我々は Pelemay Super-Parallelism と称する,関数型言語 Elixir からC言語へのコード生成・最適化を行う処理系を研究開発している.これは,ElixirにはElixirのコードをASTに変換する機能が備わることを利用し,データ並列スケルトンに基づいて並列化可能なコードを検出してC言語コードを生成し,Clang や GCC の Auto Vectorization を利用して SIMD 並列化を行う処理系である.本研究の貢献は,Elixirの標準ライブラリであるEnumや先行事例Flowに準じたデータ並列スケルトンに基づいてSIMD命令を含むネイティブコードを生成・最適化することで,Enumに比べて,整数演算で2.25倍,浮動小数点数演算で4.48倍,文字列置換で3.85倍の性能向上,Flowに比べて,整数演算で21.0倍,浮動小数点数演算で247倍,文字列置換で 7.26×10^3倍の性能向上を達成したことである.リストの各要素を素体のロジスティック写像を算出する整数演算について,演算カーネルのループ内の命令カウントの中でSIMD命令が占める割合は,x86_64アーキテクチャで58.2%であった.perfで演算カーネルを実行した時にキャッシュミス率は24.3%,分岐予測ミスは4.56%,フロントエンドのストールサイクル率は6.18%,バックエンドのストールサイクル率は29.6%であった.