 11,465人 2本 JR熊本-八代 複 10,514人 2本 松山 50万 伊予鉄 郊外線 6,072人 3本 福岡 161万 西鉄 貝塚線 8,855人 4本 浜松 78万 遠州鉄道 11,910人 5本 静岡 68万 静岡鉄道 複 16,235人 7.5本 JRは輸送密度が同等な 私鉄の半分以下の本数 全国的にも都心非直結の 路線は利用低迷し存廃問題 例:北陸鉄道石川線、弘南鉄道大鰐線 九州だけでなくJRは全国的に 本数が私鉄の半分以下 熊本電鉄は都心直結、JRは私鉄並みの本数倍増がカギ 上熊本での市電乗継は1日50人に過ぎない 乗降2277人の藤崎宮からの延伸が必要 単線でも6本/h程度までは増やせる JRの経営改善だけでなく公的投資が必要
  10. 19 JR豊肥線(熊本~肥後大津)の中規模強化案 間隔 両数 鹿児 島線 直通 朝 昼 朝

    昼 現状 12分 30分 2-4両 2-3両 数本 強化後 10分 15分 4両 2-4両 多数 ▼ 車両 約36億円 1両2億×18両 地上設備 約30億円 新駅)三里木-原水 安全側線)武蔵塚・原水 複線駅化)東海学園前 複線化)南熊本-平成 計66億の2/3を行政が負担すれば、 JRの収支はほぼ均衡 サービス改善 投資 効果 利用増 47%増 渋滞解消便益 37億円/年 利用者便益は別途 渋滞解消だけで行政負担は1.2年で元が取れる 数十億円の投資でJR豊肥線は劇的に改善する 空港アクセス鉄道410億円に比べれば僅かな費用 すれ違いできる駅と、車両を増やす必要
  11. 21 運賃が変われば移動が変わる • 乗継ごとに初乗りがかかる →都心部以外の公共交通利用が少ない • 長距離だと片道1000円以上かかる →郊外まで渋滞を発生させてしまう • 定期以外に使いやすい割引が乏しい

    →買物・遊びなどが車になりがち • 学生には割高 (熊本市の70歳以上は8割引なのに) 事業者負担の割引では こうなってしまう 案②サブスク「くまもんパス」 公費投入で「お得だからとりあえず買っとく」パスに 案)一般 6万円/年、学生4万円/年 ウィーン市内)一般5.8万円、学生1.3万円 小山市バス)一般2.8万円、学生2.5万円 公共交通への運賃への不満 案①乗継割引 乗継時の初乗り分を公費で補填 ▼ バス向けの試算 ・10%利用増(現在の乗継率は6%) ・4.4億の減収補填 ・16.2億の渋滞解消効果
  12. 23 公共交通の収支と予算 バス4社(2019・熊本都市圏) 収入 支出 収支 収支率 49億 59億 -10億

    83% 熊本市電(2019) 経常収支 https://jmpo.kumamoto-toshibus.co.jp/opendata/opendata2-1/ 収入 支出 収支 収支率 17億 20億 -2.7億 86% 営業収支 http://www.kotsu- kumamoto.jp/kihon/pub/detail.aspx?c_id=56&id=1123&pg=1 熊本の収支率 先進国の都市鉄道 の収支率 自治体 地域 交通 道路 一般会計 熊本市 5.8億 184億 3702億 熊本県 4.9億 372億 7915億 熊本の交通行政予算 独立採算から脱し、道路とバランスの取れた交通予算配分へ 2019年度当初予算 公共交通の 運転手確保・増便・割引に40億/年 ハードに60億×10年投じれば 熊本の交通は劇的に生まれ変わる 日本では「赤字」と叩かれるが 諸外国と比べると 「運賃高すぎ・サービス低すぎ」
  13. 25 交通政策の圧倒的レベルアップが必要 ◼「車1割削減~」の社会目標を県市で掲げたのは画期的 • 他県から驚かれる画期的なこと。だがまだ掛け声どまり。 ◼「横ばい」目標の交通計画を作り直す • 近年の計画はことごとく目標値が横ばいで存在意義が乏しい。 • 2000年の「都市交通マスタープラン」では公共交通2倍を描いたが全く未達。

    現在策定中の2025年版から「2倍」の道筋を描き直す。 ◼「やってる感」ではなく実効性のある事業を立て、進捗させる • 「利用者2倍」への数値目標を持たせる。財政に負けない根拠と政治的後ろ盾を持つ。 • 検討会などは目に見える進捗を四半期毎に出す。 ◼議会、学識、報道も目を光らせる • 議員は知識をって受け身でなく提案し、学識は技術論に逃げず社会実装に貢献し、 報道は嘆くだけでなく解決策を報じてほしい。